>「いちいち誰が言ったか説明しなくても、読者はそれくらい理解する。」
なるほど(笑
まあ、至言ではありますけどね。
私の父親が子供の頃に住んでいた実家に、狸の形をした急須があったそうなんですね。
で、あるとき外から帰って、「何か飲むもの無い?」と聞いたら、
「狸が出てるよ」
これで分かったから言葉ってすごいと言って、父は笑っていました。狸の急須にちょうどお茶を入れたところで、いい具合に出ている頃合いだよと。
そういうことです。(出ているで通じるのも、けっこうすごいです)
もう一つ、あまり良い例えではないですが、例の「オレオレ詐欺」。
あれは「主語を省略しても通じる」ではなく、主語を省略することによって「いきなりこんな馴れ馴れしく声をかけて来るのは誰だろう?」と無意識に相手を探してしまう心理を悪用しているんです。あの手口をリアルで使う輩が現れず、誰かが小説にでも書いたのだったら「そんなことで騙されるやつがいるかよ」と思った人は多いと思います。しかし、実際には多くの被害者が出て社会問題になりました。
言語はもちろん論理的なものなのですが、論理だけでは捉えきれない性格も持っています。「空気を読む」「以心伝心」。それで通じてしまいます。
「いちいち誰が言ったか説明しなくても、読者はそれくらい理解する。」
そう言われたら、「そんなに簡単に言うなよ」と言い返したくもなりますが、小説って文章で勝負するわけですから、言葉のそういうコミュニケーション特性にも目は向けた方が良いとは思います。