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タイトル:最近の学園ラブコメ作品に思うことの返信 投稿者: 手塚満

> 「ラブコメに物語の本筋なんか必要ねぇんだよ、主人公とヒロインがイチャコラしてれば物語なんて単調でいいのさ」

まあ、別にラブコメに限らなくてもいいと思います。実写ドラマのシナリオのコツで、ほぼ同じことを見聞きしました。とりあえず、実写ドラマのシナリオについて寄り道になります。ご容赦をお願いします。

1.名優の演技力

「シナリオに物語の本筋なんか必要ねぇんだよ、主人公とヒロインがイチャコラしてればストーリーなんてなくていいのさ」
さらに、
「シナリオはストーリーで魅せようなんてするな。ストーリーを工夫するな」

という感じです。こういう類の話を再三再四、繰り返し言ってました。

実は実写ドラマであっても、最初は私はそう思えませんでした。ストーリーが詰まらなくては、いくら役者さんが頑張っても台無しになるんじゃないか。ですが、ちょっと思い出したこともあります。おそらく都市伝説の類かとは思うんですが、

「名優がレストランに入り、席でメニューを読み上げると、居合わせた客は皆感動して泣いた」

という話です。さすがに実際には起こりそうもない気がしますが、名優レベルの演技力を示唆するものだと思います。つまり、なんでもないことでも演技力次第で感動を呼び起こせる。メニューで泣けるんなら、シナリオなんざどうでもいい。下手にシナリオに魅力があると、かえって名優の演技の魅力と分裂を起こしかねない。

2.キャラ志向のラノベ

ラノベはキャラ小説だとよく言われます。まずはキャラを立てて、そのキャラの魅力で物語を動かせとか。そういう点では、上記のシナリオ指導の言も当てはまる部分はあります。ただ、それだけではなさそうです。

もちろん、ストーリーの魅力もよく言われます。面白いストーリーを書け、という要求が間違っているはずがない。設定もそうですよね。見せびらかすとたいていいけませんが、物語やキャラに対するの縛りなどで有効に働かせることができる。いい設定だって魅力になる。

でも、どれも最大限に盛り込むべきかと考えると迷います。魅力、売りの要素を乱立させていいのか。おそらく駄目です。天才なら全部盛り込めるかもしれません。しかし読むのは一般人を想定しなければなりません。たとえうまく書けたとしても読み手を選んでしまう。エンタメ狙いとしてはリスクの高い戦術です。

3.何をどう見せるか

シナリオに再び立ち寄りますと、シナリオは途中段階のものです。最終的には役者が演じて、編集して、1つのドラマや映画に仕上げる。観客・視聴者が見て感動するのは役者の演技です。実写では人間が演じますから、膨大な情報量を持っています。だから演技の巧拙が直接的に、最大に仕上がりに影響します。

ラノベでキャラ重視ですと、さすがに実写ドラマと同じとはいえません。役者の演技、映像効果、演出等は読者の脳内で行われます。この読者の脳内という点は重要です。ドラマ、映画だと見せたいものを見せたいように直接的に出すことができる。

4.文章作品は読者が絵を描く

だけど文章作品は読者の言語からのイメージ再生能力に依存するわけです。キャラも目いっぱい、シーン描写も目いっぱい、ストーリーの工夫も目いっぱい、ドラマの緊張も目いっぱい、見たこともないアイテムや生物もてんこ盛り、では読者がパンクしかねません。作者は1時間、あるいは何日もかけてち密に考えて作りますが、読者は読む速度そのままでそれらを脳内に再現しないといけません。

アピールするものを絞らないといけないわけです。ラブコメラノベであれば、気楽に読めることを期待するんじゃないでしょうか。中盤の山場があるとして、主人公とヒロインの会話が、そこまでのち密な設定、膨大なストーリー情報を前提に理解しないといけないとしたら、気楽に読めるものにするのはかなり難しいはずです。

5.負担と気楽さのバーター

恋愛要素のあるコメディだ、ということになれば、むしろその場その場のノリだけで分かって、笑えて、ときどき泣けるものにしたほうがいいことも多いはずです。もちろん、そこまでで積みあがってきたものが皆無とはいいません。出だしと中盤は違うし、終盤はもっと違うでしょう。

ただ、その違いを理解の深さで出すべきではありません。印象の深さで出すべきです。個々のイベントや台詞の記憶に頼らず、なんとなく「こういうキャラだな」という感覚の深まりを重視する。そういう違いです。

ラブコメに分類されるものが、全部が全部そうであるべきとは言いません。その場のノリの連続では、読後に何の話だったかイメージできず、ラストの感動は作りにくいでしょう。しかしここまで説明しましたように、

> 「ラブコメに物語の本筋なんか必要ねぇんだよ、主人公とヒロインがイチャコラしてれば物語なんて単調でいいのさ」

というタイプの作品の存在価値も確かにあります。そういうタイプの作品が嫌いであっても構いませんが、逆にそういうのが好きな人もいるということが想像できないのは、エンタメ志向としてはかなり損ではないかと思います。

6.作者の方針が最重要

そう申し上げると、スレ主さんへの反論、お考えの否定と思われるかもしれません。別の面がある、ということを強調しましたので、そう取られてもやむを得ない面はあります。

しかし、個々の作者の個々の作品の執筆方針が最重要であることは留意すべきです。いろんな方針があり、各方針に優劣がないと割り切ることも大事です。

スレ主さんのご質問文からは、「もしかすると自分の執筆方針は間違っているのではないか?」という疑問を少しですが感じます。ご自身の方針と、一部の受けている作品がどうも違うことにかすかな不安をお持ちなのかもしれません。

研究熱心ならそう感じることがあるのは普通なのですが、他人は他人と割り切るべきでしょう。割り切らないと、少し行き詰ったときに「もしかして、少しは方針転換したほうがいいか」と迷いが生じたりします。そして、変えていいかどうかよく分からないまま、作風が物語途中で変わったりする。

そういうのが最も危険です。確信のない変更はブレていることがほとんどで、そういうブレは作品の魅力を下げます。フリーハンドの創作者なら、自分が感動するもの、確信していることで書くべきです。他人が何を好んでようが、作ってようが気にする必要はありません(ただし、知っておくのは肥やしにはなる)。

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