『聲の形』見ました。
あれで言えば、終盤近くの「橋の上」のシーンが一つの修羅場だったのだと思います。そこで重要なのは、あのシーンに至る主人公の心理の微妙な移り変わりが丁寧に描かれていたこと。あの時点で視聴者は主人公の心根の誠実さを疑っていません。そういう下地があってはじめて活きてくるシーンなのではないでしょうか?
提示された御作のワンシーンではそういう前提となるパートが示されていないため、これだけでは何とも言えません。例えば先に華とアイルの良好な関係を読者に印象づけておけば、突然の豹変がショックを与えて効果的だった可能性があります。
また、単に会話のテンポの確認だけということにしても。
そもそも発言者名・セリフというト書きのような書き方になっているので小説の1パートとしては評価しにくいですが、仮にこのままだとします。
その場合、
>アイル「っ!!……ぷっ。ふふふっ。あははははははっ!!」
>華「あんた……。何様なのッ!?泥棒猫の分際で私を笑わないでよ!!」
>アイル「いやぁ、こんなに笑ったのは久しぶりだなぁ。もしかしたら生まれて初めてかもしれない……、くふふっ!!
>やぁ、ハッキリ言ってね、レイヤ君はあなたに付きまとわれて迷惑しているって、さっき彼から聞いちゃったんですよね。
>これどう思いますか?ふ、……ふふっ!!」
ここは、かなり気になりました。
会話の流れとして守勢にまわっていたアイルが反撃に転じるところですが、あまりに唐突すぎます。これでは突然の豹変ではなく、呆気なさすぎるのです。引用1行目の「っ!!」の部分。ここをセリフ内ではなく、地の文で補ってほしいところです。
一方でここはアイルの態度の急変も読者に印象づけなくてはいけないところなので、あまりもたついてもダメ。センスの問われる急所だと思います。
そういうことを含め、会話パートはセリフと地の文を1セットでとらえ、適切なメリハリをつけながら表現する感覚が必要だと思います。