小説の書き方講座。ゴブリンスレイヤーの分析。ラノベテンプレについて

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『ゴブリンスレイヤー』はストレスフルなダークファンタジーなのになぜヒットしているのか?

主人公にはあまりストレスがかかっていないから。無双し、美少女にモテて、仲間たちから好かれるというテンプレを守っている。

ダークファンタジーが読みたいという潜在的な読者のニーズはあるのでしょうが、主人公がひどい目に合うと嫌なので読みたくない。
ゴブリンスレイヤーは、この相反する欲求をうまく汲み取ったため、大ヒットしたと考えています。

人気のあるラノベを書くためには、ヒット作の研究が欠かせません。ここでは大ヒット作『ゴブリンスレイヤー』のヒット要因を詳しく分析します。

ストレス制御と主人公に対する共感を作るのが上手なのが特徴です。

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ストーリーを三行で紹介

ゴブリン退治専門の冒険者ゴブリンスレイヤーがあらゆる知恵を使ってゴブリンを倒す話。狂気にとりつかれた彼はソロでゴブリンを退治していたが、女神官を助けたことで、やがてエルフやドワーフなどともパーティを組み、冒険者たちを味方につけて、世話になっている牧場を襲おうとしたゴブリンロードを退治します。

ヒット要因の総論

『ゴブリンスレイヤー』はシリーズの累計発行部数は500万部を突破のアニメ化作品。第一巻は、 2016年2月に刊行。

ヒットの理由は、主人公にあまりストレスがかかっていないからだと思います。
ゴブリンを倒す目的を達して無双し、美少女にモテて、仲間たちから好かれるというテンプレを守っています。

敗北や挫折などのストレスを味わうのは、主人公以外の女神官などのサブキャラです。

主人公の仲間になったら、女神官はもうひどい目には合わず、成長をし続けます。

ストレスを周りのキャラに負ってもらって、主人公は敵を倒す最強の快感と、周りから好かれる気持ちよさを味わうのがラノベテンプレの肝です。

ラノベ読者は主人公になりきって物語を楽しみます。「主人公=読者」です。なので、主人公はあまりひどい目にあわず、快感だけを得るストレスフリーの作品が人気です。

この作品は、主人公が登場するのが遅く、最初の視点キャラの女神官がひどい目に合います。

おそらく、ゴブリンスレイヤーというタイトルから、彼女が主人公ではないことを示し、主人公が助けに来ることを予感させることで、ストレスを緩和させているのだと思います。

序盤の展開で上手なのは、主人公に絶体絶命の女神官を助ける英雄的な行動を取らせて、世界観と主人公が善人であることを示す。

次に冒険者ギルドではあまり評価されていないことから主人公に対する共感を生み、女神官や受付嬢、牛飼い娘から好かれることで、ここで発生するストレスを緩和させている点です。

読者に与える

キャラはこうこうこうだから良いのかなポイント

主人公のゴブリンスレイヤーは、子供の頃、姉をゴブリンに殺されたことで、ゴブリンを激しく憎み、半ば狂気に取り憑かれてゴブリンを一人で狩り続けています。

最弱モンスター専門の退治屋であるため、他の冒険者達から軽んじられますが、初心者冒険者をゴブリンから助けるなど、寡黙に善行を積み続ける不器用な男です。
このあたりが、読者に共感されるポイントだと思われます。

他の冒険者から軽んじられますが、実は強い。他人を助けている。彼の良さを3人の美少女たちだけは理解しており、やがていろんな人も彼の良さを知るようになっていくというストーリーラインです。

ゴブリンスレイヤーは、お金などに頓着しない無欲な性格。恩のある牧場を守るために命を投げ出そうという善人です。

展開はこうこうこうだから良いのかなポイント

・とにかくゴブリンが残虐であり、人間やエルフなどを虐殺し、陵辱しまくるダークファンタジー。最弱のモンスターが実は、弱い普通の人間や初級冒険者にとっては恐ろしい相手であり、ここにフォーカスを当てることで、おもしろさと意外性を出しています。

・ゴブリンロードが自分の罪を許して見逃してくれた女冒険者を騙しうちして殺すなど、善性を否定するようなエピソードが入っており、大人受けするハードな世界観です。

・ノリの軽い少女勇者が裏で魔神を倒してしまっているなど、本流とも言える壮大な冒険譚に主人公はあまり関与せず、ひたすらゴブリンを狩り続けます。
このあたりも他にはない意外性、差別化要因になっています

・主人公は登場する女性にすべて好かれる。ここはきっちりラノベテンプレを押さえています。

・ゴブリンを見下し、楽勝だと思って挑んだ初級冒険者が、冒頭で女神官を残して全滅します。ヘラヘラして相手を見下している冒険者がひどい目に合うのは、大ヒット作『オーバーロード』にも通じるテンプレです。
読者はこういった調子に乗っているキャラがひどい目に合うのが好きなのではないかと思われます。

設定、世界観はこうこうこうだから良いのかなポイント

・オーソドックスな指輪物語的な世界観。冒険者ギルドがあるなど、特に目新しい要素はなく、理解しやすいです。

テンプレド直球であり、テンプレを利用して意外性を出しています。

その他ここはこうこうこうだから面白いのかなポイント

ソロ専門だったゴブリンスレイヤーが最後は、大勢の仲間を得て、ゴブリンロードを倒すなど、物語の王道を行っています。王道はウケる!

また、恋愛要素も若干、絡んでいます。恋愛と言っても、ゴブリンスレイヤーは特定の女性を好きにはならず、関わった女性を助けようとします。このあたりは、時代劇から続く勧善懲悪型主人公のテンプレです。

作品に感じられる工夫(特に冒頭で、読者をつかんでいる秘訣)

初級冒険者がゴブリン相手に全滅しそうになります。
ここで最弱モンスターのゴブリンがどれだけ狡猾で、残忍であるか見せることで、意外性を演出しています。

ヒロインの女神官が殺されそうになるあわやというところで、ゴブリンスレイヤーが登場して彼女を救う王道展開を盛り込んでいておもしろいです。

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