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タイトル:物語の考察のさせ方についての返信 投稿者: にわとり

 謎本って知ってますか? 90年代くらいに流行ったんですけど、有名作品の矛盾や整合性のない点を捏ね回して「実はこんな裏設定があったのだ!」という考察(という名の妄想)を書いたものです。『磯野家の謎』が有名ですけど、ドラえもんとかメジャータイトルの漫画や特撮はかなり標的にされてたと思う。
 もう少し時代が下ってから似た方法論でヒットしたのが空想科学読本。あれも公式設定の科学的にいい加減な部分から話を広げて、「このアクションを実現するためには主人公にはこれだけの超人的な腕力があるはずだ!」などと描写から推測できる裏設定(?)を紹介していく本です。続編が出てかなり長寿シリーズになっていたはず。

 理屈と膏薬はどこにでもくっつくんです。考察好きな読者が本気を出せば、何にでも屁理屈をこじつけることができる。考察ってそれ自体に遊戯性があるんですよね。パズルを解くみたいな快楽が。
 と同時に創造的でもある。考察には個々の読者の個性が出るものです。そういう意味ではある種の二次創作と考えることもできる。作品の公式設定を裏読みし、キャラの関係性や事実関係を自分なりの仮説を元に読み替え、自分だけの物語をつむぐ行為。これも考察の一つの側面。
 学術的にちゃんとしたものはともかく、巷で言われるようなレベルの考察って読者側の「語りたい欲求の発露」である場合がほとんどだから、もし考察が盛り上がりやすい作品というものがあるとするならそれは「個々の読者が内心感じていることをなんでも好きに投影できる、鏡みたいな作品」なんじゃないですかね。それプラス、個々の読者に"自分の考察を語る場"が存在していること。これは作品そのものというより環境要因になっちゃうけど。
 わかりやすくいうと話題作だったら「俺この作品を読んでこんなことを思ったんだけどさ~」という語りは割と受け入れられやすい。でも無名の作品だったら普通はみんな聞いてくれない。話を聞いてくれる相手がいなかったらわざわざ考察しても寂しいだけですね。べつに全日本的なヒットじゃなくても良いんだけれど、どこかに話を聞いてくれるような"盛り上がってる界隈"が存在しないとちょっと厳しい。
 小説、というか物語でこれを最高レベルで実現しているのは、おそらく聖書に登場するヨハネの黙示録ですね。終末の予感や恐れって、どんな時代のどの世代にも一定の共感があると思うんですよね。そういう"読者の中にはじめからある感情"に上手く働きかけている。それに加えて圧倒的な知名度と権威性。ヨハネの黙示録が何で、どんな事が書いてあるのかについては非キリスト教徒であっても割とみんな何となく知っていて、ちゃんと話が通じる。
 媒体は小説じゃないけれど、言葉の解釈で界隈が盛り上がってそれが人気の駆動力になった例として連想するのが、10年くらい前のボカロ界隈。米津玄師とかじんってそういうのが上手かったよね。ノリの良い音楽で人を惹きつける→謎めいた歌詞とMV→掲示板とか動画のコメントで"考察"が盛り上がる、みたいな。わからなくてもコンテンツとして超絶面白いのは大前提で、そのうえでさらに暗号を置いてくからこれが読めたらもっと楽しいよ、みたいな提示のしかたがいいのかなと思う。まあこんなこと、狙ってできるだけの技量を持った人ってそうそういないと思うけど。

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