世界の神話百科 ギリシア・ローマ/ケルト/北欧/創作お役立ち本レビュー

[ 著者名 ] アーサー コットレル (著)
[ 出版社 ] 原書房
[ 発売日 ] 1999/9

シルヴィさんの書評

ヴィジュアル版世界の神話百科シリーズの一つ。
本書にはギリシア・ローマ、ケルト、北欧とそれぞれ三部仕立てで書かれている。
北欧の項目には、北欧神話のみならず、フィンランド神話、バルト神話、スラヴ神話も含まれている。
乱暴な言い方ながら、一言で言えば、本書は「細かいまでに詳しい」。
神話が生まれた背景である現地の文化、思想なども事細やかに書かれている。
「本が分厚くなった」と余計と思う人もいるであろうが、創作者にとって大変参考になるものに違いないと私は思う。

また、一部の項目の説明文(以下本書より引用する)には、

●ヴァルキュリア

ヴァルキュリアたちはもともと不吉な殺戮の精霊であり、暗黒の死の天使として猛禽のごとく戦場の空高く舞い、オーディンの名のもとに戦士たちに運命を割り当てていた。(中略)

後期の北欧神話では、ヴァルキュリアたちはオーディンの「盾の乙女」としてロマンティックに美化されている。金髪と雪のように白い腕の乙女たちはヴァルハラの壮大な館において、選ばれた英雄たちに尽きることのない蜜酒と獣肉とを給仕するようになったのである。そして戦場では麗しい「白鳥の乙女」、あるいは華麗な騎馬の女武者として軍勢の上を天翔けるのだった。

といったように、原型や背景の推察や、原型からの変化、当時の信仰についての解説も含まれている。

上記の特徴から見るに、本書は漠然と「神話を知りたい」と思う方、より詳しく知りたい方、神話が生まれた背景を知りたい方、神話のみならず当時の信仰や文化を知りたい方に薦められる本であろうと私は思う。

この本の欠点、残念なところはどこですか?

項目の説明文にはその項目に関わる物語や信仰も書かれているが、そのせいでごちゃごちゃしている感じが否めない。分けて書いてほしかったと思う。

物語や本、文化、宗教・信仰、概念、慣習などについての項目は書かれていない。他の部分は細かいまでに詳しく書いているのだから、そこも同様に書いてほしかった。

ケルトや北欧の項目にはダーナ神族、アース神族やヴァン神族、霜の巨人族、ヴァルキュリアについて書かれているが、アールヴ(北欧神話におけるエルフの名称)やドヴェルグ(北欧神話におけるドワーフの名称)、シー(ケルト神話における妖精の名称)といった妖精については独立した專門の項目として書かれていない。ギリシア・ローマのパートにおいてニンフが独立した項目として書かれているにも関わらず、だ。

それのみならず、北欧の項目には前述の通り、北欧神話のみならず、フィンランド神話、バルト神話、スラヴ神話も含まれている。

この項目には北欧神話について書かれていると思って読んだ読者はおそらく紛らわしいと感じるであろう。
私に言わせれば、きちんと神話ごとにパートを分けてほしかった。

時々コラム的な解説が入るが、殆ど絵画や写真が載っていて、肝心の説明はさらっと書かれており、あまり詳しくない。

本編ではこれでもかというほど詳細に説明されているにも関わらず、だ。
この解説パートに載った項目は絵画や写真の説明文などといった形で簡単に説明され、本編できちんと書かれない。
誠に勝手ながら、きちんと書かないのは読者に優しくないであろうと思う。

ケルトや北欧のパートでは、他のものと日本語表記が違う。
原語の綴りを見なければわからないのは、読者にとって面倒のはずであろう。
せめて最も一般的であろう日本語表記に統一してほしかった。

全般に言えることだが、説明文に含まれる一部の言葉には、日本語表記に英語のルビが振られていて、ややこしいと感じた。

本で紹介されている神話のうちいずれか一つについて知りたい方、それを元に作品を書きたい方には、そうでない他の神話や項目が余計に感じるであろう。その場合、目的の神話専門の本も併せて読む事をお奨めする。

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