小説の創作相談掲示板:小説の書き方Q&A。執筆の悩み相談をしよう!

返信する!以下は元記事

タイトル:竜の飛ぶ速さについての返信 投稿者: 手塚満

小説「百年の孤独」を書いたガルシア・マルケスの言に「『象が空を飛んでいた』と言ってもリアリティがない。しかし『4257頭の象が空を飛んでいた』と言えば、信じたくなる」というものがあります。

ごく一部に奇妙なくらいの細かさ、具体性を入れる手法で「魔術的リアリズム」と呼ばれている手法の一つだそうです。「4257頭の象が空を飛んでいる」という表現は、よく考えてみると、むしろあり得なさそうです。そんな多数をどうやって数えたんだ。普通、無数の象とか言うんじゃないか、とかとか。

もちろん、その通りで、だからこそインパクトがあって、信用したくなるわけです。読み手の常識を突き破って、ある種の判断停止に追い込み、「そこまで詳しく言うんなら本当だろう」という気分にさせる。だから、リアリティを感じるわけですね。

ご質問文で例に挙げておられる「600mを33秒、34秒で飛ぶ」はどうでしょうか。常識的な判断が利いてしまう描写、説明です。そのため、読者の想定を突き抜けるインパクトはありません。速度計算しないと分かりにくいものでもある。だから一読してスピード感を感じるのが難しい。異世界での「竜は速い」(あるいは遅い)という実感が伝わりにくいでしょう。

そもそも、秒速18m=時速65kmって、舞台となる(異)世界速いのか。何をもって速いとするか、その世界での基準がないから分かりません。リアルでは時速65kmが速かったなんて、大昔の話ですよね。時速100kmですら、もはや普通の速度です。現実感覚をもってしても、スピード感は感じられない(小説世界での基準が分からないとき、読者は現在の現実感覚で感じ、考える傾向があります)。そういう問題もあります。

一方、「競走馬のように」はどうでしょうか。これも具体的です。しかも視覚的で、ぱっと分かる表現です。もし異世界にリアル同様の「馬」がいれば、その速度は感覚的に分かります。「馬が疾走」と書けば、読者にぱっと伝わる。

それなら、例えばですが「馬」を基準にする手が考えられます。竜騎士がいるなら、普通の騎士がいてもいいでしょう。あるいは伝令の早馬でもいい。並みの馬が疾走しているとして、竜騎士の乗る竜がみるみる追いつき追い越せば、竜の速さは感覚的に伝わります。

さらに竜の速さを強調するなら、例えば並みの馬とは比べ物にならない駿馬に乗る騎士がいったん追いついて来ればいいでしょう。竜が力強く一羽ばたきすると、その駿馬の騎士ですら離されてしまう。駿馬の騎士は呆然として(←小説世界の住人の感覚を使うテク)、地平線の彼方に消えていく竜を見送る、とか付け加えてもいいかと思います。

以上の例はこの場での思い付きですので、練れていない点はご容赦ください。ポイントを簡潔にまとめますと、

1.数字を使うなら読者の想像力を突き抜けるくらいにする必要がある
2.そうでないなら、読者が知っていて、数字抜きで具体的にぱっと想像できるものを基準にするべき

ということです。

コメントは4500文字以内。

「私はロボットではありません」にチェックを入れてください。

トップページへ 「竜の飛ぶ速さについて」のスレッドへ

小説の書き方Q&A:創作相談掲示板の使い方・利用規約(必ずお読みください)。お問い合わせ