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タイトル:作中で演劇が話題になる場合の、その演劇のあらすじの扱いは?の返信 投稿者: ドラコン

 質問追記です。

 この話を、『寿国演義 銀鈴、獄中で幽霊と邂逅す』との仮題で執筆を始めて感じたことです。

 この≪新人女官伝≫のあらすじです。初出時には後掲のように軽く触れる程度にして、銀鈴と幽霊皇后が出会う場面で、本格的にあらすじを、地の文で書くようにしたほうが良いのでしょうか? 特に、≪新人女官伝≫が、銀鈴に取り付く幽霊皇后を獄死させた、側室(玉雉)の後日譚の部分は、銀鈴と幽霊皇后が出会う場面まで、引っ張ったほうが良いのでしょうか?
 
 冒頭で、設定を長々書くのは「悪手」と聞いていますので。
 
 ご意見をいただければ、幸いです。

 ・初出時の記述案
 「≪新人女官伝≫とは、銀鈴が初めて主演を務めた後宮劇団の演目。主人公の≪新人女官≫が、主人である側室(悪妃)不興を買って投獄され、虐待され続ける。悪妃とその夫たる悪帝の死後、後を継いだ新帝に見初められ、皇后となる、との物語」

 なお、牢獄で銀鈴と侍女2人が≪新人女官伝≫を話題にしている場面は、元の投稿より書き進めましたので、書いておきます。

 今のところ、銀鈴と幽霊皇后が出会う前で、≪新人女官伝≫が重要キーワードなるのは、以下の場面だけです。この場面は、「初出時の記述案」だけで、理解してもらえるのでしょうか?

●牢獄の一場面
「「銀后さま、申し訳ありませんでした。私たちが誘ったばっかりに」
 ≪侍女A≫と≪侍女B≫は、銀鈴の前で正座し、深々と頭を下げた。
 「何よ、改まって? いいの、いいの。面白くて、やったのはわたしだし。それに、わたしのほうこそ、ごめんなさい。わたしが一緒でなければ、怒られるぐらいで済んだのに」
 そう言って、銀鈴は≪侍女A≫と≪侍女B≫に向かって頭を下げた。
「それに、皇后扱いしないでよ。予審でも『吟味と処罰では皇后扱いしない』と言われたし、そもそも皇后の自覚ないし」
 銀鈴は、胸元に視線を落とした。
「今のわたしは二人と同じ、裁きを受ける罪人なんだし」
 胸には「囚人 張銀鈴」と書かれた名札が縫い付けてあった。 
 そして、銀鈴は立ち上がって、両腕を広げた。
「私の囚衣だけ、何でこんなにボロボロなのよ。二人のは新品よね? このくたびれ具合、つぎはぎ具合には見覚えがあるわよ。〘新人女官伝〗で、私が着ていた舞台衣装じゃない。変なところでケチケチせずに、新品を用意しなさいよ」
 囚衣は季節柄、麻。薄灰色で、膝丈の筒袖上衣に、同色の桍(ズボン)。背中には「囚」の一字が書かれている。上衣は帯はなく、衿と身頃に縫い付けられた紐で、前を止める。背中の「囚」の字と、胸の名札を除けば、色も形も、武術着、野良着、寝衣によく使われるものだ。
「まあまあ、銀鈴。似合ってるわよ」
「≪新人女官伝≫での銀鈴は、ほんとに囚人役が似合ってたわよ」
「何よ、≪侍女A≫も、≪侍女B≫も。そんなに、わたしがそんなに、悪人に見える? 皇后をバカにすると、後が怖いわよ? じん、いや陛下に言い付けてやるんだから」
「さっき、『皇后扱いしないでよ』『皇后の自覚ないし』って、言ってなかった? 都合の良いときだけ、自覚あるの?」
 ≪侍女A≫がたしなめた。
「銀鈴の≪新人女官役≫は、名演だったわよ。ほんとに、かわいそうで」
「月刊『舞台』で大評判だったわよ」
「そうそう。『百年に一度の大型新人!』とべた褒めだったわよ。普段は結構辛口な、あの評論家が」
「そうなの」
 銀鈴は、まんざらでもない笑みを浮かべた。
「それって、ほめてるの? けなしてるの? 稽古でも本番でも、さんざん虐めてくれた、二人に言われても、妙な気分よね。あれ、演技だったの? 本気でやってなかった? 少しでも手を止めると、思いっきり笞で打つし、『暑い』とこぼしたら、『涼しくしてあげる』と言って、庭掃除で使う桶の水をぶっかけてくるし。その上、桶の水がなくなったから、くみに行こうとすると、『使う水は、一杯だけ。それが規則!』とくみに行かせてくれなかったし。しかも、水なしで、たわしで石畳を磨いてもきれいにならないのに、『きれいになってない!』と笞打ちされるし」
「そういう台本だったから」
「台本、って? 二人とも、かなり悪ノリしてたでしょ? 台本も後から、結構過激になったし。桶の水をぶっかけられるのは、≪侍女A≫が出した案だじゃない」
「『書き上がった台本でも、新しい案があればどんどん出しなさい』って、皇太后さまがおっしゃっているしね」
「それに銀鈴。その後、悪妃にまたがって、思いっきり『お馬さんごっこ』してたでしょう。四つん這いの悪妃を鞭で打つのは当然として、生のままの人参を食べさせたり、『きれいにしてあげる』と、池の中に連れ込んで、たわしでこすったりと。他にもいろいろやったわね。あれは、見ていていてスッキリしたわよ」
「しかも、悪妃役は皇太后さまでしょう。いくら、いつも『舞台の上では、外の身分は忘れなさい』っておっしゃっていても、あそこまではできないわよ。とてもじゃないけど、畏れ多くて」
「まあ、虐められて、うっぷんがたまっていたのは、事実だけどね。皇太后さまも『遠慮せずにやりなさい』って言ってたし」

「夕餉だぞ」
 木の格子越しに、秋水が声を掛けた。
「えっ、もうそんな時間? ありがとう」
 銀鈴は、そう言って格子に開けられた差し入れ用の小窓から、盆を受け取った。
「牢屋の中なのに、普段とそう変わらない献立じゃない」
 盆には、夕餉の主菜、棒棒鶏(バンバンジー)が大皿で盛られていた。
「何を想像してたんだ?」
 秋水は、そう言いながら、副菜と瓜の味噌漬けの盆、茄子の羹(スープ)入りの小鍋、白飯入りのおひつ、取り皿や箸などの食器、保温呪符が刻まれた湯入り竹筒、緑茶葉入り茶筒を監房内に差し入れた。
「だって、牢屋のごはんって、朝・夕の二度で、薄いお粥と漬物がひと口じゃなかったっけ? しかも、お粥は冷めきっていて、とても食べられたものじゃないの」
「それは、≪新人女官伝≫の語り(ナレーション)だろ? 芝居と現実をごちゃ混ぜにしてないか?」
 秋水があきれ顔で言った。
「朝餉に、薄いお粥をひと椀、漬物ひと口食べただけで、昼餉は抜いて、囚人役の自主稽古してたわよね。私たちが、いくら『食べなさい!』って言っても、聞かなかったし」
「ほんとね。あの食いしん坊な銀鈴が、自分から食事を抜くなんて、信じられなかったわよ。炎天下で、庭掃除の場面の稽古をして、暑気あたりで倒れかけたわよね。凝り性というか、変なところで真面目なのよね」
 ≪侍女A≫と≪侍女B≫が顔を見合わせた。
「じゃ、ごゆっくり」
 そう言って、秋水は去っていった。
 銀鈴たちは、夕餉を円卓に並べた。
「いただきます。って、二人ともそれだけでいいの? 食べられるときに食べておかないと体がもたないわよ? 囚人は体力勝負! 何かの拍子に『ごはん抜き!』のお仕置きを受けるかもしれないわよ?」
 銀鈴は、≪侍女A≫と≪侍女B≫の茶碗と汁椀を見て、そう言った。≪侍女A≫と≪侍女B≫の茶碗と汁椀には、ほんのひと口分の白飯と羹が盛られているだけだった。
「……それはそうだけどね。あまり食欲がなくて。それに、≪新人女官伝≫に『食事抜き』の罰の場面は、あったかしら?」
「……同じく。私も食欲がなくて。銀鈴、よく食べられるわね。無邪気というか、のんきというか。裁きが心配じゃないの? 賭博だけならまだしも、蟲毒や呪詛の疑いまでかかっているわよ。下手すると、大逆罪で死罪よ。それに、何で銀鈴は、牢屋暮らしが長そうな口ぶりなのよ? ≪新人女官伝≫には確か、永巷の場面はほとんどなかったはずよ」
「そうよね。いくら銀鈴が、≪新人女官伝≫で囚人役をやったといっても、場面は板首枷をつけての晒し、公開での百叩き、悪妃宮での庭掃除の労役だからね。永巷での処遇は、せいぜい語り(ナレーション)で語られるぐらいだしね。案外、牢屋に入っていないのよね。まあ、かなり熱心に役作りをしてたけどね。台本はもちろん、牢屋や拷問の場面のある小説もかなり読み込んでいたわよね」
「大丈夫じゃないの? いくらなんでも、死罪はないんじゃない? しばらくの牢屋暮らしや百叩きぐらいはあるかもしれないけど。だいだいお芝居の裁判監修は、越先生と芳雲師姉よ。重罪人扱いなら、こんな良い待遇はないわよ。≪新人女官≫の牢屋での扱いは、現実の重罪人か、それよりももっと酷かったんじゃない? ほんとに死罪もあり得るなら、今ごろわたしたちは鉄の首輪、手枷、足枷をつけられているわよ。それに、こんな料理は食べられないわよ」
 銀鈴は、そう言いながら、濃厚な味噌味の棒棒鶏をほおばっている。
 ≪新人女官伝≫での≪新人女官≫は、監房外での労役中はもとより、監房内でも常に鉄の首輪、手枷、足枷をつけられていた。
「それに、予審での芳雲師姉のあの態度は、わざとよ。裁判場面の演技指導で、越先生も、芳雲師姉も、『実際にはこんなことはしない。けど舞台は、舞台映えを優先すれば良い』が、口ぐせでしょう。あれは絶対、遊んでるわよ。あの二人も、『たまには舞台のような取り調べをやってみたい』って言っていたし」
「それもそうね」
「やっぱり経験者は違うわね」
 ≪侍女A≫と≪侍女B≫は、そう言って、自分たちの茶碗と汁椀に、白飯と羹を注ぎ足した。」

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