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タイトル:アクション描写で気をつけることの返信 投稿者: 手塚満

「ノベル道場/小説の批評をし合おう!」の「亡国のフロイライン (初稿)」
https://weblike-tennsaku.ssl-lolipop.jp/review/novels/thread/840
でよろしいでしょうか。もし違うようでしたら、以下はスルーしてください。

「第1章 夕暮れの悪戯」から具体的に申し上げてみたいと思います。アクション描写があるのは終わりのほうですね。該当部分を引用しますが、一文ごとに箇条書きに直して番号を振り、気になる部分を『 』でくくってみます。

01> 再び混乱してきた久住は、思わずアーチェリー場を飛び出した。
02> 『もう既に』辺りは暗い。
03> 『すると』、目の前に巨大な陰が現れた。
04> グロテスクな触手が久住をめがけて放たれる。
05> 『すると』、先ほどの銀髪の女が前に躍り出て、触手をサーベルで切り落とした。
06> 『その後』、陰の頭の中心をめがけてサーベルを振り下ろす。
07> 鋭い悲鳴と共に陰は跡形もなく消えた。
08> 「まったく…、最近の鬼は見境がないな…」

02の「もう既に」は単なる重複です。ときおり見かける表現でもありますので、普通は問題にしなくていいかもしれません。ですが、緊張感を高めるパートでは冗長な感じで損をします。

アクション描写で緊張感を下げる、ぱっと目につく要因は03以降の接続詞の類です。「すると」や「その後」ですね。どちらも間を置く効果が出てしまっています。特に「その後」は「ソノゴ」と読むと、一拍置くどころではない時間経過を感じてしまいます。とりあえず、削ってみます。

01> 再び混乱してきた久住は、思わずアーチェリー場を飛び出した。
02> もう辺りは暗い。
03> 目の前に巨大な陰が現れた。
04> グロテスクな触手が久住をめがけて放たれる。
05> 先ほどの銀髪の女が前に躍り出て、触手をサーベルで切り落とした。
06> 陰の頭の中心をめがけてサーベルを振り下ろす。
07> 鋭い悲鳴と共に陰は跡形もなく消えた。
08> 「まったく…、最近の鬼は見境がないな…」

なんとなくギクシャクしてしまっているようです。だから接続詞等を入れたくなったんだと思います。ですが、時系列であることを示す接続詞を選んだために、間延びしてしまう結果になったんじゃないでしょうか。

そこで、時間を置かないことを意味する文言を補ってみます(一文中についてもやってみます)。接続詞でも短い逆接は効果的なことも多いですから、少し使ってみます。

01> 再び混乱してきた久住は、思わずアーチェリー場を飛び出した。
02> もう辺りは暗い。
03> いきなり目の前に巨大な陰が現れた。
04> すかさずグロテスクな触手が久住をめがけて放たれる。
05> が、先ほどの銀髪の女が前に躍り出るや、触手をサーベルで切り落とした。
06> 続けざまに陰の頭の中心をめがけてサーベルを振り下ろす。
07> 鋭い悲鳴と共に陰は跡形もなく消えた。
08> 「まったく…、最近の鬼は見境がないな…」

こうしてみますと、03の「いきなり目の前」はくどい感じです。04も気になります。受動態ですし、第三者視点から眺めている感じが強く出ている。01で久住と明示していますので、久住視点で読んでもらえそうなことも、一文を短くするのに利用したいところです。

01> 再び混乱してきた久住は、思わずアーチェリー場を飛び出した。
02> もう辺りは暗い。
03> いきなり巨大な陰が立ちふさがった。
04> すかさずグロテスクな触手を放ってきた。
05> が、先ほどの銀髪の女が前に躍り出るや、触手をサーベルで切り落とした。
06> 続けざまに陰の頭の中心をめがけてサーベルを振り下ろす。
07> 鋭い悲鳴と共に陰は跡形もなく消えた。
08> 「まったく…、最近の鬼は見境がないな…」

03~04は「巨大な陰」のターンです。同様に05~06は「銀髪の女」のターン。文章でのアクションですと、原則として文の長さがキャラの経過時間になります。短くするのは大事です。ですが、同じキャラの1ターンを分割すると、逆に経過時間が長く感じがちです。

01> 再び混乱してきた久住は、思わずアーチェリー場を飛び出した。
02> もう辺りは暗い。
03> いきなり巨大な陰が立ちふさがるや、グロテスクな触手を放ってきた。
04> が、先ほどの銀髪の女がサーベルを抜きはらって躍り出るや、触手を切り落とし、陰の頭めがけて剣を振り抜いた。
05> 鋭い悲鳴と共に陰は跡形もなく消えた。
06> 「まったく…、最近の鬼は見境がないな…」

でも、04はさすがに長い感じですね。一瞬で終わった感が欲しいのに、間延びしてしまう。それなら、一瞬を諦めるのも手です。緊張感が足りなくもありまして、原因の一つが視点たるべき久住の緊張などの描写がないからかもしれません。

01> 再び混乱してきた久住は、思わずアーチェリー場を飛び出した。
02> もう辺りは暗い。
03> いきなり巨大な陰が立ちふさがるや、グロテスクな触手で掴みかかってきた。
04> 「うわ!」
05> 久住が思わず目をつぶると、ガキッという音。
06> 目を開くと、先ほどの銀髪の女がサーベルで触手を受け止めていた。
07> 女は楽々と触手を払うと、陰の頭めがけて剣を振り抜く。
08> 陰は鋭い悲鳴と共に跡形もなく消えた。
09> 「まったく…、最近の鬼は見境がないな…」

箇条書きから普通のスタイルに戻してみます。

―――――――――――
 再び混乱してきた久住は、思わずアーチェリー場を飛び出した。もう辺りは暗い。
 いきなり巨大な陰が立ちふさがるや、グロテスクな触手で掴みかかってきた。
「うわ!」
 久住が思わず目をつぶると、ガキッという音。目を開くと、先ほどの銀髪の女がサーベルで触手を受け止めていた。
 女は楽々と触手を払うと、陰の頭めがけて剣を振り抜く。陰は鋭い悲鳴と共に跡形もなく消えた。
「まったく…、最近の鬼は見境がないな…」
―――――――――――

これでいいわけではありませんし、原文より良いとも思いませんが、もし自分が推敲していくとしたらこんな感じで進めてみる、というサンプルとお考え下さい。

拝読して思いましたのは、とても分かりやすい描写だということです。さっと読み下しても、混乱せずにスムーズにイメージできます。ただ、そのせいで段取りが良すぎるのではないかと思います。言い換えれば、分かり過ぎるためにテンポを感じにくい。

アクション自体はしっかり構想できていると思います。問題は、何がどうなっているかを、順序含めて客観的に説明し過ぎているようです。そのため、リアルタイムなキャラ行動と感じにくい。反面、主観的な描写を排し過ぎて、緊張感を高めにくくもなっているようです。

(客観的なことを)説明し過ぎなのは、全般を通して感じられます。第1章ですと、冒頭から遊園地の由来やら状況やらを細かく説明しています。主人公の久住篤志も同様です。作者的には主人公はもちろん大事ですし、その主人公が遊園地を大事にしている理由も大事でしょう。どちらも設定していなければ書けませんから。

ですが、読者は違うんです。まだ魅力を感じていない。当然ですよね、見知らぬ主人公と見たこともない遊園地なんですから。まだ魅力が感じられるかどうか分からないものについて、説明を読まされている感じになります。ブラバ率を高めてしまい、損です。読者は楽しみたいだけであって勉強したいわけじゃないため、自分の興味が先、知識欲は後です。

ですので、文章面だけでなく、構成もできるだけ端折ることを考えてはどうでしょうか。特に冒頭は何も知らずに読んでも面白いものだけに絞るべきです。読者としては興味を持てたら、知りたくなります。主人公が正体不明の鬼に襲われ、やはり謎の女が鮮やかに救って見せたら、どういうキャラがどういう状況にいるか知りたくなります。そうなってから、そこに関わる主人公の来歴を出せばよいはずです。

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