徳川将軍家のブランド戦略

ジャンル:歴史・文化・民族
著者:安藤 優一郎
出版社:KADOKAWA / 中経出版
発行年月:

ドラコンさんのオススメ!

■ 解説

「将軍の顔を正視すると罰せられた」
「将軍が通過する道には誰もいなかった」
「将軍が飲むお茶にも土下座させられた」
 徳川幕府は将軍の権威を高めるために、その存在を秘密のヴェールに包んだ。徳川一門を除くと、将軍の顔をまともに見ることができた大名は、ごくわずかであった。「江戸三百年」の安泰を可能にした、幕府の巧妙な仕掛けを、50の視点から解き明かす。テレビや映画では知ることのできない、将軍の本当の姿を浮き彫りにする。

■ ドラコンさんの書評

 君主を登場させる場合で、家臣・民との「距離の取り方」について、参考になる一冊を紹介します。

 君主が権威を高めるためには、その姿を広く見せるべきでしょうか。それとも、隠すべきでしょうか。後者で権威を高めたのが徳川将軍家です。一言で言えば、「禁じられれば、見たくなる」です。そして、普段極めて遠いところに居る君主が、特別な時に少し近づいてくるありがたみがよく分かります。

 主な内容は以下と通りです。

 大名・旗本の拝謁時の作法。
 将軍行列通行時の町の様子。
 正月をはじめとする、主従関係確認の儀式。
 一般庶民を江戸城に入れ能を見物させる「町入能」、将軍上覧の山王権現・神田明神の祭礼行列、および江戸っ子の将軍に対する親近感(君主と庶民との関係)。

 西洋人から見た将軍の様子(西洋では君主はあえて姿を見せる)。
 幕末時の、「見せない」から「見せる」への方針転換。
 将軍情報の管理。
 影武者関係。
 将軍の御威光を使った詐欺事件、特に天一坊事件等の隠し子騒動。

 「見せない」、というより「見ることを禁じる」ことで、「見たくなる」欲求を高め、君主の権威を高められることがよく分かる本です。「君主の神秘性」の点では、江戸時代はもちろん、舞台を問わず参考になり得る一冊でしょう。

この本の欠点、残念なところはどこですか?

 残念な点を3つ指摘します。まず、将軍拝謁時の作法ですが、畳の上でのこととはいえ、お辞儀の仕方一つとっても、文章だけなので想像しにくいですね。イラストがほしいですよ。

 次に、大名が登城する際に江戸城のどの門を通るのかや、控室、儀式の部屋が書かれています。ですが、江戸市中の地図や江戸城の間取り図がないので、分かりにくいです。

 最後に、時代劇の『暴れん坊将軍』や『忠臣蔵』を例に出していますので、これらを知らぬとついていけないかもしれません。

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