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タイトル:キャラクターの能力についての返信 投稿者: 手塚満

ちょっと危ない考え方に落ち込んでいる恐れがあるように思います。「無を操る能力」なんだから最強だと断定してしまってますよね。確かに、敵の攻撃を全て無かったことにできるわけですから、攻略が難しい能力です。

ですが、読者が思わず引き込まれるって、敵キャラであれば「こんな凄い奴、どうやったら倒せるんだ?」→「あっそうか! そんな手があったか」が多いはずです。もっと大枠で言えば、予想外の展開ですね。

お考えの物語ですと、主人公が最強になっているわけですね。普通は敵が強くて、対抗できない主人公がどう頑張るかの話が多いわけですが、お考えの物語では最強のはずの主人公がどうピンチに陥るかが肝になりそうです。普通の考えて対抗できる敵がいないというのは、初期設定として成功です。「美を操る能力」の敵が出て来ても対抗できそうにない。直感的には、間接的で弱そうな能力ですから当然ですよね。

ということは、不自然に感じられたというのも、初期設定として成功です。そうであるのに、どうやって主人公がピンチに陥るか、作者でも考えあぐねるようなら、読者はなおさら分かりません。ワクワクできるポイントです。敵はどうやって主人公を倒そうとしているのか。

無に帰すということでは、例えば「とある魔術の禁書目録」アニメで最近登場したのが、「騎士団長(ナイトリーダー)」の「ソーロルムの術式」が似ているかもしれません。全ての武器を無力化できるという、一見は無敵モードと思える能力です(この防御技に加え、攻撃用の超便利な「パターン術式」も持っている)。

そんなものを無制限に行使できればしたい放題になってしまい、物語になりません。ですから制限も設定されています。

・相手の攻撃を認識し、武器によるものと認識して発動させる必要がある。
・発動させる対象は一度に一つだけ(同時ではなく、次々と発動することなら可能)。

こういう能力を持つ「騎士団長」に対して取られた戦術が、フェイントです。でかい槍の攻撃を見せつけて無効化の術式を発動させておいて、その隙に別の小型武器で攻撃する、といった感じ(実はソーロルムの原典の神話通りだったりする)。「騎士団長」は厄介な敵に見えて、意外と単純な倒し方です。しかし無理な感じはしない。上手い設定と描写(のミスディレクション等)の賜物ではないと思います。

「とある魔術の禁書目録」は異能バトル満載の名作ですから、設定やバトルでの勝利条件などで参考になるものが多数あります。もしまだお調べでなければ、参考資料となさってはどうかと思います。

> なんでも、無にできるんですよ。力の強ささえも無にできる。

これについては、例として上記のような設定と話運びがあります。無にできるといって無敵にはなりません。普通は何を無にするか選んで能力を発動させますよね。少なくともそこは不可避的に弱点になります。どんな能力でも同じです。

ただし例外はあるもので、また「とある魔術の禁書目録」を題材にしますと、メインヒロインの「インデックス」には「自動書記(ヨハネのペン)」なる防御技があります。本人の意思とは無関係に発動し、オートで最強クラスの魔術を行使し続けるものです。同作の「一方通行(アクセラレーター)」の攻撃反射もこれに近いものがあります。

そこまでしてしまうと、さすがに扱いに困りそうです。同作でも主人公側のヒロインとしています(アニメの現時点だと、このインデックスの能力が敵側に利用されようとしている。敵側に回るとどうなるか、参考になりそうです)。

> だから、変な話、敗北という事実を無にしてしまえば、負けないわけなんですよ。

例えば、フィクションでは「ピュロスの勝利」というものがよく使われます。ピュロス王の史実を元にしたもので、「勝つには勝ったが、犠牲を考えるとこれでよかったのか?」と思えるような勝ち方のことです。敗北をなかったことにして勝つのも代償が大きいなら、ジレンマが生じます。

仮に、主人公が即死ではないけど致命傷を受けて倒れたとします。ただし、その際に敵の隠された能力を知ることができた。そして味方に知らせる通信手段はある。自分の生存を優先して、敗北をなかったことにすると、情報も得なかったことになる。知らせることもできない。味方を助けたいなら、自分の致命傷を受け入れないといけない。簡単ではないですよね。
(実はこれ「ナルト」の「自来也」のエピソードを元にしています。自来也は己の死と引き換えにナルトたちに敵の情報をもたらし、味方を勝利に導きます。)

「無にする能力(主人公)」vs「美を操る能力(敵手)」をお考えのとき、敵視点でも考察はされたでしょうか。敵手は主人公の能力を知れば、スレ主さん(作者さん)と同様、必ず負けると判断するはずです。しかし無策なら、です。

当然、敵は対策を考え抜くはずです。敵は主人公の負けるストーリーを考えるわけです。そういうのは作者として本意ではないですから、どうしても手を抜きがちです。ですが、考えるのが嫌なことこそ、力を入れるべきです。敵は主人公のことは調べ上げるでしょう。例えば、主人公に恋愛関係のヒロインがいるとします(親友でも兄弟姉妹でも親でもいい、とにかく主人公としては絶対的に大事なキャラ)。

ヒロインが誤解から誰か(これも主人公にとって大事なキャラだとやりやすい)を深刻に恨んでいるとします。主人公が誤解だと知っているけれど、ヒロインは頑なに受け付けない。ヒロインの憎悪は殺意にまで高まり、主人公でもどうしようもない。

そういう状況を敵手が知ったとしますと、利用しにかかるはずです。敵手は誰でも魅了して操ることができる。それをヒロインと憎んでいる相手に作用させて、ヒロインの憎悪を好意に変えてしまう。そうしておいて、敵手は主人公に「私を倒すとヒロインの殺意が甦るけど、どうする?」と脅してくる、とか。

もっとも「無にする」をヒロインの憎悪に適用できるなら、敵の思惑も無効化されてしまいはします。記憶までは無にできないと設定しておくか、ヒロインが憎悪を抱く原因となったイベントで、主人公はヒロインと知り合って恋愛関係になれたと設定しておくか、でしょうか。

少し大枠で考え直してみますと、「無にする」って破壊の一種です。破壊と対照的な創造はない。「壊せはするが、作り直せない」と考えてみると、主人公の弱点も見えてくる可能性が高くなるように思います。

もう一度ご質問文を拝読して考えてみますと、スレ主さんは「無にする」を考えるに当たって、大枠過ぎてないでしょうか。「無にすることができるんだから」からアイデアを具体化してしまうと、仰る通りに「なんでも、無にできるんですよ」でコンフリクト(対立、葛藤、停滞等々)を無にできてしまう。解決ではなく解消になってしまう。

「無にする」って、破壊面でいえばほぼ万能な能力です。主人公の特徴ともなります。おおまかな設定はそれで出来てしまっています。主人公は何ができるか、ですね。しかし具体化して行かないと、表現できるものにはなりませんよね。既にほぼ万能なものを発想したわけですから、逆を行う必要があります。何ができないか、です。

主人公が何ができないかを具体的に発想できてくると、敵も自然と具体化してきます。敵は主人公のできないところ、つまり弱点を突いてくるものだからです。おおまかな弱点は例えばですが、上述したように「作り直せない」があります。壊したら壊したで問題が出る、も一例としては上述した通りです。

上記中で、敵視点で主人公を見てみるということを申し上げましたが、主人公をよく眺めてみるためです。主人公をいったん突き放し、作者が主人公をいじめてみる。でないと、主人公の具体的な弱点を思いつけず、負ける可能性がなかなか思いつけません。主人公視点だと思考が「どうやったら勝てるか」「得意技の使い方は」に偏りがちですから。負ける可能性が思いつけないとピンチが描けず、盛り上がりが作れません。

主人公を突き放して考える方法の一つが、敵視点ということです。多少極端な言い方をすれば、いったんは主人公が負ける仮の物語(戦闘シミュレーション)を作る。それが敵の思惑になります。そこを打破する方法を思いついて、本当の物語(実戦)を作ることになります。試行錯誤の一種ですね。

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