[ 著者名 ] プーラン・デヴィ
[ 出版社 ] 草思社文庫
[ 発売日 ] 2011/8/5
ドラコンさんの書評
盗賊、それも反権力を旗印にする武装強盗団の「義賊」を描くときに、参考になる
一冊を紹介します。
盗賊団に誘拐された少女が、その盗賊団のリーダーと恋に落ち、結婚。夫が殺害された後、夫の敵を討つため自ら盗賊団のリーダーになり、権力者の富を貧しい民衆にばらまき、英雄扱いされる――小説の世界ならともかく、これは実際にあったとこです。しかも、何百年も昔ではなく、著者が当局に投降したのは、1983年2月12日です。そして、1996年にはインドの国会議員になっています。
特に上巻でのことですが、インドの貧困層の暮らし(例・電話、テレビ、カメラを使ったことのない人が初めて使ったときの反応)や、カーストによる差別(それも差別される側からの)のくだりは、興味深かったです。
盗賊のキャラ作りや、差別・貧困とは何かを知るには、参考になる一冊です。
この本の欠点、残念なところはどこですか?
欠点としては、インドに無知な私からすると、出てくる固有名詞の人名、地名、カースト名、神名の別が付きづらかったですね。解説と、訳者あとがきで若干補われているとはいえ、カーストをはじめとして、インドの事情について、詳細な注記をできなかったのでしょうか。
それに、盗賊団の組織や命令系統という面は薄かったですね。
また、著者が教育を受けていないので、月単位・年単位の時間の概念が分かりにくいです。
ライトノベルでは反映させにくいことですが、盗賊団に誘拐されるまでを語った上巻は、差別、貧困、幼児婚、虐待と、内容がかなり重いですね。このためページをめくる手も重くなりがちでした。