ラノベ研シェアワールド企画8

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魔研戦隊ゴースト・ファイターズ (No.46404への返信 / 1階層) – ねね

あるときは純研究派の優等生、またあるときは委員長。状況を把握し、的確に対処できることで皆から頼りにされているジュリアには、実はもう一つ誰にも知られていない別の顔がある。
「ゴーストアターック」
自らが作成した魔法を発動するハートのモチーフが先端についた乙女チック全開なステッキを振り回し、悪霊をばったばったと成仏させていく。
フリルたっぷりのチェック柄のスカートに、レースで縁取ったチェック柄のリボンが首元についたシャツ、それにニーハイソックス。頭には、王冠のような形の帽子という出で立ちで、スカートをひらひらと舞い踊らせながら、懸命に走る。
時刻は午前2時。悪霊退治にはうってつけの時間だ。ここから1時間が勝負なのである。
それにしても、ここ最近あきらかに霊たちが増えてきている。これじゃ埒が明かない。ジュリアは途方にくれそうになる。でも放おっておくわけにはいかない。キリっと表情を引き締めて、目の前の悪霊退治に集中する。
事が事だけに、相談できる相手もなくジュリアは日々黙々と退魔を行ってきたのだったが……。
秘密はいつかバレるものなのだ。
「あれ、委員長? こんなところで……っていうか、なに、そのステッキ」
「キャーっ! サ、サトーさんっ! ここここ、こんな時間に、どうしてここに? こ、このステッキとか、格好は、その、あの。わわわわ、わたしには不似合いだってわかってるんですけど、わたし、わたし、本当はフリフリとか、可愛いいものが大好きなんです―! ……恥ずかしいっ」
コウ・サトー。――某管理官のための委員会メンバーの一人がそこに立っていた。
「外界に降りて、戻りが遅くなったもんだから、裏口から戻ったところ……って、ここ、やっばいなー。この時間ここには居ないほうがいいよ。部屋まで送るから。行こう」
「あの、もしかして、サトーさんは、視える、んですか?」
「ああ、まあ。てことは、委員長も?」
「ちょっと、わたしの部屋へ来てください!」
「いや……送るって言ったけど……部屋って。こんな夜中にいいのかな」
いや、ダメな気がするなどと、ぶつぶつと呟くコウに、「いいから早く!」とジュリアは焦れたように腕を引っ張った。
部屋に入ると、ほわんと灯がともる。
夜中の2時過ぎ、薄暗い部屋で女の子と二人きり。
今日のジュリアはいつも着けている眼鏡を外している。頭の上の方で一つにまとめているゆるい巻き髪を今は下ろしている。ちょっと変わった格好だなと思ったが、普段の飾り気のない大人っぽい格好とは違い、歳相応の少女らしくてなんというか……とても可愛らしい。
(こんなに、可愛かったっけ?)
好意はあったけど、そういうんじゃなかったはずだったのに……、思わずどぎまぎしてしまいコウは戸惑っていた。
なんとも言えない胸の高鳴りは、しかし次の瞬間一気に吹き飛んでしまうのだったが。
「……ちょっと待て。これっ……て」
はいっと手渡されたものを見てコウは絶句した。
「こんなに頼もしい相棒が身近に見つかるなんて思っても見ませんでした。これはわたしの予備ですが、遠慮は入りません! 使ってください!そして、研究所の平和のためにわたしと一緒に悪霊退治しましょう!」
「いや、無理だから。これ女物だろどうみても」
「この服には霊力を跳ね返す魔法をかけてあります。わたしがつくった特性のコスチュームです。伸縮性もあるので、問題なく着られるはずです」
問題なら大いにある!と思わず大声で意義を唱えたくなったが、そこはぐっと堪える。
「いや、だから。俺が女に見える?」
「あ……そう、ですよね。ごめんなさい。でも男物は流石に用意がないし……あ、でも! いいものがあるんでした!」
にこりとジュリアは笑う。
笑顔にクラっときたのもつかの間、コウを奈落の底へと突き落とす言葉をさらりと突きつける。
「性転換丹」
「せせせせ、性転換丹?」
それはもちろん必要な人もいるんだろうが、自分には絶対に必要のないものだ。
「わたし、外界との調整役もやってるんですけど、その関係で、食堂派の方からもらったんです」
「……どこのどいつだったく。余計なことを……一応確認のために聞くけど、なにこれ」
「食べると女の子になれます」
「やっぱりかーーー! 聞いた俺がバカでした!」
「うっ……あの、どうしてもダメですか? ほんの1時間だけです。サトーさんの力が必要なんです。ステッキを使えば誰でも退魔はできるけど、視える人でないとヒットできないから誰でもいいわけじゃないんです」
涙目でじっと見つめられて、コウは狼狽える。
「……その、ごめん。怒鳴って悪かったよ。1時間だけ、なんだな?」
「はい! ありがとうございます!」
コウは観念したように手を差し出す。
「この性転換丹は一つしかないし、効力はたぶん1日くらいだって言ってた気がするので、ちょっぴりで大丈夫なはずです」
深いため息をついて、コウを胸元から魔法のナイフを取り出しキッチリと24等分にしはじめた。適当に等分してもなぜかキッチリわけてくれる優れもので、食堂派の必需品である。
「二人になったわけですし、名前があった方がなにかと便利ですよね。わたしたち悪霊退治チームの名前は……えっと、あ! “魔研戦隊ゴースト・ファイターズ”とかどうでしょうか?」
「……名前って誰に名乗るつもり? 悪霊に? ……でも、もうなんでもいいか。好きにしていいから、早く悪霊退治をすませよう」
コウはやや投げやりに言う。
仕方ない。この部屋にのこのこついて来たのが運の尽きだ。それには若干の後ろめたさがないわけじゃないし。
深々とコウはため息をつき観念して、先ほど切り分けた“性転換丹”とかいう怪しげなものを念のため2切れ口に放り込んだ。
「わ! だ、誰?」
黒い人影が驚いたように、声をあげた。
「あれ、ミラさんじゃないですか!」
ジュリアは人影に近づく。
「研究所に戻ってらしたんですね。こんな時間にどうしたんです? その手に持っているのは……」
さすらいの魔女ミラは、両腕で巨大な豚の置物を抱えている。
コウは焦ったようにジュリアを見た。――なんでここに人がいるんだよ!
ジュリアはそれには気づかない。
ミラのことは知っていたが幸い知り合いではない。姿が変わっているし、バレるリスクは少ないはずだ。コウはなんとか落ち着きを取り戻す。
「あ、なんだ~ジュリアか~、脅かさないでよ。あ、これね、“霊取り豚”だよ。外界で買ってきた蚊取り豚にちょっと細工したの。蚊のかわりに霊を退治できるようにって。ここだけうっかり設置するの忘れちゃってたみたい。それで余計にここに霊が集まっちゃってたんだと思う。ここにこんな時間にいるってことは、ジュリアも視えるんだよね?」
「ええ、わたしも、実は視えるんです。ここで必死に退魔をしていたんですけど、キリがなくて。ミラさんはすごいです。そんな便利なものを思いつくなんて、さすが“さすらいの魔女”ですね!」
「ジュリアも、いつか外を旅してみるといいよ。広い世界を見ることで得られることはたくさんあるから。で、そっちのあなたもジュリアと一緒に悪霊退治してたの?」
コウはぎくりとする。黙りこんでいるわけにもいかず、「そう」と短く答える。
「ふうん。わたし、こういう生業だから顔は広い方だけど、見たことないんだよね。どこの派閥? 名前は?」
ギクギクとする。コウは焦りながらも、なんとか適当な返答でごまかす。
「サ、サトコ。こ、ここに入ったばかりだから、派閥はまだ決めてない……の」
「へえ、そうなんだ」「え? サトコ? ちがっもごっ」
次の言葉を言わせまいとコウは、慌ててジュリアの口を抑えた。
「仲いいんだね」
にこりとミラが笑った次の瞬間、ビリビリビリと不吉な音が闇夜を駆け抜けた。
コウの服が木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「「あっ!」」
二人が目を丸くしてコウを見ている。
すっかり男の姿に戻ってしまったコウは、羞恥の視線に耐えながら、どう言い訳したらいいのか必死に考えた。
かろうじて下着は身につけてはいるが、乙女チックなステッキは持ったままだ。そして極めつけが、サトコという名前。
(……しかも「決めてない“の”」ってなんだよ“の“って。あ~安請け合いした俺のバカ。丹の効力なんて不安定だし、体質で合う合わないがあるからこういうこともあるに決まってるのに! つか、伸縮性はどうした!?)
幸い相手は知り合いではないし、コウとは交流する相手が違うらしく滅多なことでは顔を見ることもない。
こうなったらもうこれしかない!キリっと顔を上げると、サトコは二人にこう告げて、その場から走って逃げ出した。
「こ、こんな姿見られちゃったら、もうアタシ、恥ずかしくて死んでしまう―!」

「あの、サトコさんてオネェだったんですね。今まで気づかなくてごめんなさい。親愛の印に、サトコさんのサイズでフリルたっぷりの可愛い服つくります、わたし。だから死ぬなんて言わないでください!」
「ご、誤解だ!違うんだ、あれは!」
「大丈夫です。誰にも言いませんから。二人だけの秘密です。安心してください。あ、丹は全部差し上げますね」
「いや、丹はいいから!」
「サトコさん、わたし……可愛いものが好きだっていいましたよね? 女の子になったサトコさん、可愛すぎです。ずるいです。好きにならないはずないですよ、あんなの……でも丹はもうこれしかないし、わたし、もうどうしていいかわからなくて」
ジュリアは、ほんのり顔を赤らめて、うるうるとした瞳でコウを見つめる。
「ジュリア、俺も好き。やっぱ、その丹、くれ」
性転換丹の精製法を聞き出すために、コウは急いで食堂派の研究室に向かった。
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本当は、管理官含めた戦隊の別のオチも考えたんですけど、インパクト薄いかなと思ってこんなかんじに。。。

戦隊というより、魔法少女的な?

ダメ出しもびしばし、お待ちしてます。

[No.46465] 2014/10/13(Mon) 12:19:56
Re: 代償派になりたい! (No.46440への返信 / 3階層) – 名前はまだない

> おつかれさまです。

ジジ様、おつかれさまです。

> キャラふたりとは思えないにぎにぎしさで、楽しく読ませていただきました。このスタイルの作品は、説明しすぎてくどくなりすぎたり、逆にすかすかになりやすいので、それを引き起こさずに密度を上げられるのは武器になると思います。

ありがとうございます。説明したい気持ちを抑えながら執筆するのは大変でした。でも、これも一つの武器になるなら伸ばしていきたいです。

> ネタ的には、丹の効能がちょっと複雑なので、わかりやすい設定にできるとキャッチーですね。たとえば「量」が重要(たくさん食べると効果大、少量しか食べないから効果小)だと、女子ふたりが無意味に丹を食わせ合ったり、または食い合う展開にできたりします。

丹の効能については自分だけ分かったつもりでいたので、読者への配慮を忘れてました。反省します。
量ですか、いいですね。豊胸丹とか太っ丹とかを無意味に食べまくって、ムクムクふくれてくのも面白そうですね。

> また、聖女はこの作品内容だとあまり生きないので思いきってカットするか、使うなら、自分が捧げる(フランシスカにとってもっとも恐ろしい)代償としての丹を開発するお話にして、そこにジェシカの豊胸丹をからめる……という展開はひとつアリかなと思います。

私も聖女のカットは考えたのですが、フランが代償派に憧れる理由付けと、シェアードワールドで繋がった同じ世界にいますよっというアピールとして残しました。第三研究棟での火災は誰かがきっと起こしてくれます(投げ槍ですみません)。
なるほど、その展開も面白そうですね。妄想の幅が広がりました。

自分はまだまだ素人なので下読みをやってらっしゃる方に感想やアドバイスを頂けるのはとても嬉しいです。今、忙しいので書けるかは分かりませんが、もしもう一作書けたなら、読んでいただき批評を頂けたらと思います。

最後になりましたが、私の作品を読んでくれてありがとうございました

[No.46467] 2014/10/13(Mon) 16:00:29
Re: 魔研戦隊ゴースト・ファイターズ (No.46465への返信 / 2階層) – サイラス

どうも、サイラスです。

> 本当は、管理官含めた戦隊の別のオチも考えたんですけど、インパクト薄いかなと思ってこんなかんじに。。。
>
> 戦隊というより、魔法少女的な?
>
> ダメ出しもびしばし、お待ちしてます。

ネタの言いだしっぺとしてですが、仕事が早いですね。

後半のやりとりは、なかなか面白かったです。ただ、もう少しコウ君を、悪霊と戦わせても良かったかもしれません。その成仏とともに、性転換の状態が解除され、それを、ミラに色々と誤解されるのも面白かったかもしれません。

[No.46468] 2014/10/13(Mon) 16:21:25
上下派の天敵――≪BOZE・坊主≫襲来 (No.46404への返信 / 1階層) – どあのぶ

これは、まだ上下派の髪型・モヒカンが絶対視されていた頃の話。

ある日、窓から飛んできた何かが、昼寝中の上下派総帥のケツをえぐりながら壁に刺さった。
矢文である。
憤慨した総帥は、血まみれのケツを抑えながら乱暴に手紙を開く。
そこにはこう書かれていた。
『前略。近々、≪MIHOTOKE・御仏≫の教えを御派閥に広めに参ります。草々。≪BOZE・坊主≫』
たったこれだけの短文。
しかし総帥は、一読しただけで、恐怖と興奮のあまりケツから噴水のように血を吹きあげた。
血まみれの総帥の口から、甲高い叫び声が漏れる。
「……アカン。こりゃ戦争じゃあ!」
まろぶように部屋から転がり出て、総帥は上下派の魔法使いを招集する。
何人もの上下派魔法使いを改宗させた、≪BOZE≫を迎え撃つために。

「先輩!いったい何が始るんスカ!?」
「総帥が言ってただろ! 戦争だ!! お前も気合入れてけ!」
全く説明になっていない台詞を吐いて、先輩は忙しく戦の準備に駆けていく。
(そうはいっても、新人の俺にわかるわけがないっつーの!? なんだよ戦争って!)
ついこの間、上下派に加わった新米魔法使いアザースは、これ以上ないくらい混乱していた。
なんでも、これから異教の魔法使い集団≪BOZE・坊主≫が上下派本部を攻めに来るらしい。
≪BOZE≫は、上下派の天敵だ。大魔法使い≪MIHOTOKE・御仏≫のご加護により、何事にも動じない鋼のメンタル≪SATORI・悟り≫を手に入れた僧侶系魔法使いの一派。研究所には属さず、呪文≪OKYOU・お経≫の布教を目的に各地を放浪している。
しかし、なんでそいつらが攻めてくるのか。
そこがどうしてもアザースには納得できない。完全に≪BOZE≫の言いがかりだったからだ。
≪BOZE≫が言うには、上下派の世紀末感は、世界の終わり≪MAPPOU・末法の世≫を呼び起こすものらしい。それを防ぐには上下派が改宗して、派閥自体がいなくなればいいと……。
(そんなん誰が信じるんだよ!……って先輩たち信じとるし。俺か!? おかしいのは俺なのか……!?)
モヒカンながら常識派を自認するアザースは、とりあえず泣きながら迎撃準備に入ることにした。そうじゃないと精神的にとても耐えられそうになかった。

交戦地は、研究所外れの荒野。
地平線の向こうから黒い僧服を着て、頭つるぴかの≪BOZE≫達が大勢をなしてこちらに向かってくる。
(……なにこれ怖い)
「いいか、アザース。奴らは、俺たちのテンションをガタガタにする魔法を使ってくる。上下派の天敵と呼ばれる由縁だ。絶対かかるなよ!」
「気合でどうにかなるんですか!?」
「うっさい! 他に方法はないんだよ! あとな、モヒカンだけは死守しろ! あいつら剃刀でモヒカンを狙ってくる。俺たちは、モヒカンが命だ! つるぴかになったら、魔法が使えなくなるぞ! さあ、いくぜー!ヒャッハー」
そういって、先輩は≪BOZE≫の群れに突撃していった。
アザースが出遅れている間に、すでに、あちこちで魔法戦が始まっていた。

直ぐ側でも、熾烈な戦いが繰り広げられている。
アザースは慌てて走り寄った。隙をみて加勢するつもりである。
しかし、目に入る光景はついこの間上下派に入ったアザースには、わけのわからないものだった。

「死に腐れ≪BOZE≫共! 汚物は消毒じゃあ!」
赤モヒカンが≪BOZE≫を火炙りにしようと、火炎放射器から火を放った。
(いやいや、それ魔法なのか!?)
大丈夫だ、問題ない。この上なく魔法です。
※灯油は、モヒカンの圧縮魔法で作りました。火炎放射器はOBからの寄贈品です。この場を借りて御礼申し上げます。
狙われた黒い坊主は、数珠を片手に引っかけて拝み手を作る。
そして、至極冷静に呪文を唱えだした。
「絶対零度魔法≪DAJYARE・駄洒落≫ 『布団が吹っ飛んだぁ!』」
(いやいやいや、もうそれ魔法ですらないだろ!)
真っ当なアザースの突っ込みに反して、現実は恐ろしいことになっていた。
坊主の前に、氷の壁ができていたのだ!
火炎放射器から噴き出した炎が遮られる。それどころか、火炎放射器自体が凍り付き始めた!
(魔法じゃなかったー!大魔法だ、これー!)
慌てだす、赤モヒカン! 氷を必死に払いだすが、なぜか動きが鈍い。
実は、この≪DAJYARE・駄洒落≫は対上下派魔法使いのために開発された魔法である。この魔法を使われると上下派は、あまりのくだらな……寒さにテンションが下がり、魔法が使えなくなってしまうのだ。
坊主は、弱った赤モヒカンを簡単に蹴倒すと、剃刀を閃かせた。

(ちょ、ちょっと待て!)
本来の目的を思い出したアザース。混乱のまま、炎の妖精を召喚しようと試みる。
この妖精はあまりの暑苦し……もとい火力で氷を解かすことができる上に、仲間のテンションを上げる効果があった。混乱しているにしてはナイスな選択だった。ちなみに炎の妖精の名前は「シューゾウ」という。由来は大人の事情で誰も知らない。
しかし、混乱したままでは召喚は当たり前のように失敗する。
アザースがまごついているうちに、赤モヒカンは上下派の象徴『モヒカン』を切り取られてしまった。
――――これでは、赤モヒカンならぬただの赤さんである。

(あーあ……)
モヒカンをなくした上下派は、他の派閥に移籍しなければならない。テンションを上げるのにモヒカンは最重要視されているからだ。事実、モヒカンをなくした上下派は常に意気消沈してしまい、上下派魔法を使えなくなってしまう。
アザースはこの制度が正しいとは絶対に思えなかった。モヒカンがなくても上下派魔法を使える例を知っていたからだ。しかし、それが制度なら新米魔法使いにはどうしようもなかった。せめて、心理的ストレスと魔法失敗の関係が研究されれば、モヒカン自体は魔法に関係ないことがわかるのに……。
アザースは、元赤モヒカン、現赤さんのこれからの苦難を思ってため息をついた。

「小僧、暇そうじゃなぁ。ちょっと、≪SYUKKE・出家≫でもせんか? 丁度剃刀もあるでの」
赤モヒカンを倒した黒い坊主が、ニタリと笑ってアザースに向き直る。その手には、赤い髪の毛の付着した剃刀が鈍い光を発していた。
「……俺ぁ、まだ人生捨ててねぇんだ。≪SYUKKE≫なんて御免だね!」
「なぁに、モヒカン落とされたら嫌でも隠棲したくなる。そこの元モヒカン殿も然りじゃ」
呆然として座り込んでいる赤さんを指す、黒い坊主。
元とはいえ仲間を馬鹿にする表情が、アザースの癇に障った。
「上等じゃあ、くそ坊主! いてこますぞゴラァ!」
怒りのあまり口汚くなるアザース。勢いのままに坊主に突進する。
実力差がはっきりした無謀な勝負が始ろうとしていた。

「ば、馬鹿な……」
数十合にわたる魔法の打ち合いの末、膝をついたのは、なんと黒い坊主だった。
あまりに予想外の成り行きに、周囲の戦いの手は随分前から止まっていた。固唾を呑む音が方々から聞こえる。
「なぜじゃ。なぜ、≪DAJYARE・駄洒落≫が効かぬ……。あれは、上下派の弱点のはず。それに、貴様その頭は……。」
呆然とアザースを見上げる黒い坊主。
アザースの頭には、モヒカンがなくなっていた。
黒い坊主が切り飛ばしたわけではない。つるりと取れてしまったのだ。
モヒカンがないのなら、上下派魔法は打てないはず。それなのに、なぜアザースは上下派魔法が使えたのか。
自分の秘密が衆人にバレて、アザースはやけくそ気味にまくしたてた。
「はっ、解せねぇって面だな。……そうだよ、俺は上下派に入る前からモヒカン――つうか髪がなかった。ハゲだったんだよ。上下派に入ってからは、ずっとモヒカンのヅラをしていた」
「ヅラだと? それでは理屈が通らぬ! モ、モヒカンがなければ、上下派魔法は打てないはず。ハゲではどうしようもないではないか!?」
「ちぃせぇ! 心にモヒカンがあれば、ハゲでも上下派にはなれる! 俺は絶望を乗り越えて、そう≪悟った≫んだよ!」
周囲がシン、と静まり返った。
アザースの告白は、この戦いを根底から揺るがすものだったからだ。
≪BOZE≫達が戦いを仕掛けたのは、上下派に≪MIHOTOKE≫の教えがもたらす≪SATORI≫を広めるため。そして、≪MAPPOU・末法の世≫を食い止めるためである。
「……なら、それならば貴様はわしらと同じではないか。上下派のままで、≪SATORI・悟り≫を開くとは……」
黒い坊主は呆然と首を振った。
異教徒の中に、同じ神の姿を見たことが自分でも信じられなかったのだ。
戦いを見ていた≪BOZE≫たちも気付いた。上下派の世紀末感は魔法のためであって、本心から≪MAPPOU≫を望んでいるわけではないことを。
もし、本当に≪MAPPOU≫を望んでいれば、上下派のアザースが≪SATORI≫を開けるわけがない。
静まり返る戦場の中、黒い坊主がくつくつと喉を震わせる。そして、最後には大きな笑い声になった。
場が緊張する中、ようやく笑い声が小さくなる。黒い坊主はにこやかにアザースに話しかけた。
「お若いの、貴派の総帥に繋いでもらいたい」
「あ? 総帥に何しようってんだよ」
「なに休戦協定じゃよ。此度≪BOZE≫を率いていたのはわしでな。指導者として、戦の始末をつけにゃあならん。……わしらの負けじゃ」
「……え?」

こうして、よくわからないまま≪BOZE≫との戦争は終わった。
この戦争で上下派が得られた教訓がある。
『心にモヒカンがあれば、ハゲでも上下派にはなれる』
以降、上下派の髪型がモヒカンが絶対視されることはなく、あくまで推奨髪型に落ち着いたのであった。
最後に、休戦協定を結んだ際、黒坊主が残した言葉で物語を終えたいと思う。
『結局、”神”を巡る”髪”の戦いでしたな……。いや、仏だけに”ほっと(け)”くべきでした』
……こいつの懲りない≪DAJYARE・駄洒落≫により協定会場でも上下派がバタバタ倒れたことを追記しておく。

――――――――――――――――――――――
こんにちは、ジジさま。どあのぶと申します。
こちらのイベントが楽しそうだったので遠慮なく参加させて頂きました。
4000字の縛りはなかなか難しかったですが、脳みそが刺激されてバリバリ筆が進みました。それにしても、本作は他の方々と時系列がかなり違うような気がしますが、シェアワールドとしてこれはいいんでしょうか? うむむ。
4000字ぎっしりの文字数で読みづらいと思いますが、平にご容赦を。また、それを含めて厳しいつっこみをお待ちしております。
それでは、読んでいただきありがとうございました!

追伸
キャッチコピーコンテストでは大変ありがとうございました!たくさんの感謝の言葉は集計終了後にあちらで必ず述べさせて頂きます!(スレ違いで申し訳ありません;)

[No.46469] 2014/10/13(Mon) 17:28:29
Re: 冥府の料理人ノエルのひそかな愉しみ―または、管理官の秘密 (No.46461への返信 / 2階層) – 須賀透

か、管理官の代償魔法にそんな裏があったとはっ!
少ない文字数ですが、オチに驚きがありました。
でも、いちおうノエルの推測に過ぎないのかな……?
髪を生やすよりも、卑屈な性格が直る「丹」を作ってあげればいいのにと思ったり(笑)
楽しい作品をありがとうございました。

[No.46470] 2014/10/13(Mon) 17:29:41
Re: 上下派の天敵――≪BOZE・坊主≫襲来 (No.46469への返信 / 2階層) – サイラス

どうも、サイラスです。お久しぶりです。

この作品、なかなか面白かったです。主人公の突込みやテンポがよく、ネーミングの安直さもここでは、活きていますね。

[No.46471] 2014/10/13(Mon) 20:05:34
須賀透様、ありがとうございます (No.46470への返信 / 3階層) – あまくさ

読んでいただいて、ありがとうございます。

管理官さん、いつの間にかハゲで通っているようなので、少しひねってみました。て言うか、捻じ曲げてしまったというか。ジジさん、すみません(汗

[No.46472] 2014/10/13(Mon) 20:17:52
Re: 冥府の料理人ノエルのひそかな愉しみ―または、管理官の秘密 (No.46461への返信 / 2階層) – ねね

とても楽しく読ませていただきました!

ハゲネタを皆さんが取り上げていて、浸透していたので、余計にオチのインパクトが感じられました。

シェアワールドの醍醐味ですね!

それをうまく利用されていて、すごいな、上手だなと思いました。

[No.46473] 2014/10/13(Mon) 20:24:00
Re: 永久凍庫の秘密 (No.46464への返信 / 2階層) – ねね

仄暗い感じがツボでした。
読む側としてはこういうお話大好きです。

ローテンションってこういう持って行き方があるんだと目からウロコでもありました。

ローテンションの人たちの重い魔法をどう扱っていいのか、思いつけず……諦めた口なので、もう一度わたしも考えてみようかなと思いました。

[No.46474] 2014/10/13(Mon) 20:37:12
Re: 魔研戦隊ゴースト・ファイターズ (No.46468への返信 / 3階層) – ねね

サイラスさん

>ネタの言いだしっぺとしてですが、仕事が早いですね。

サイラスさんも、早速のコメントありがとうございます!
早いことが唯一の取り柄です。orz
>もう少しコウ君を、悪霊と戦わせても良かったかもしれません。その成仏とともに、性転換の状態が解除され、それを、ミラに色々と誤解されるのも面白かったかもしれません。

なるほど!霊取り豚に気を取られすぎてました。
コウよりもそっちに愛着が……

ラストのオチも別のパターンを思いついたので、中盤から後半にかけてサクっと改稿してみます。

貴重なご意見をありがとうございます!

[No.46475] 2014/10/13(Mon) 20:48:01
Re: 永久凍庫の秘密 (No.46474への返信 / 3階層) – へろりん

ねねさんへ
感想ありがとうございます!
シェアワールド楽しんでますね^^

> 仄暗い感じがツボでした。
> 読む側としてはこういうお話大好きです。
>
ダークな感じは、最近の自分の作風です。

> ローテンションってこういう持って行き方があるんだと目からウロコでもありました。
>
> ローテンションの人たちの重い魔法をどう扱っていいのか、思いつけず……諦めた口なので、もう一度わたしも考えてみようかなと思いました。

上下派の設定を読んだとき、派生形のローテンションって、絶対こういうヤンデレだって思ったんですよね。
ジジ様の思惑がどうだかはわかりませんが、自分はこういう解釈をしました。
それぞれの作者独自の解釈をするのも、きっとシェアワールドの醍醐味なんでしょうね。

食堂派が食の次はアッチというのも自分的には好きな設定だったりします。
その設定を生かしてシャルロッテさんでもう一本書こうかなと思ったりしましたが、ちょっと余裕がなくて無理そうです^^;

ねねさんが書くヤンデレちゃん? 楽しみにしてます^^
ではではーノシシ

[No.46479] 2014/10/13(Mon) 21:41:39
ねね様、ありがとうございます (No.46473への返信 / 3階層) – あまくさ

ねね様、はじめまして。読んでいただけて、とても嬉しいです。

>シェアワールドの醍醐味ですね!

他の方の設定にのってみたり、少しいじってみたり。そうやっているうちに物語が広がっていくのが楽しいですね。

[No.46481] 2014/10/13(Mon) 22:04:14
「妖蛆の秘密(De Vermis Mysteriis )」 (No.46404への返信 / 1階層) – 東湖

「妖蛆の秘密(De Vermis Mysteriis )」

蛆虫に陽の光は似合わない、とロッシュは思った。
峠道で、ようやくロッシュは死んで腐りかけた獣を見つけることができた。
体毛はなく、皮膚は焦げ茶色になって目と口腔に蛆虫があふれている。
周囲には異様な悪臭が漂っていて、空気さえ腐っているような気がした。
死臭と蛆そのものが放つ臭いは強烈で、慣れた今でも油断すれば嘔吐しそうだった。
獣は、毒で死んでいる。
というより、こういう風に死ぬ毒を団子に混入してばら撒いておいたのだ。毒で殺しておけば、他の獣に食い荒らされることが少ない。
無味無臭の毒を作ることは難しかったが、食堂派の連中にさりげなく教えてもらったことを自分なりに工夫して作り上げることに成功した。
ロッシュは、かがみ込んで菜箸を使って蛆虫を一匹一匹袋に詰めていった。
死体は死体で袋に詰めて持って帰れば、当分は蛆虫の採取に困らなくて済む。
他人が今の自分を見れば、狂っていると思うだろうという自覚はあった。
ただ、本当に狂っているのかどうか、自分では分からなかった。
魔法研究所にいたころも、よく《狂っている》と言われたが自分では狂っていると思ったことが一度もなかったのだ。
ただただ普通にしているだけで、心のありようは今も昔も何一つ変わっていない。
もし変わったことがあるとすれば、それは叶わない願いを叶える方法を見つけたことだけだろう。
今日も、よく晴れている。
空を見上げて、ロッシュは一人そう思った。

**********

火が硬い、と『さすらいの魔女』ミラ思った。
焚き火が、小気味よくパチパチと燃えるだけの静かな夜なのに、ミラは終始えも言われないおぞましさを覚えていた。
東方は、はじめて訪れる地ではあったが温暖で過ごしやすい。
穏やかに余生を送るつもりであれば、うってつけの地だとも思った。それなのに、火は硬く、風は重く、空気は澱んでいる。
ミラの憂鬱な気分を、陰湿なものへと変えるのに十分な気配を、山全体が放っているかのようだった。
「禁断の魔導書か……」
今から半年前。
魔法研究所で、禁書指定された『妖蛆の秘密』が盗まれるという事件が発生した。
『妖蛆の秘密』は、《ラーマ神殿》の地下より偶然に発見された本で、純研究派の解読にあたった三人のうち二人が発狂して死に、一人は失踪した。
内容は《知られざる生命の秘密》について書かれていることが判明しただけで、いくばくも明らかになっていない。
それでも、研究所は『妖蛆の秘密』を禁書指定し、ミラに探索を命じた。
『予言の書』によると、この世の秘密が解明された時、《大いなる災い》が世界を滅ぼすとされていて、秘密を管理・隠蔽するのも研究所の勤めだった。
明日は、嫌な日になるだろう。
揺らめく炎のひらめきの中に、ミラはため息を投げ入れた。

**********

食堂派の派閥長ノエルは自室で、長い長いため息をついた。
代償派の『知り過ぎたるミーミル』のゲルトに頼んでいた、ロッシュの過去視(クリスタロマンシ)がようやく終わり、報告を聞くことができたのだった。
同時に、ミラからも仕事が完了したとの報告が『無垢の聖女』さまの元にあったそうだ。
何もなかった。きっと、そういうことになるだろう。
もしかすると、自分はロッシュのことが好きだったのかもしれない。
ふと、ゴーヤチャンプルを作っていた時の、彼の笑顔が思い浮かんでは消えていった。
ロッシュの代わりに、酔いつぶれるまで呑もう、とノエルは思って立ち上がった。

**********

ロッシュは、どこでどうしているだろう、と永久凍庫のオーナーであるハンスは受付で古い魔導書を読みながら思った。
ある日、突然やってきて極秘で保存して欲しいと五つの大きなガラス瓶を持ってきたのだ。
ガラスは遮光性で中身はよく見えなかったが、ハンスは快く承諾した。
同じ純研究派であったし、同じ古魔導書研究という数少ない同士だったこともあるが、目の奥に宿る狂気に自分と似たものを感じたからだった。
その後、ロッシュは失踪し魔導書『妖蛆の秘密』盗難の容疑がかけられたと知った。
ハンスの元にも、ロッシュが何を預けていったのか監察部が調査に来たが断固として拒否した。
不誠実であるが故に、ハンスは誠実でもある。
ただ、監察部に対してもロッシュが預けていったものが『妖蛆の秘密』でないことは請け負った。
なぜならば、ロッシュに黙って《中身》を確認したからだ。
面白いことが、起こりそうだ。
ハンスは、ロッシュのガラス瓶の前を通るたび、《中身》に向かって笑いかけるようになった。
この先も、ロッシュが置いていった金額分は極秘保存を続けよう。場合によっては、少しサービスをしてもいいかもしれない。
もっとも、過去視に必要な媒体を監察部に密かに回しておいた。きっと、ロッシュが研究所に戻ることは、もうないだろう。
こうしてハンスに、一つ楽しみが増えた。

**********

今までと感じを変えようと思ってやったら、ブン投げ感がすごい。いやヒドイ(汗)
それなのに、今までで一番難産でした・・・
大事なことをあえて書かない、という方向でやったのですが、受け入れられる範囲なのか、アウトなのかが心配です・・・

蛆虫は好きなので、一度短編でちゃんと書きたいとは思っているのですが(汗)
あまくささんへ

>冥府の料理人ノエルのひそかな愉しみ―または、管理官の秘密
・拝見しました。ぶはっ
ラストの番宣で吹いたw
また、色々絡みやすそうな作品に仕上げられましたね。管理官の設定のちゃぶ台返しw
お見事w

>長編を読んでみたいです。
・いつも、ありがとうございます。
でも、私の長編はラノベっぽくないんですよ。黒くてグロいんです。設定でジジさんが魔法研究所には権謀術数 ないっつってんのに、私はそういうのが好きなんで、今回のようなのを書いちまうし。
しかし、あまくささまがそうおっしゃってくださるなら頑張ってみます✩
>リナの立つ瀬がない
・う、うん、ごめん!
百合ん百合んさせよう(汗)

>ジェシクに与えた基本的な性格は『未熟な自尊心』なんですね。私は年のせいもあって、そういう性格をつい批判的に見てしまうのですが、書きながらふと「こういう性格って、書きようによっては若い人にはむしろ気に入られるのかも?」
・わかりやすいですよね、未熟な自尊心て。
好意的にとっていただけたようで、ひと安心しました。もう、本当にドキドキしながら殴りに行きましたので。実は(汗)
たぶん、この企画もあまくささんが居なければ参加しなかった可能性が高いです。
祭り嫌いの人見知りなので・・・
色々、ありがとうございますノシ

へろりんさま
・ハンスくん、拝借しました。
作風も狂気も好きです。
昔、HNを変えようと思って、鎮痛剤のケロリンにしようと思ったんですけど、ちょうどその時、確か企画の方だったと思うのですが、けろりんさまが彗星のごとく現れたので、やめたんですよね。お懐かしい。おかげで、今では二つ目の名前はホルマリンになりました・・・どうでも、よくてすみません。
また、機会があれば絡みましょう~

雷さま
・ミラちゃん、借りっぱさせていただいてます! 助かってます。いやぁ、彼女は有能ですねw
>さすらい。あきない。はじらい。
拝見しました。超面白かったです。
さては、さぞや名のある書き手とお見受けしました!
お名前は、ちょくちょく拝見しますが絡むのは初めてですね。今後共、よろしくお願いします。

[No.46482] 2014/10/13(Mon) 22:23:22
★★インフォメーション★★ (No.46404への返信 / 1階層) – ジジ

思惑どおり、みなさまの交流も盛んになってきて、私が余計な口出しをする必要はなくなりました。
ですので、今後は特に要望がなければコメントは控えることにします。

それでは引き続き、シェアードワールド的なものをお楽しみください。

[No.46488] 2014/10/14(Tue) 00:27:42
恋する土の乙女 (No.46404への返信 / 1階層) – まーぶる

マール、
マール、
迎えに来たよマール。
やっと、研究してた物が完成したんだ。
約束通り結婚しよう、マール。
さすらいの魔女ミラに用意してもらった指輪を見つめる。そうだ、研究を手伝ってくれたアイニッキにお土産を買わなきゃ。
そろそろ村の入口が見えるはず。良い天気だ。

あれ、なん、で。 村が、故郷が、ない。
ただ、廃業が広がるばかりだ。
マール! マール! ボクのマール!
彼女の家は、ボクん家の隣だったはず。思わず駆け出した。
間もなく、完全に崩れ落ちた思い出の家が現れた。
マール、マール、無事でいてくれ。祈る気持ちで瓦礫をどかす。
「ロン」
「マール!」
「ごめん、村、魔蟲来て」
「わかった、わかったから」
マールを抱きしめる。
「おじさんも、おばさんも、必死に戦ったけど」
「うん、うん」
ボクの両親は村一番の魔法使いだった。きっと、村を守ろうと、すでに。
涙が止まらない。
「ねえ、来たって事は、完成したんだね」
「そうだよ。だから、迎えに来たんだよ」
指輪と研究成果の土人形をマールに渡す。
「ありがと。大好きだよ」
マールがゆっくりと目を閉じた。
「マール!」
「私は、私は『恋する土の乙女』」
「何を言ってるんだ、マール」
マールの体を揺するが反応しない。
土人形が喋っているのに気づいた。
「この娘と土人形の魔力が合わさり私は生まれた。代償は、この娘の命と、あなたの愛情。それで私は永遠にあなたの身代わり」
目の前でマールの体が消え、土人形がマールの形になる。
ボクは土人形のマールと見つめ合う。
涙は止まっていた。

二人で研究所に帰る。
あれ? ボクは何しに村に帰ったんだっけ?
何を得て、何を失っタんだロう?
ネえ、ダれか、オしえテヨ。

******

色々恥ずかしい。

ミラとアイニッキの名前、使わせていただきました。
ありがとうございます。

[No.46493] 2014/10/14(Tue) 01:42:24
Re: 恋する土の乙女 (No.46493への返信 / 2階層) – 名前はまだない

こんにちわ、名前はまだないです。

レポートが終わらない……。疲れたしパソコン開くか。おっ! ちょうど新しいのが投稿されてる! レポートやりたくないし感想でも落としてみるか。
っという訳で、感想を残していきたいと思います。

とりあえず、勢いで書いた感が凄いですね。それが良い事か悪い事かはわからないですが、私はあまり勢いで書く事が出来ないので少し羨ましいです。(勢いじゃなかったらすみません)

内容なんですが、掌編に向いている内容ではないと思いました。こういったシーンが長編物語の後半にきてマールとロンに充分に感情移入が出来ていれば泣ける山場になるし、物語の序章にくれば二人の運命が気になる良いシーンになると思います。
ただやっぱり掌編として見ると、泣けるわけでもなく、物語が続くわけでもないので面白みに欠けてしまいますね。
でも、個人的にはこういうシーンは好きです。マールが心配で心配でたまらないロンの姿、ロンの為なら命を代償にしても構わないというマール、でもロンの中のマールへの愛情が消えてしまう……。切なさで飯が三杯食べられそうです。

あと一つだけ、最後のシーンなんですが、ロンがマールについての記憶を失っているように感じました。代償にする物を愛情から記憶に変えるか、最後のシーンを変えるかした方がいいと思いました。

こんな所ですかね。眠さでタイプミスとか日本語がおかしい所があったらすみません。あと内容も。
少し酷評気味になりました。まあそれもこのサイトの醍醐味と言う事で、私はレポートに戻りたいと思います。
P.S.『会議はまわる、金がふる』は面白かったです。これからも執筆頑張ってください。

[No.46494] 2014/10/14(Tue) 02:54:25
Re: 「妖蛆の秘密(De Vermis Mysteriis )」 (No.46482への返信 / 2階層) – 須賀透

コメディっぽい設定を、すごいとこに着地させおった~!(笑)
(……こういうのを、風呂敷を広げるっていうんですよ?)

おそらくこれが本来の東湖さまの作風・文体に近いのでしょう。
東湖さまの作品は、深い知識に裏打ちされているからこそ強度があるのだなと思わされました。
勉強させていただくべく、また興味を持って、穴の空くほど読ませていただきました。
じろじろじろ。
(◞≼◉ื≽◟ ;益;◞≼◉ื≽◟)

>>揺らめく炎のひらめきの中に、ミラはため息を投げ入れた。
こういうさりげないところの描写がステキですね。
いや、文章がお上手であられる。

>>火が硬い、と『さすらいの魔女』ミラ思った。
助詞抜けじゃないかと須賀思う。

[No.46495] 2014/10/14(Tue) 03:30:47
Re: ★★インフォメーション★★ (No.46488への返信 / 2階層) – へろりん

ジジ様

お久しぶりです。
へろりんと申します。

> 思惑どおり、みなさまの交流も盛んになってきて、私が余計な口出しをする必要はなくなりました。
> ですので、今後は特に要望がなければコメントは控えることにします。
>
どうも投稿するタイミングがちょっと遅かったようですね。
さっそくで申し訳ありませんが、自分の投稿作にコメント&アドバイスなどいただけるとありがたいです。

タイトル:永久凍庫の秘密
キャラ三人/一人称/約4000字

お手すきのときにでも、よろしくお願いします。

> それでは引き続き、シェアードワールド的なものをお楽しみください。

はい! 楽しませていただきます!

[No.46496] 2014/10/14(Tue) 05:53:05
Re: ★★インフォメーション★★ (No.46496への返信 / 3階層) – ジジ

おつかれさまです。

>  どうも投稿するタイミングがちょっと遅かったようですね。
むしろ最高のタイミングかと思います。
この企画は、創作掲示板のやりとりを交流掲示板で、その人の作品を見ながら機能できないかというところから立ち上げてみたものですので。

>  さっそくで申し訳ありませんが、自分の投稿作にコメント&アドバイスなどいただけるとありがたいです。
了解しました。

[No.46497] 2014/10/14(Tue) 09:55:11
Re: 永久凍庫の秘密 (No.46464への返信 / 2階層) – ジジ

独特の雰囲気を醸し出す、よいストーリーです。
ミーナさんの設定がその雰囲気とうまく噛み合っているのも好印象でした。

ただ、この展開なら、まず「ハンス君が超もてる→永久凍庫の番をするからと女子を蹴散らす→それでも追いすがる女子/女性」の流れで展開をコンパクトにまとめるほうがよいかと思います。

また、ハンス君の代償が本人にとってどのような苦痛を伴うかがわからないこと、ニーナさんとハンス君の関係性が不透明、この2点はかなり気になります。
代償は、本人にとって壮絶なマイナスをもたらします(というほうが設定として映えるものと私は思っています)。
このストーリーなら、たとえばハンス君は永久凍庫を保つ(ニーナさんのローテンションを保つ)ため、女性をたぶらかす能力を手に入れる。代償として、本当に愛しているニーナさんの信頼を失っていく。等はよいかもしれませんね。しかもニーナさんが焼き餅を焼いてくれないと凍庫が保てないわけなので、そのあたりでお話を広げられそうです。

ともあれ序盤をまとめ、ハンス君とニーナさんの関係性をテーマにした展開(構成上、ニーナさん自身は登場できないでしょうから、ハンス君が他の女性に見せる態度やセリフ、回想という形になるでしょうが)を入れるのがよいかと思います。

[No.46498] 2014/10/14(Tue) 10:30:46

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