原文を見せていただかないと何とも言えませんが、熱血なノリは避けるべきでしょう。人が本当に葛藤している時、「うぉぉぉぉ!どうすればいいんだー!!」みたいなことは言いませんよね?
急に葛藤を描くとお寒い展開になってしまう原因としては、メロドラマ的な予定調和を無意識に書いてしまっているのかもしれません。コテコテのお約束通りでなくても、例えば登場人物の感情に合わせて雨が降ったり晴れたりするのはわざとらしいです。
あるいは、登場人物が葛藤している内容そのものがちっぽけだったり、軽く乗り越えられてしまうほど簡単な問題だったりするのかもしれません。葛藤が薄っぺらいとお寒くなるのは必定です。
>>主人公やキャラクターたちの葛藤のシーンを上手く書ける方法はありますか?
ボカロ曲をたくさん聞いてください。それだけにとどまらず、多くの作品を読み込んで、多くの葛藤するキャラクターの在り方を胸に刻むのです。僕が知る最短の近道はそれです。ですが、とくにボカロは人間の葛藤を描いた曲が非常に多いです。人間の醜さもありのままに描いています。
いくつかリンクを張っておきますね。
①命に嫌われている
https://www.youtube.com › watch
・解説
葛藤する主人公を前にしたサブキャラに言わせたくなる台詞が満載の曲です。
直接引用することは難しいですが、どんな言葉選びをすればいいのかを学べるはずなので参考になると思います。
②アディショナルメモリー
・解説 宿主の願いを叶える『目が冴える』能力を行使する事で、その欲望に付け込み、暗躍する『冴える蛇』に取りつかれた父『研次朗』を止めるため、主人公『文乃』は自らの命と引き換えに永遠に時間がループする『カゲロウデイズ』へ行くべく、学校の屋上から飛び降り自殺する。
この曲はその数秒間を描いた話。
ポイントは、家族を残してきた後悔と不甲斐ない自分に対するやりきれなさの間で揺れるアヤノの葛藤です。
アディショナルメモリーは、自殺する人の絶望と葛藤がきちんと描かれているので、お勧めします。
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③ロスタイムメモリー
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・解説
アディショナルメモリーにてアヤノが自殺したことで、高校を中退してひきこもりになったアヤノの友人『シンタロー』は、『カゲロウデイズ』へ行ってしまったアヤノに再会すべく、同じ『カゲロウデイズ』に引きこもってしまう。
そんな彼を見かねた『アヤノ』が下した決断と、『目に焼き付ける能力』の絶対記憶によって再度のループを経ても、アヤノとの約束を覚えていたシンタローの未来とは?
シンタローの後悔を見事に描き切った(個人的な意見ですが)傑作です。それゆえに、彼の葛藤も実に生々しく描写されています。
後悔にのたうち回り、激しく葛藤するシンタローの姿をご覧あれ。
あとはちょっとしたコツですが、黙説法を使ってみてはいかがでしょうか? 何も言わずに、地の文や関係の薄い台詞で多くを語ることを『黙説法』といいます。ぜひ使ってみてください。
親からの虐待を受けている女の子がいるとします。通常、キャラクターに何があったのかは、キャラクター本人の口から語られることが多いかと思いますが、ここではあえてそれをしません。
『その女の子はお腹を抱えていて、こちらと目を合わそうとしない。ちらちらと背後の家路を気にしている。おでこが内出血していてどうも不自然だ。
「そのアザ、誰かに殴られたの?」
女の子はじっと黙って答えない。
不審に思って「ちょっとごめんね」と断ってから、お腹をめくると————――――。その肌は、大きな打撲痕で埋め尽くされていた』
前半部分で、すでに虐待されていることが察せられるように黙説法を使っています。適切に例示できたかは自信がありませんが、これを葛藤するキャラクターを描写する際に用いれば、もっとリアルな情動を描くことができるはずです。