別にそんなことはないと思いますよ。心に怒りを持ち続けていられれば大丈夫。
これは持論なんですが、人間が持ちうる感情って全部怒りから発しているんですよ。喜怒哀楽っていいますけど、人は怒りが解消されるから喜んで、怒るために哀しんで、怒りがない状態を楽しいと感じるんです。人間には怒りしかないんです。あとは全部きれいごとでしかない。
だからまあ、とりあえず怒ってみればいいと思います。人との交流がなくても、例えばニュースサイトをみて、記事の見出しに対してどれだけ怒りを覚えられるか。どれだけ怒って見せることができるか。それを試してみましょう。
いまヤフーニュースのトップを見ると、『安倍政権、2島決着案を検討 北方4島返還「非現実的」』という記事が出てきますね。どんな立場の人がこの記事に一番腹を立てるでしょう。やっぱ北方四島を日本の領土に取り戻すためにいろいろ取り組んできた人たちですよね。は? 何を言っているんだ。国家元首が非現実的って言う意味がわかっているのか? 私たちの今までの努力はどうなる? 北方四島は、日本の、私たちの、地元住民のものだ。軽々しく政治の道具にするんじゃねえよ。何が二島決着だ。私を、私たちを見ろ。故郷を追われたかつての住民たちの涙を見ろ。それでもお前は北方四島を政治の道具にするのか? まるでケーキでも切り分けるように、半分に分断するのか? そこに良心はないのか。お前は権力に魂を売ってしまったのか。そうなんだろうな。分かっていたよ。弁明できるものならしてみろ。我が国の領土すら守れない腰抜けが。アベ政治を許さない。お前たちは常に弱い者を見捨てる。アベ政治を許さない。お前たちは辺境の住民を見放す。アベ政治を許さない。お前たちは自国の民すら守れない。安倍晋三、お前を呪おう。この命尽きるまで。お前たちの栄華が果てるまで。北方四島が晴れて日本の自治のもとに戻るまで。呪ってやる。全身全霊をかけて、私の血の最後の一滴まで使い尽くして、お前を呪おう。択捉、国後は日本の領土だ、私たちの土地だ。それを否定する奴らは許さない。まして外交の道具にしようとする奴らは許さない。末代まで呪おう。全部燃やしつくそう。殺しつくそう。滅ぼそう。終わらせよう。すり潰そう。私たちの土地は私たちの土地だ、決してロシアの土地ではない、それを否定するならたとえ政権でも許さない。死ね。
みたいな気持ちになるんじゃないかなと思います。知らんけど。で、こんな激しい感情を向けられた政権の支持者もまた強い感情を持つんじゃないかなと思うのです。こんなことをいうやつは許せん。国賊だ。田舎者どもを黙らせろ。あいつらは何も分かっちゃいない、政権の足をひっぱっている。云々……。はい、強い感情が発生しましたね。これが物語と呼ばれるものです。
怒りだけが本物の感情です。感受性が鈍らないように、常に世の中のすべてに対してイライラしていられるように気をつけましょう。それさえできていれば悪役の人物造型にいちいち悩むことはありません。身近にいる嫌いな、不愉快な、消えて欲しい、殺したい人間をそのまま投影すりゃいいんですから。だから現実の人間との交流はあまり重要ではありません。ヤフーニュース程度のものを眺めて、そのたびに心を動かされていればいい。それか、ノベルクリエイターサポートで"にわとり"とかいう名前の投稿者は不愉快だな、中身のない役にたたない独自理論をドヤ顔で語りやがって、生きていて恥ずかしくないのかな、死ねばいいのに、とでも思えばいい。そういうネガティブな感情を突き詰めていくのがすなわち創作だと思うのです。
ねえ、怒りで全部焼き尽くしましょうよ。『やっぱり、色んな人との交流も必要だったりするんでしょうか。』っていう凡庸な発想とか。そんなことを考えさせてしまうようなくだらない"常識"とか"先入観"とか。そんな馬鹿馬鹿しい価値観を否定して否定して否定し尽くした先に本物の感情はあるんじゃないんですか? 少なくとも自分はそう思いますけど。