ドラコンと申します。ご質問の件につき、私見を申し上げます。
●魔法と剣の次の時代
魔法と剣の時代のままでも構わないでしょう。後述のように説得力次第で、近現代科学文明と、魔法とが共存する世界であっても、良いでしょう。
●魔法と科学
ケモノ好きーさんのご質問を考える上で、参考になる1作が『ドラえもん のび太の魔界大冒険』です。
ご存じでしょうから、殊更説明はしませんが、魔法世界ののび太の町では、自動車が空飛ぶじゅうたん、自転車が空飛ぶほうきに置き換わっています。魔法が使えるからといっても、何でも自由にできるわけでもないですからね。空飛ぶじゅうたんは、運転免許が必要のように、ちゃんと勉強したり、高い道具が必要だったりします。
魔法は精神力による面が大きいでしょう。『のび太の魔界大冒険』で、のび太が使えた魔法は、しずかちゃんのスカートめくりと、悪魔に追われたときのほうき乗りぐらいですからね。前者は、のび太のしずかちゃんに対する執念、後者は危急に際しての火事場のバカ力ですからね。魔法世界のテレビも、スイッチに念を送りこまないとつきませんし。
先に回答されたサタンさんが、エネルギー、言い換えれば燃料に言及されていました。
魔法世界であっても、存在に説得力を持たせられれば、戦車や飛行機が存在してはならない理由はありません。
『のび太の魔界大冒険』では、魔界星に乗り込んだ直後、暖を取ろうと魔法で火を出しました。ですが、燃やす物がないため、魔力だけでは火を維持できず、すぐに消えましたからね。
しかも、火を出す魔法を使ったのは、のび太ではなく、高位の魔法使いである、美夜子でした。
ですので、魔法があるからといって、石油や石炭が不要になるとは、限りません。西洋薬と、漢方薬との関係のように、科学と魔法が共存することもあり得るでしょう。
あくまでも一例です。ガソリンに排気ガスを無害化する魔法薬を混合し、ガソリンをクリーンエネルギー化することも考えられますね。これが出来れば、わざわざ多額の費用をかけて水素ステーションを整備し、水素自動車を普及させる必要もなくなります。
●魔法と、近現代、未来について
ケモノ好きーさんは、こうお書きです。
>イメージとして、重火器の発展や、戦車、飛行機の台頭や政府の変化、貴族制度の廃止、近代的戦争の続発等々、実際の19~20世紀初期の歴史や文化を調べつつ、世界設定構築を進めているのですが、今一ピンと来ず、相談させて頂きました。
これは、むしろ当然のことでしょう。科学が未来志向に対し、魔法が過去志向です。『ドラクエ』でも、『5』ではルーラ・メガンテは失われた古代呪文で、研究者が主人公の現代に復活させています。また『10』では、主人公が5000年前の世界に行きますが、主人公の現代より、5000年前の世界のほうが、魔法文明の発達具合は上です。
大体、魔法研究者は過去の復活には熱心でも、未来を切り開くことは、念頭にないですからね。
前にも1度紹介した本ではありますが、この辺りの事情に詳しい1冊を紹介します。
『錬金術 仙術と科学の間』(中公文庫、吉田光邦)
中国、西洋、日本の錬金術的思考、言い換えれば魔術的思考と、魔術と科学の関係について詳しい。『のび太の魔界大冒険』でも、出木杉が「昔は魔法も学問として研究されていた」と言っていた。そして、西洋錬金術には、このような記述もある。
「現代の科学者はその解決を未来に求める。自分らが創案し、計画した実験の結果のなかから法則を求めてゆこうとする。逆に錬金術師たちは、東西を問わずその法則を過去のなかから、過去のテキストから見出そうとした。彼らにとって過去は完全なものであり、過去の賢人は全知全能で、貴金属を卑金属から自由に作り出し、ゆたかな平和な暮らしを送っていた。しかるに現実は堕落した時代である。過去の聖賢のなかにのみ、真理を証明、真の法則は存在する――そう考えたのだった」
欠点はあまりないが、強いてあげるとすると、以下の通り。
・全体の2/4が中国、西洋と日本が1/4ずつなので、西洋錬金術が目的なら、物足りないかもしれない。
・初出が1963年と古いこと。
・解説が中国錬金術に終始していること。『錬金術』刊行後に出た錬金術書の紹介が中国錬金術のものにとどまっていること。