男のロマンとは一体何?/新人賞下読みが回答

2015/10/06(火曜日)ゆいさんの質問

『女性向け小説で恋愛抜きの男のロマンを書くためには?』のお返事ありがとうございます。

少女向けでこれを実現しているジャンルは、最近見なくなってしまいましたが「宝塚音楽学校もの」。恋愛を考えなくとも成立するのは「部活もの」ですね。男性向きではありますが、日本橋ヨヲコ氏のコミック作品『少女ファイト(講談社KCデラックス)』は参考になるものと思われます。

部活モノっていうと最近は少年漫画系のイメージしか無いですね。
少女向けで浮かんだのが漫画の青空エールでしたが、方向性は違うな、と思います。

タカラヅカモノっていうのは、正直ジャンルとして存在することを初めて知りました。あるんですね。
いい例が浮かばなかったのですが強いて言うならガラスの仮面とかその辺なんでしょうか?
男主人公でもいいなら部活というと羅川まりもさん作品等が出てくるんですが……。

上げていただいた少女ファイトは表紙を店頭でよく見かけるようになったなとは思いますが読んだことはなかったです。
解説や評価を見る限り女性の方が読みやすいような気がしましたので今度見てみます。
ありがとうございます。

ただ北方氏の作品を思い浮かべると、確かに理想を追い求めているんですが、作者様もおっしゃっていますがその行き着く先は滅びと言うか、少年漫画のように皆で協力して夢を達成するような明るさとは無縁です。しかし陰湿さもない気がします。

理想を追い求めていながらも潔さと哀愁を纏っているこの感覚はなんなんだろうなぁってずっと思っていますが、よく理解出来ません。

確かに男のロマンというべきものなんでしょうけども……。
でも他の男性が描く戦記物と違ってそこに自分が惹かれるのは間違いないんですよね。
生き急いでいるというか。見てると切なくなります。

その切なさが共通しているのは幻想水滸伝やロードオブザリングのフロドへの想いなどがありますが。
目的の為に全てなげうって邁進する姿的な。
そういう男がぞろぞろ出てくるのが北方水滸伝かなと。

部活モノで敗北を味わうような展開でも描けば何かわかるでしょうか。
それが少女向けにフィードバックできれば、自分の描きたい理想が形になったりするのかなぁ……。
うーん、実際にやってみないとわかんないところでしょうか。。。

また、恋愛抜きで女子向きの武侠系浪漫を書くならば、

1.男性と女性では思考の構造がちがうことを作中で明示していく(個人的には、女性の「感情で動く」部分はクローズアップするべきかと考えます。また、比較対象となる男性キャラを置くのが無難ですね)

2.その上で、女性読者の好みに対応したキャラ設定と関係性をつくる(「男性」を担う女性キャラは必要かと思われます)

3.ラノベのようにひとりの主人公を際立たせず、かならず思考や思想を共にする「女性的な横の繋がり」を意識する
……というような、男性的浪漫を楽しんでもらうための環境づくりをひとまずはしてみるとよいかと。

ただ、主人公に全てをなげうって邁進させると1と3の形が崩れてしまうんですよね。
そこを補完する何かは必ず入れないといけないということですね。

あ、でも全てなげうって邁進する姿で部活モノというとちょっと思いつくものがありました。
少女向で部活のマネージャーやるような作品がありますが、ああいう時のハラハラドキドキする女子の感情が北方先生の作品を読む時の自分の感情に近いのかも。

そういう雰囲気で戦記モノを描くなら女子の共感は得やすいんでしょうね。
その代わりロマンを追い求めるのはあくまで主人公の相手役の男キャラになってしまうので、自分の描きたいこととは少しずれるのかなとは思います。

プロは自分ではなく、他人を主体に考えることが求められるものです。これは創作も制作も同じことですね。
ですので、プロを目ざすのであれば、ここは迷うべきところではありません。
ただ、これは読者のことだけを考えて自分を殺せと言うのではなく、書きたいものがあるなら、読者が理解し、受け入れられる形にするにはどうすればよいのかを考えなければならない。というようなことが言いたいわけです。

正直、プロは目指していません。
目指したところで私の願いは叶いそうにないと思うからです。プロになるための方法論を学ぶことで目的達成、おっしゃるような自己実現の近道にはなるとは思いますが、そのために自分の訴えたいもの以外を描くことはできそうにありません。

もうちょっと若い頃にこちらのサイトに出会っていたらわからなかったかもしれませんが、現状でそれを仕事としてやっていけるとは思えません。
大変申し訳ありません。現実の仕事や家族の方が大事だと思ってしまうようになってしまいました。

ただ、自分の訴えたいものを、自分が知って欲しい、共感して欲しいと思う人たちにどうやったら伝えることができるのか。
それを悩んで考えることはプロを目指す人たちとも共通するものなんだなぁとは思っています。
ありがとうございます。

●下読みジジさんの回答

タカラヅカモノっていうのは、正直ジャンルとして存在することを初めて知りました。あるんですね。

そのものずばりの「宝塚音楽学院に入学した女子たちの物語」です。主人公が天才的な才能を持つライバルと男役トップの座を巡って競っていく(直撃世代ではないので、内容を勘違いしているかもしれませんが)という、90年代の『マーガレット』でよく見かけた題材になります。

男主人公でもいいなら部活というと羅川まりもさん作品等が出てくるんですが……。

ゆいさんは『花とゆめ』派でしょうか? 羅川真里茂氏といえば現在月刊マガジンで連載中の『ましろのおと』はいい作品ですね。

理想を追い求めていながらも潔さと哀愁を纏っているこの感覚はなんなんだろうなぁってずっと思っていますが、よく理解出来ません。

これは参考になるかわからないのですが……
私がよく知る元プロ格闘家は、事情により引退しなければならなくなったとき、目の前が真っ暗になって、手探りしながらとにかく外へ出たといいます。

それだけの絶望に襲われたということなのですが、その心情は「強くなることだけを考え、あがいてもがいてきたはずなのに、もう強くなることができない」、「強くなる意味も意義もない」というものであり、今もずっと「強くなりきることができなかった」という煮え切らない後悔があるそうです。

そして、リングで死ぬというのは、強くなる過程であるにせよ強くなった結果であるにせよ、強くなりたいだけで生きていた人生にふさわしい「エンディング」ではないか。そう語ってくれたものです。

男というか男として生きようと志す者は、人生をかけて追求しようとしたものに向かって前のめりに死にたいと願う部分があるのだろうと、私は考えています。それが実現できれば、まさに夢の中で死んでいけるわけですので。

現実世界で『ソードアート・オンライン』のようなフルダイブ型のゲームが発売されたら、きっとゲーム内で死のうとする輩が現われるものと思います。

と、長ったらしい話になってしまいましたが、まとめてしまえば男は「夢の中で死ぬこと」に夢想を持っている。というだけのことになります。生き急ぐ=死に急ぐの図式はまさにそれですね。

その点では、キャラに明確な目的を与えてしまうよりも「なんでそんなことで……」と読者や他キャラに思われるような理由で「急ぐ」ほうがロマンシブルかもしれませんね。

それを悩んで考えることはプロを目指す人たちとも共通するものなんだなぁとは思っています。

プロは目ざしていないとしても、自己満足では終われないところに立たれているのなら、要求されるものはプロ志望者と同じです。