小説の創作相談掲示板:小説の書き方Q&A。執筆の悩み相談をしよう!

返信する!以下は元記事

タイトル:許される見殺しと許されない見殺しの違いの返信 投稿者: 手塚満

結論から申せば、異世界ほったらかして元の世界に帰る、なんて当たり前すぎて面白くないからです。以下、少し説明してみます。

1.現実問題として帰りたいのは自然なこと

そもそも論として、この世界に生きている人間が突然異世界に飛ばされました、として喜んでその世界に残りたがるかという問題があります。飛ばされた先が中世欧風だとしておきましょう。現代的なアイテムはありません。スマホない、PCない、ネットない、ゲームない、コミックない、アニメない、ラノベない、カラオケない、あるわけない、なぜなら電気すらない。普段使ったり遊んだりしていたものが一切ない。

何か魔法が使えたりはするかもしれない。しかしそれで元の日常生活とバーターになりはしないでしょう。友達だって元の世界と切り離されて、いちから作り直し。さらに治安悪い、ヤバいモンスターうようよ、変な病気ある、不衛生、トイレ汚い等々。

2.帰るつもりなら行った先のことは気にしなくて当たり前

異世界に飛ばされたら帰りたくて当たり前。御作では実際、元の世界に帰りたい主人公なわけですよね。元の世界に帰るんだから、飛ばされた先の異世界がどうなるかなんて関係ない。例えば現実で考えると、戦乱の外国に突然連れて来られたとして、戦乱を収めてから帰りたくなるわけないです。その場にいても対岸の火事、まずは難を避けたいとしか思わないはずです。

3.当たり前のことをそのまま提示しても感動するわけない

繰り返しですが、異世界に飛ばされたら帰りたくて当たり前、異世界の問題なんて元の世界に帰ってから思い出すかもしれない程度です。異世界に飛ばされて変えるだけの主人公は物凄く自然です。だから受けないんです。当たり前のこと書かれても、当たり前だとしか思わない。分かり切ったことで感動するわけない。

物語を読むのは、やっぱり奇跡が見たいからなんです。奇跡って普通は見かけないものです。見たこともないものを見たいからフィクションの存在意義があります。現実では起きないこと、起きそうもないことを、いかにも起こり得るように見せられるのがフィクションなわけですから。

4.読者は問題の核心は教えてくれない

異世界転移・転生ならば、普通は帰りたくて当たり前のところを、なぜか異世界で踏ん張り、その世界を救いさえする主人公のドラマを見たいのは当然です。異世界ほったらかして、サクっと元の世界に帰る主人公では肩透かしです。しかし読者は不満の核心を正確には教えてくれません。自分(読者)の期待したものとの差を言ったりします。それが「薄情」と表現されることもあるでしょう。

しかし、十中八九、原因は奇跡を見せてもらえなかったからです。異世界転移・転生作品が数多と出て、異世界で踏ん張る主人公が当たり前になっちゃいまして、そのほうが「当たり前」な感じがするのは分かります。が、依然として現実には起こりそうもないことがフィクションでは起きているわけです。

5.異世界から帰れない理由を作る必要性

何も悩まず異世界になじむ主人公は多くなったものの、以前ですと帰還の望みを断つ設定やドラマが入れてあるのが通例でした。元の世界では既に死んでいる、帰還方法が不明(それが作品テーマのことも)、ゲーム世界ならログアウトできない。異世界に引き付ける方法としては、元の世界では無能だが異世界では無敵のスキルが付与された、異世界のヒロインに一目ぼれ、異世界が入れ込んだゲームの延長みたいになってる等々があります。

そういう作品の作者は現実の常識を弁えていたわけです。突然変なところに放り込まれたら、まず抜け出して自分の家に帰りたくなるもんだ、ということですね。しかし、繰り返しですが、それでは当たり前で、主人公に目を引き付けることができない。異世界なんて設定したのは、主人公に四苦八苦して奇跡を達成してもらうため。ですので、「帰れない」「帰りたくない」理由をきちんと作ったわけです。そうすれば主人公が逃げずに奇跡を達成させることができる。

6.元の世界に帰還するなら、それが最大の奇跡であるべき

そうした「異世界転移・転生物語が成り立つ理由や工夫」を度外視して、異世界で頑張る主人公の逆張りをしても受けません。仮に元の世界に帰る大事な理由を設定しても、おそらくは無効でしょう。そんなものなくても帰りたいんですから。元の世界に帰るストーリーが成り立つとしたら、異世界が真剣に好きになったのに、どうしても元の世界に帰らねばならない主人公の苦悩を描いた(※)、とかでしょう。

※ 「異世界のアイテムを持ち帰れば、元の世界で死ぬ運命の妹を救える」、「異世界に主人公が居座ると異世界が滅ぶ」、「異世界ヒロインの悪事の濡れ衣をあえて着て、元の世界へ逃亡」等々。

異世界から元の世界へ帰るなら、その帰還が奇跡となるような物語を描く必要があります。何度も繰り返しますが、よく考えたら当たり前、を物語にして読者に差し出すべきではありません。

コメントは4500文字以内。

「私はロボットではありません」にチェックを入れてください。

トップページへ 「許される見殺しと許されない見殺しの違い」のスレッドへ

小説の書き方Q&A:創作相談掲示板の使い方・利用規約(必ずお読みください)。お問い合わせ