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タイトル:冒頭固定するつもりだけど、説明口調すぎてどう置けばいいのかわからないの返信の返信 投稿者: 伊藤真琴

目的:勉強して試験を突破し延命措置代を値引いてもらう。脇役ヒロイン(主人公が憧れる系)と結婚して幸せな余生を送る。試験突破したけど別の問題が降りかかり雇主が捕まり未来が閉ざされるかもしれない→何としてでも誰でもない自分のために雇主を助けようとするも汚い手は大嫌いだった反動で無茶な行動を引き起こす→ふられそうになる→頭付きあわせて5-6人の仲間と証拠を探して助ける→独立し店を出す&ハッピーマリッジ&雇主のさらなる功績追加end

「来季までにこれに目を通さねば、手術は諦めろ」
「そんな殺生な事いわれましても……」
興宜六年現在。允という国で薬師になる方法は二つだ。
 まず上澄みは専門の学舎で励み、免状付きの薬師を目指す。或いは卒業した彼らの下につき、教材の貸与禁止を条件に一代限りの相伝の糧となるかの二択。
「汚い金を作らずという所に潔さはあることは認めている。しかし体のすり減らし方がおかしい。それでは脾臓の摘出手術などしても、お前はまた体を壊すだけだ」
 男の視線がキンと差し掛かる。
「だけどなあ、それでは!」
「仮に手術が成功し延命ができたとする。しかし自分の薬代が一生、付きまとうぞ」
「なら俺にどうしろって言うんですか」
 前者はどこへ出しても恥ずかしくなく正薬師と呼ばれ、後者は薬師にきちんと付いていれば時代柄、見逃してもらえた薬師の徒弟、略して薬徒と呼ばれた。勿論、前者と後者には違った意味で厳しい条件が付き、後者が店を構える事は一代限りとされた。
「お前、調べたら薬徒試験さえ受けていないそうだな。最初から稼いだら死ぬ気だったのか」
「いや……結婚して少しの間の余生を」
「結婚する前に未亡人を拵えてどうするんだ」
「ぐっ……」
「薬徒試験の中で一番の難関は恐らく宏疫か居東。あるいは問題の傾向を考えれば安雁でも構わん。そこで八割七分以上の実力を見せれば、こちらで人に頼んで脾腫を摘出させ、二十五歳までに何を打とうが薬代を安くしてやる」
「俺そんなに頭よくないんだけど……」
 丞灯薬房は元々、名もない片田舎が本籍である。機動上の問題を考え、街中に越してからの座職を含めた上で風諒(ジャンシェ)という青年はここにもう九年ほど務めていたが、体感上てんで腕が上がるなどは眼中になかった。確かにざっとした範囲で沢山の人を治してきたし、偽薬師と分かってても世話になりたがる者は少なくなかった。大半は、彼のような薄給ながら少しでもいい処置を受けたいと望む奴ばかり。というより世の中、そういう奴ばっか。
「しかしなあ、そういう条件はありがてえんだけど、俺の沽券は現場にあんだ」
「なれば致し方なし」
 寫宏は席を立ち、何をするまでもなく茶を沸かした。正直な話、風諒の話は一つの生き方として納得している。
「しかしなあ、一応利点はあるぞ」
 給金を上げやすい事。扱える薬が増える可能性が高い事。独立の後ろ盾の一つとして機能する事。成績次第では薬師級の扱いを受ける事がある事。そして何より、内心的に世襲制が原則の允国では下層の人間が本当の意味で手に職を持つまたとない機会の一つであること。
「追いつく前に死んだら意味ないだろうが」
 風諒は上を望む気はてんで無かった。そういった事よりも、まず弟たちに金をつなぐに越したことはなし。勉強と相性が良くないという自負の上で、稼いで晴れて藪入りする心算だった。
 要するに簡単なのはそっちで引き受けて、少しでも変だと思ったらあっちに渡せば良いわけだろうと上手く割り振る事を要とする。勉強がしたいわけではなく、そこに今いる可哀相な誰かを目の前で助けて、直接現場のために支(つか)えるのが仕事という遣り甲斐。それでいて何かを忘れたころに思い出すのが風諒(ジャンシェ)という男だった。
 で、いつか受ける筈の非公認の薬徒試験なるものがあるが、のらりくらりと躱し、周りに受けたと思われ続けた結果、実は本当にただの手代としてずっと収まっていることに有りもしない寫宏からの圧を勝手に感じるようになってしまった。いや、受けなくても一代の庇護さえあれば問題ないのだが、体面上はどう考えても最悪だった。
「やるのか、止めるか?」
「やります!」
 風諒の背中の後ろからにゅっと出て来た。
「怜果には言ってねえ! ん……?お前、座学は得意な方か?」
「あの鞄の中に入っている生物の資料集のように綿密であれば、人並みにはできます」
「人並みってのが怪しいんだよなあ。他の人に頼もーか」
「反対だ」
 寫宏はそう切り捨てた。
「頭の良し悪しはともかく、好きといえど勉強で論理だっていようとまとめ方は壊滅的だ。自分が読めればそれで良しの奴に任せていいのか?」
 ごもっとも。とジャンシェは思っていた。しかし、上手く怜果を焚きつけて俺の成績が上がればこのおっさん悔しがるんじゃね?
「ん?折角立候補したのならやるか。勉強の仕方から箸の持ち方から佇まいまでグチグチうるせえ爺の鼻を明かしてやろうぜ、二人でな!」
「はーい。出来る限り協力しまーす。あとで氷菓おごってね」
 神経図太い外国人の居候だが、単語だけは達者である。流石に一週間ただ働きは両親が痛んだが何か弱みを握られている事はわかっている。
「ちゃんと教えたらやろう」
 わーいと棒読みする怜果は口元が下がり切っている割に声が高く、年甲斐もなく子供っぽいことばかり言う。かわいい子ぶっているというより本当にずれている感じだ。だから知らない部分を試すだけならば悪くないと思った。
「なら二人で、明日私が用意した「攻学薬学科」入学試験をこちらで編纂したものを解いてみろ。そして来週、同じ問題を出す。その伸びしろを測ってから考えてやってもいい」
 もしかしたら、婚儀まで秒読みの芬飴に振られるかもしれない。誰かと対等に話ができないかもしれない。兄貴分を背負っていたことを、とうとう言えず仕舞いのままはや数年。
 それでも、風諒がそうしていた理由はただの面倒だけではなかった。しかし、言おうとすれば口ごとに肺と沽券が割れて萎む。
 さらなる苦労を背負う事に成るのか、試すのも悪くない、と思った。
「あと俺の前でその言い方やめろ」
「自分なりの方便です。勉強の時と仕事の時はいつも止めています」
「違う!」
「知ってます。今は寄り添えません」
「た……頼りにしてるぜ」
 肩を叩けば少し嬉しがっているが何なんだこいつ。だから知識系には強いのかなと一瞬でも期待しようかと迷った。
 脳裏に浮かぶのは、大まかな仕事の枠を知っていても何をしているのか分からない弟妹、故障で働けなくなった兄、頼りなくもない母。
 何としてでも、一つぐらいは楽になってくれればいい。
「あ、あと丸薬留の木枠が折れてたのと卵が滅茶苦茶なんだけど、それ」
「へし折られた修理品に出すのと捨てるのを集めてんだろ? 拭いといた」
「寫宏さんが木枠に卵を流してるから触らないでって言ってて……」
「お前じゃなかったのかよ!」

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