小説の創作相談掲示板:小説の書き方Q&A。執筆の悩み相談をしよう!

返信する!以下は元記事

タイトル:ライトノベルでのターゲット層についての返信の返信 投稿者: 手塚満

(No: 17~18/最後の5以外は、にわとりさんへの返信です。)

誰も、もちろん私も20代~30代向けに足る力量が現ワナビ~作家にないからラノベ書いてるなんて思ってもなくて、スレ主さんがラノベで文学っぽいものを書くべきと主張なさっているとも思わない。もし強烈なズレをお感じなのであれば、その辺りを誤解なさっているからじゃないかな。

1.10代をターゲットって、実際は何をするのか

作品として書かれたターゲット年齢はどこに置くか、以外にはないわけですよ。それは、仰るような「わかりやすい文章で書く」だけのものではない。作品全文通して、10代に分からないところがないことが必要なんです。

では、それなら20代以上には飽き足らないものになってしまうか。おそらく、そうなっている作品はあるかもしれないけれど、大きく受けることはないんですよね。それが「子供だまし」にも通じてくる。子供だましでは大人はもちろん、子どもだって見抜いてしまう。子どもでも幼児くらいがキャッキャ言うかもしれないけど、まだ文字が読めませんよね。

読み取る深さってことが生じるんだけど、映像作品の類例から、10代も素直に面白がり(全編全シーンに分からないところがない)、高い年齢の世代には昔のネタも見て取れて面白がった作品を例に挙げてみます。つい先日放映終了した「SSSS.GRIDMAN」です。

これは実写版の「電光超人グリッドマン」(1993~1994年)を引き継いだような設定でアニメ化されたものですね。しかし、「電光超人グリッドマン」を知らなくとも、分からない、分かりにくいシーンは1カットたりともなかった。何ら前提知識抜きで見て、「これはなんだ?」みたいなことが起こらないように作ってある。

しかし、約25年前の「電光超人グリッドマン」を観ていた世代(10歳時で観ていたなら、今は35歳)には、「電光超人グリッドマン」ネタがあちこちに盛り込まれていることが分かるわけです。オタクネタで嬉しい、というだけではありません。「電光超人グリッドマン」視聴当時の快感もよみがえるわけです(ジャンルのメリットに通じるものがある)。

それだけではない。「ウルトラセブン」(1967~1968年)のオマージュもあり(最終回の1シーンの酷似など)、セブンファンを大いに喜ばせたようです。約50年前です。10歳時でセブン観ていたなら、もう60歳となっているわけです。セブンは再放送もあったけれど、本当にセブンで興奮して喜んだのは初回放映の視聴組でしょう。再放送では、最新の特撮技術についていけない、シーンの作りがありていに言えば雑ということもあります(とにもかくにも特撮映像を見せることが必須だったなどの事情がある)。

こういうことなんです。10代がターゲットというのは、10代が見て/読んで分からないところがないように作るわけです。その上でもっと上の世代も楽しめる要素は入っている。上の世代も面白がるものを、10代にも分かるように作る、と言い換えてもいい。これをキャラクターの深み、事情の複雑さの見える度合いで(最初は偶然に)実現したのが、例えば先に挙げた人形劇「新八犬伝」であったりする(そして次作で小学生に分からない表現を入れたら、もっと上の世代も見放した)。

仮面ライダーも同じようなことが起こってますね。今だと仮面ライダージオウで、平成20作目記念として平成仮面ライダー全部が関わる作品です。だけど、以前の平成ライダーシリーズ観てなくても、知らなくても楽しめるようにきちんと作ってある。これは10年前の同様の企画、仮面ライダーディケイドでも事情は同じです(平成10作目記念で平成過去ライダーを取り入れたもの)。

いずれも、10代、いや小学生でも分かるように作ってある。ライダーを勢ぞろいさせて分かるように作れるのは、実は各平成ライダーも小学生でも分かるように作ってあるからですね。だけど、中高生はもとより、20代以上なら20代以上ならより深く分かるような作りもあるわけです。だからこそ、昭和ライダー以来のファンも見続けて、感想も盛んに言ったりしているわけです。

ラノベの10代ターゲットというのは、自分はそういう意味で言っています。返信先の論に応じて言い方は変えますので(きちんとピンポイントで応える必要などによる)、他の視点から考えると分かりにくいことも生じると思いますが、にわとりさんの代ターゲット年齢論にお答えするなら、以上のようになります。

2.作者側の事情

しかし、それだけではないですね。需要があれば供給がある。ラノベって、若手作者の登竜門の1つになっているのは、周知の事実です。高校生にしてミリオン作家なんていたりしまして、作者として10代から狙える、希望が持てるわけです。

仮に20歳で作家デビューするとします。その作家は30代の登場キャラを上手く描写できるか。一応はよく観察もするでしょうから、30代キャラを破綻なく描くことは可能でしょう。だけど、リアリティはどうか30代読者が自分のように思えるキャラの言動、行動にできるか。なかなか難しいと思います。未経験ですから。

これは「魔法なんて使えないけど、魔法使いは描けるよ」というのとは異なる問題です。能力ではなく性格、思考、気持ちですから。全部、年齢とともに作っていくものであり、能力、状況に関わらず言動・行動を生み出す人格のベースであり、年齢なりになってないとリアリティを損なうものになります。

若い作者は若いキャラクターを主要登場人物に選んだほうが、リアリティを出せるし、キャラも自然に描けるわけです。中高生主人公にすれば、読者も主人公の年齢(か、それ以上)であれば分かりやすくなります。視点が自分くらいの年齢相応になっているわけですから。

そして当たり前ですが、作者は歳を取っていくわけですよね。デビュー時に読み始めてくれた読者と一緒に。いったん商業デビューしたからには長く書きたいわけですし、ワナビ時代から「できれば一生の仕事にできたらいいなあ」と思っている人は多数いる。先細り戦略は嫌じゃないですか。今ついてきてくれる、歳とって来た自分相応の読者も大事にするし、新規の読者だって得たい。それが長く続けられることに通じるわけです。

しかしながら、そうも言っていられなくなる作者もいます。いつまでも10代にも面白がるように作っていては、自分の力量が発揮できない。個人的な感覚ですが、大御所漫画家では石(ノ)森章太郎さんがいます。少年誌でずっと活躍してきて、固定ファンも多かった。例えば近年でもアニメ化があったサイボーグ009。「天使編」で中断し(続編「神々との戦い編」も中途半端に中断)、長らくしてまた009を執筆した(連載としては「マンガ少年」の「海底ピラミッド編」)。

ところが以前のようには面白がられなかったようです。少年誌に何を描いても以前のような人気作とならない。石ノ森章太郎さんはスランプとか、もう終わったんじゃないかと思う人(以前の作品のファン含む)までいたようです。ところが、青年誌に「ホテル」を描き始めたら面白いと言われるようになった。

もう少年誌に納まりきらなくなっていたわけですね(少年誌の対象年齢下限に分かる作りに縛られていては、描きたいことが描けなくなっていた)。そういう場合は、20代以降のメディアに進出・移行すればいいんです。

ですから、私も(おそらく誰も)10代に分からずとも20代以降が面白がる作品を、ラノベでやっちゃいけないなんて思ってない。10代向けというのはルールではない。作者側からすると、10代向けのジャンルがあることが、作家になれる糸口の1つになってくれているということです。10代(ないしは小学生)から面白がれて、上の年齢層にも楽しまれるように作れるんなら、それに越したことはないけれど、20代以降にしか通じない作品を作りたくて、実際作れるなら、やればいいだけの話です。

3.媒体の問題

「ケータイ小説やボカロ小説のムーブメント」と仰るわけだけれども、まずケータイ小説。ガラケーに特化した読みやすさですよね。ガラケーがどうなったかはご承知の通りです。ムーブメントにしようにも、スマホに移行してしまった。ガラケーとスマホでは何がどう読みやすいかが違う。

ボーカロイドももう流行ってはないでしょう。相変わらず、便利なツールとして使われてはいるけれど、ボーカロイドだから面白いという人は激減してます。

盛り上げようと思ったとしても、媒体が廃れていってしまった。見逃すも何もないんじゃないでしょうか。

4.レーベルの問題

「10代のオタクを狙い撃ちにした、10代の世代感覚に響くようなラノベ」が「ラノベレーベルからはデビューできなくて」というのは不可思議な論理であるように思います。むしろ、ラノベがラノベ系レーベルにもう留まってない傾向は見え始めるってことじゃないしょうか。

ラノベ以外だったの出版社、レーベルもラノベ的な作風を出し始めてるんじゃないかということです。仰るように出版不況であるわけですね。であれば、売れそうなものを出したい。売れそうなものの中にはラノベ的なものがあった、ということになります。

「キミスイ」以外では、作品の面白さ以外でもちょっと話題になった「JKハルは異世界で娼婦になった」(平鳥コウ著、早川書房)があります(プロ作家による「異世界にシャワー」批判)。これもラノベ的です。

どちらも、個人的には女性向けを意識している作風だと思います。その点で、女性向けラノベレーベルがまだ男性向けほどの売り上げがないようですから、ラノベレーベルからはみ出してしまい、一般文芸で拾われたのかもしれません。ですが、ラノベ的な作風をよしとしなければ、出版はされないでしょう(「JKハル」は「なんでハヤカワ?」の声もちらほらあり、ハヤカワの担当がハヤカワはこういうものもありと返したりしていた)。

ターゲット年齢層を含むラノベの作風が先細りということではない証左になるように思います。出版不況という文章作品全般の話とは切り分けて考えるべきです。

コメントは4500文字以内。

「私はロボットではありません」にチェックを入れてください。

トップページへ 「ライトノベルでのターゲット層について」のスレッドへ

小説の書き方Q&A:創作相談掲示板の使い方・利用規約(必ずお読みください)。お問い合わせ