オリジナリティとはテンプレの組み合わせから生まれる!
累計260万部突破の大ヒット小説『君の膵臓をたべたい』(2015/6 刊行)を例にあげて解説します。キャラ文芸、あるいは文芸に分類される作品です。
あらすじは、ヒロインが膵臓の病気で死ぬことが冒頭で示されます。
主人公は、ヒロインが秘密にしていた膵臓の病気のことを知ってしまい、そのことで、ヒロインの遊びに強引に付き合わされるという内容です。
友達がおらず他人にも興味がない受け身主人公が、人気者の女子に強引に誘われて遊ぶというのは、涼宮ハルヒ的な学園物ラノベのテンプレート。
最初から、ヒロインが主人公が大好きで、彼を褒めて全肯定するのは、なろう系ラノベヒロインのテンプレートです。
ダメな男が主人公というのは一般文芸の伝統で、森鴎外の『舞姫』の主人公は、ヒロインを妊娠させておきながら、出世のために彼女を捨てます。
このような一般文芸ダメ主人公テンプレートと、ラノベの受け身主人公テンプレートを組み合わせ、文芸っぽく見せています。
また、難病になったヒロインと恋愛するというのは2000年代に流行したケータイ小説のテンプレートです。
ケータイ小説テンプレ+学園物ラノベテンプレ+一般文芸+なろう系承認=「君の膵臓をたべたい」
オリジナリティとはテンプレの組み合わせのセンスなのです。
食べ慣れていない物を人間はマズイと感じる
オリジナリティとは「読者にとって、まったく新しい物語を提供すること」というのは誤解です。
むしろ、既存作品のどれにも似ていなかったら、その作品は失敗作だと思ってください。
読者は、まったく新しい未体験の物語を読みたいとは思いませんし、読んでもおもしろいと感じません。
昼ごはんにマクドナルドのハンバーガーと、よく知らないおばちゃんが作った創作料理のどちらが食べたいか? と問われたら、95%の人がマックを食べたいと答えると思います。
よく知らない物は、味の保証がされていない。マズいかもしれないのでコスパが悪いのです。
例えば、第2次世界大戦中に旧日本軍の捕虜になった兵士が、「木の根っこを食べさせられた! 虐待だ!」と、戦後に裁判を起こした事件があります。木の根っことは、実はゴボウのことでした。
日本人は日常的にゴボウを食べていたので、ゴボウはおいしい食べ物でしたが、外国人にとっては木の根っことしか感じられなかったのです。
まったく新しい未知の物語とは、外国人にゴボウを食べさせるようなものだと思ってください。
オリジナリティとは、既知の要素同士の新しい組み合わせによって、新味を感じさせることです。
すなわち、
オリジナリティとはテンプレの組み合わせのセンスなのです