小説の書き方「時限爆弾テクニック」危機とタイムリミットを作る!

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時限爆弾テクニック。危機とタイムリミット

  • あと10分以内に爆弾を解除しないと、爆発してみんな死ぬという状況。
    (危機とタイムリミットの設定)
  • 主人公は、解除ボタンを持ったラスボスと必死のバトル。
  • あるいは、10分以内に施設から逃げ出さなくてはならない。

というように、時限爆弾テクニックとは、迫りくる危機を設定し、主人公を追い詰めて行動の強い動機づけをするための手法です。

冒険やバトル、恋愛を盛り上げるために良く使われています。

例えば、累計260万部突破の大ヒット小説『君の膵臓をたべたい』(2015/6 刊行)では、ヒロインは主人公と出会った時、膵臓の病気のため余命1年となっていました。

ヒロインの病気のことを知る唯一のクラスメイトとなった主人公は、彼女の「死ぬ前にやりたいこと」に付き合うことになるという話です。

ヒロインが膵臓の病気で1年以内に死ぬという「危機」と「タイムリミット」の設定。

これによって彼女と過ごす何気ない日常が貴重なものとなり、輝くことになります。危機が迫ってくるからこそ、二人の仲の進展も早まると同時に盛り上がることになります。

累計発行部数2000万部以上の大ヒット作『ソードアート・オンライン』は、ゲームの世界で死ぬと、現実でも脳を焼かれて死ぬというデスゲームに囚われてしまった主人公が、現実に帰還するためにゲームクリアを目指す物語です。

この作品でも、主人公を追い詰めるために時限爆弾テクニックが使われています。

ゲーム世界で死ぬと現実でも死ぬなら、攻略に挑戦せず過ごすのが一番かしこいことになります。

それを主人公にさせないために、ヒロインのアスナが、ゲームを何年もクリアできないでいれば、お金が無い人から病院のベットの生命維持装置を外されてしまうので、やがてみんな死ぬことになる「ゲームクリアのタイムリミット」が存在することを話します。

恋人アスナと一緒に、ゲームの世界でずっと暮らしていきたいと考えていた主人公は、これで考え直し、ゲームクリアを再び固く誓います。

主人公に命がけの行動をさせるためには、命をかけるに足りる強い動機付けが必要です。

これがないと、ストーリーが強引で不自然なものになってしまうからです。

タイムリミットが来れば、恋人も含めみんな死んでしまうという危機的状況は、主人公を動かすための強い動機付けになります。
また、読者にも理解、共感してもらいやすいです。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』 (2015/8 刊行)。こちらはアニメ化された女性向けなろう系ラノベの大ヒット作です。

主人公は、乙女ゲーム世界の公爵令嬢に転生します。
彼女は王子から婚約を申し込まれますが、前世の知識から、未来では、王子に殺されるか、犯罪者として国外追放されるしかないことに気づきます。

婚約を破棄できない主人公は、破滅を回避するための対策を打たなければならなくなります。

この作品も何もしなければ、やがて婚約者に殺される。という「危機」と「タイムリミット」を設定しています。

危機が迫ってくるから、主人公は、考えうるあらゆる手段を講じなければならなくなり、それがうまくいくか、読者はワクワクしながら読むことができます。

文芸作品でも、名作と言われる乙一の短編小説「陽だまりの詩」(2002年発表)で、時限爆弾テクニックが使われています。

主人公はロボットの女性です。人類は謎の病原菌のまんえんで滅亡しており、だた一人生き残った男性に主人公は作られました。
主人公は男性から「自分も病原菌に感染していて、あと二ヶ月以内で死ぬので、自分を正しく埋葬して欲しい。そのためにキミには死を理解して欲しい」と言われます。

創造主の男性を看取るためにロボットの主人公は二ヶ月以内に「死」を理解しなくてはならない。という危機とタイムリミットが課されます。

これも『君の膵臓をたべたい』と同じで、男性が二ヶ月しか生きられないことから、男性と主人公(ヒロイン)が過ごす時間が貴重なものとなり、二人の仲が急速に進展して、クライマックスが盛り上がることになります。
これは恋愛物語の王道テンプレの1つと言えるでしょう。

「私は、あなたが好きです。それなのに、あなたの遺体を埋葬しなければならないのは、辛いです。こんなに胸が苦しくなるのなら、心なんて必要ないのに。私を作る段階で、心を組み込んだあなたを恨みます……」

引用:乙一の短編小説「陽だまりの詩」より

ロボットの女性が愛を理解し、このような感動的なセリフが出てくるのも、時限爆弾テクニックによって、彼女が追い詰めれ、タイムリミットまでに答えを出さなければならないからです。

時限爆弾テクニックは、あらゆるジャンルの物語を盛り上げることに使えますので、ぜひ活用してください。

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