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タイトル:会話文の作法についての返信 投稿者: 手塚満

結論から先に申し上げますと、台詞の適否を決めるのは前後の文脈です。台詞だけ取り出しても分からない。短すぎて分からないのではなく、短いから分からないわけです。

既存の良回答にもありますが、これだけで何か判断するのは難しく、興味深いご質問とは思ったものの、回答を逡巡しておりました。スレ主さんの補足などもあり、少し分かる気もしましたので、多少の説明を試みてみたいと思います。

1.添削後の2について
> 2:(指摘者が改めた文章)
> 「実はね。俺の〇〇には特別な力があるみたいなんだ。女性を幸せにするためのね。申し訳ないと思ったけど、(キャラ名)で試させてもらって、それが本当だと分かったんだ。」

順序が逆となりますが、こちらが小説の情報・設定を説明できているとしまして。この台詞主を話し手A、聞いているはずの(キャラ名)を聞き手Bとします。

この台詞から窺えるのは、

a. 話し手Aに女性を幸せにする異能がある
b. 聞き手BにAの異能が確かに作用した
c. 聞き手Bは何らかの説明を必要としている

ということですね。しかし、こういうのは説明台詞と呼ばれかねないものになります。この台詞だけで設定説明が成立してしまっているからです。

例えばAの異能が対象女性に多幸感をもたらすものだったとします。普通、主に地の文でAの異能発動とBの状態変化(態度、言動等)を描写するはずです。仮に台詞が必要とすれば、Bが不審に思っているのでAが説明する必要があった、などでしょうか。

ただ、地の文で長々説明するのを避けるため、状況が飲み込めていない人を登場させることはよくあります。あるシーンでどうしても設定説明が必要なんだけど、地の文に入れてみたらどうも説明のための説明に堕してしまう。そこであるキャラの不安、好奇心として自然に出そうな質問台詞を発して、状況をよく知るキャラが説明してあげる。

しかし多用は出来ない手です。繰り返し使ってしまうと不自然さが鼻につくようになってしまいますから。ですから、上記のような説明台詞を言いたくなったら、その台詞の前後を見直すべきなのです。

2.原文1について
> 1:(元の文章)
> 「凄いなぁ、(キャラ名)は。実はね、悪いとは思ったんだけど実験させてもらったんだ」

「2:(指摘者が改めた文章)」の内容が正しいとすると、この1はちょっと疑問が生じます。話し手Aは聞き手Bを凄いとしており、この台詞からは異能の持ち主が聞き手Bであると受け取れます(AはBの異能が本物か、試してみた)。

この台詞1が2と同じ状況だとすると、話し手Aが言ったのは、聞き手BがAの異能に反応できる点が凄い、といった受け取り方になります。そういう会話も普通にあるでしょう。例えば、異能が「素直な人なら喜ぶ」作用だったとすると、褒めてもおかしくはない。

ですので、この台詞1つだけ取り出されても、必ずしも2の添削後の台詞と齟齬があるかどうかは不明です。この前後をみないと、台詞の情報が適切かどうかは判断できません。2のように添削した人がいるということは、2に含まれる情報がこの台詞前後で不足していたからかもしれません。

ただ、この1の台詞は短めですよね。だから読みやすい。2の文章量は78字(最後の句点は除く、台詞時間12秒くらいか)、1だと39字(句点での間がないことを考慮して、5秒以内か)。

2のような台詞が発せられるということは、聞き手Bは自分自身の何らかの状況変化、ないしは異変めいたものを感じているはずです。10秒以上もAの意味不明な説明(異能の内容がまだBには明らかでないはず)を聞いているかどうか、疑問です。

Bが己が異変がAが原因だと思い、BからAに説明を求めたのでない限り、Aの「実はね。俺の〇〇には特別な力があるみたいなんだ」でBがAの話を遮りそうです(「そんなことより、私に~」みたいな)。それでも短めですから添削後の2よりは読むのが楽なはずです。

3.会話文の作法?
しかし、この1の台詞ですら、話し手Aの「凄いなぁ、(キャラ名)は」まで言ったところで、聞き手Bが「何が? それよか私ね」と言って遮りそうです。そこでBも「実はね」と遮り、説明を続けることになりそうです。ですが、Bを焦らせる意図がないなら、「実験させてもらったんだ」を「俺の異能のせいなんだ」くらいにしてもいいでしょう。

「凄いなぁ、(キャラ名)は」
「え、何が? いや私、今」
「うん知ってる、悪いとは思ったんだけど俺の異能のせいなんだ」

こんな感じでしょうか。でもこれはダメな例です。元の1自体、問題があるのです。それは台詞で状況を説明してしまっている、ということです。ですので2はその点では、もっと問題がある。地の文ならいいという問題ではありません。

キャラを見せる小説では、キャラを動かして状況を見せるべきなんです。描写ですね。例えば、AがBに話しかける前に、AがBを見つめて念じる→浮かない顔だったBが急に嬉しそうになる→すぐに不思議そうな顔をする、という描写をしておく。するとAからBへの(最初の)台詞は「それ、俺の異能。ごめんね」くらいで済みます。

1にも2にも「実はね」があります。この言葉を書いたら、その続きは説明になります。「実はね」は要注意です。描写が足りていないから、そう書きたくなったのではないかと疑う必要があります。

もっとも、大事な場面では描写で語るということであって、端折りたいときは別です。1ないし2の台詞のシーンで、異能の開示・説明自体が重要でないなら、2のような台詞で済ますほうがいいこともあります。少し大事だとすると、前後の文脈にも説明・描写を分散して1の台詞ということもあります。

ですので、最初に申し上げたように文脈で考えるしかありません。会話文だけ取り出したら、適不適は判断できません。

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