こんにちは、ドラコンです。
迷える狼さんのせっかくのご構想に、ケチを付けて申し訳ないのですが、「異世界転生スローライフ」とのコンセプトに、主人公の能力が合っていないように感じました。
内政・生活系の異世界転生・移転モノは、異世界の資源・技術で、異世界の生活レベルを、現代日本の生活レベルに近付けることが、醍醐味の一つではないでしょうか。
異世界転生での主人公の最大の強みは、「現実世界での知識・経験」です。
ですので、現実世界の物を取り出せる能力よりも、例えば現実世界で読んだ本の内容を一言一句正確に書き出せる能力のほうが向いているのではないでしょうか。
そして、見向きもされなかった・忘れ去られた・手に入りづらい資源を手に入れたり、異世界に元からある技術を進化させたりすることに面白みがあるのではないでしょうか。時には、代替品で妥協することもあるでしょう。
食文化のスレッドで取り上げた『現実主義勇者の王国再建記』1巻の「ゼルリンうどん」は、「食感葛切り」ですからね。
いくら制約があるとはいえ、「異世界に存在しない」現実世界の作物や器具を魔法でポンポン取り出されるのは、面白いのでしょうか。
『映画ドラえもん』でも、最近の作品は、ひみつ道具をなくした、壊れた、そもそも持っていないと、ひみつ道具の使用に何かしろの制限を掛けることが多くなっています。
ひみつ道具使い放題なら、事件はすぐに解決していますよ。
私が読んだ限りで、迷える狼さんのご構想に近い作品を挙げておきます。
『フシノカミ 辺境から始まる文明再生記』(オーバーラップノベルズ、雨川水海)
主人公は、現代日本から中世ヨーロッパ風異世界に転生。転生先は、かつては現代日本並みの高度な文明が存在したが、主人公転生時には衰退して、中世ヨーロッパ並みの文明レベルに退化。主人公の現代日本の知識・経験、異世界側の高度な文明があったころを記した古文献解読で、文明を再生する話。
主人公の能力は、転生前の知識と異世界の文明を再生するとの強い思いを除けば、他の異世界人と変わらないレベル。主人公は、2巻でモンスターに襲われて「人類に不利なところばっかりファンタジーしやがって!」と叫んでいた。
2巻では、毒があるとして観賞用になっていたトマトの食用復活(古代では食用にされていたと古文献にあり)と、禁忌になっていた人糞肥料の復活に成功。2巻ではトマト料理が多数登場。ピザを作りたかったが、調理器具の制約上、「ピザ風パン」で妥協。
『家つくりスキルで異世界を生き延びろ』(ファミ通文庫の単行本、小鳥屋エム)
派手なモンスター退治よりも、薬草の収集、自作アイテムの売却といった冒険者の、ほのぼの日常を描いた一作。
現代日本からの転生者「二ホン族」がウロウロしている異世界が舞台。しかも、二ホン族はかなりの影響力があり、二ホン族が一言言えば、役所や貴族にも少々の無理が通る。
主人公は、ブラック企業の元OL。異世界の少女に転生したが、「家つくり」というわけのわからぬスキルが付与されたため(OL時代にマンションを買おうと必死に貯金していたのと、テレビでトレーラーハウスを見て憧れていたためか?)、転生後の親にも「ハズレスキル持ち」とバカにされたため、一人で旅立った。
転生前から、もともと細かい作業が好きだったことで、専用スキルなしでも魔術を発動する「紋様紙」が描ける。しかも、下手な専用スキル持ちよりも良質。