求めていらっしゃるのは、仄暗い情緒があり奇妙な読後感の残る小説というイメージでしょうか?
そういう作品にしぼっていくつかあげてみます。むろん取捨選択はおまかせします。
◎米澤穂信『玉野五十鈴の誉れ』
連作短編集『儚い羊たちの祝宴』所収。この作者はラノベ界隈では『氷菓』が著名かと思いますが、ホラー・ミステリの名手でもあります。
◎三島由紀夫『午後の曳航』
三島由紀夫のやや異常な観念性が表れた作品。イギリスで映画化されていますが、いかにもヨーロッパ人が好きそうな小説です。
◎内田百閒『花火』
短編集『冥途』所収。百閒は夏目漱石の門下ですが、漱石の『夢十夜』からエンタメ性をのぞき異様さを増したような独特の幻想小説が得意です。『サラサーテの盤』がわりに有名ですが、個人的に「花火」が一番印象に残っています。何だかよくわからない内容なのに鬼気迫る雰囲気が漂うという不思議な作風。
文章にこだわらないなら、海外の作品からも少し。
◎ロード・ダンセイニ『二瓶の調味料』
これも短編集ですが、表題作は江戸川乱歩が「奇妙な味」と分類される作風の代表としています。
◎ロアルト・ダール『南から来た男』
『あなたに似た人』所収。
◎アンブローズ・ビアス『アウルクリーク橋の出来事』
『アウルクリーク橋の出来事/豹の眼』所収。
以上の3作は、ラスト数行の切れ味が出色です。
ちなみに『陽だまりの彼女』は(しつこくて、すみません。汗)、雰囲気は明るく爽やかですが後半から「ん?」と思わせる空気が漂いはじめ、ラストは奇妙な読後感の残る小説の一つです。