神の守り人/ラノベレビュー・シルヴィさん

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[ 著者名 ] 上橋菜穂子
[ ジャンル ] 異世界FT
[ 出版社 ] 新潮社
[ 発売日 ] 2009/7/28

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シルヴィさんの書評

「守り人」シリーズ第五弾。
物語の内容を一言で言えば、「血を好む<畏ろしき神>を宿した一人の少女を巡る大河ドラマ」。
要するに主題は伝説に語られる<畏ろしき神>タルハマヤである。
この作品もやはり、

・写実的に描かれる国家の内情、人々の暮らしぶりや心理(特に食べ物の美味しそうに描かれていること!)
・冗長な様は一切感じられない、すっきりした写実的な文体
・作者の意図や説教臭さ、くどさなどが全く感じられない作風

といった特徴が挙げられる、「真の写実主義」の一言に尽きる上橋テイストで形作られている。
本作においてもやはり国家を巡るドラマが展開されるが、その核心は<畏ろしき神>タルハマヤにあることを忘れてはならない。

そもそも全ての始まりは、<畏ろしき神>タルハマヤを宿した<サーダ・タルハマヤ(神と一つになりし者)>となり、人々を恐怖で支配した一人の少女にあったのだ。それを全ての始まりと言わずして何と言うのであろうか。

余談だが、本シリーズは「(特に建国神話といった)伝説の秘密」、特に本作は「反社会的な狂信者」「国内での対立」など、「獣の奏者」や「鹿の王」といった後の作品に引き継がれる要素を含んでいる。

「あ、あれはあの作品にもあったような」
「これは後のあの作品に引き継がれているんじゃなかろうか」
「このキャラはあのキャラに似ている」

といったように、それらを探す旅(名づけて「上橋ワールドツアー」)に出かけるのも悪くないと私は思う。

お気に入りのキャラはいますか?

<畏ろしき神>タルハマヤに宿られた<サーダ・タルハマヤ(神と一つになりし者)>アスラ。

彼女は最初母の言う通りにタルハマヤを「悪い人を罰してくださる慈悲深いカミサマ」だと信じていたが、バルサやチキサの言葉でその心は揺れていく。最後にはほぼ完全に<サーダ・タルハマヤ>となりかけていたが、バルサやチキサのおかげで伝説の通りの残酷な神人になることはなかった。

ほぼ完全に神人になりかけていたなか、血と殺戮を欲すタルハマヤに打ち勝った心強さは特筆すべきところだと私は思う。

この作品の欠点、残念なところはどこですか?

欠点とは言いがたいであろうが、とりあえず注意しておく。

血なまぐさいシーンが上下巻ともに幾度か出てくるが、特に上橋作品らしくこれらのシーンも生々しく描かれている。

手加減せず描くのはいいところだと思うが、その類のシーンが苦手な方には厳しいところがあるかもしれない。
私でも流石に血なまぐさいシーンは怖かったが、それで物語の素晴らしさが霞むことはなかった。
むしろそのシーンがなければこれは名作ではないと思っている。

守り人シリーズ電子版 5.神の守り人 上 来訪編

ラノベ書評

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