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タイトル:読み手になると書かれていないことが気になるから書き手として全部書こうとすると際限なさ過ぎて困っていますの返信 投稿者: 手塚満

文章は情報量が少なく、しかも絵のように同時に多数を見せることもできません。ですので、書いてなくても分かるようにするのが大事、という(当たり前の)ことになるんですが、それだけでは何のことやら、ですので、多少説明を試みてみます。

1.書いてなくても分かるものがある

小林一茶の句「やせ蛙、負けるな一茶、これにあり」をお題に絵が描かれたりします。たいてい、やせた蛙とゴツイ蛙が相撲を取っていて、やせた蛙の後ろで応援している人物が描かれます。手助けはせず、成り行きを見守っている。人物名は書いてないけれど、一茶のはずだと感じる。

ゴツイ蛙とか相撲とかですと、俳句では一切言及していません。ですが、そういうイメージが湧くし、描かれた絵を見て「確かに一茶の句の絵だ」と納得できます。この俳句を例えば短歌(ないしは狂歌)にして、「やせ蛙、相撲で負けるな、太っちょに、なぜなら一茶が、応援するぞ」とかですと、野暮ったく、うるさい感じすらします。

2.書かないほうがいいものもある

つまり、読者が想像できることは書いてはいけないのです。分かることまで書かれると、騒々しく感じますし、冗長な感じもして読むのが面倒臭くなります。書かないと分からないことだけ書くべきであるわけです。

例えば、主人公とヒロインのなれそめとして、「主人公が繁華街を歩いていると、ヒロインとばったり出会った。」というシーン描写をしたとします。繁華街にはいろんな店があるでしょう。店の間は路地があったりもするでしょう。アーケードになっているかもしれない。繁華街を歩くヒロイン以外の他人もいるでしょう。

ですが、「主人公が繁華街を歩いていると、ヒロインとばったり出会った。」以外の描写は要らない。「繁華街」はたいていの人は知っている。作者のイメージと異なるかもしれないが、容易に想像できる。必要なのは、主人公とヒロインが会ったことであり、リアリティを持たせるために場所を示したに過ぎません。

もし時間帯も大事なら、例えば「深夜の繁華街」とする。副次的に、人けのなさも表されます。「昼下がりの繁華街」なら、例えば昼食のためにやって来た人などが想像される。朝夕とは客層が違う。そういうことは書いてなくても容易にイメージできます。

3.作者が伝えたいことを書けばいいわけではない

読者は、作者が何を考えたか、イメージしたかを知りたいわけではありません。単に楽しみたいだけです。作者が「自分はこうイメージしたから、なんとしてでも正確に伝えなければ」と力んではなりません。そういうのは、例えば報道で求められる仕事で、報道は楽しみのためにあるわけじゃないですよね。

学校の作文でも、おおむね考えたことを正確に伝えられることが求められる。だけど、それが面白いかどうかは評価されないのが通例です。学校の作文で求められている(ことの1つ)のが「思考を上手に言語化できるか」の評価ですから。

小説はそれらと全く違う。読者が楽しむ以外には何もない。では読者は何をどう楽しもうとしているのか。それは「想像を巡らしてみたい」です。映像作品ですと、絵は分かるけどキャラ(特に主人公)の内面は間接的にしか分からない。文章作品だと主人公の内面は直接的に描けますが、絵は見えない。コミックはその中間でしょうか。

4.読者が想像を巡らして楽しめるように

いずれも、直接は描かれてない部分に読者が想像を巡らす楽しみがあるわけです。ですから、多少極言すれば「何を書かないでおくか」が大事です。作者視点で言えば、読者に最も見せたいもの、面白いことは隠す。書かないことで、読者が想像を巡らして、「あ、分かった!」と喜べるわけです。

5.疑問が募るようでもいけない

その一方、描写不足が問題になるケースも、もちろんあります。例えば、常に貧乏を嘆いている主人公の長編だとします。来る日も来る日も、その日の食事すら事欠くようなことを言っていながら、腹を減らしている様子がない。さらに、なにがしか稼いでいる様子もない。

もちろん、そこが作品の狙い、つまり主人公の秘密だとしたら、それでいいんですが、単なる貧乏設定を見せるためだけの描写だとマズいことになります。読者に生じて当然の疑問「主人公はどうやって生計を立てているのか?」が満たされず、したがって次第に主人公はリアリティを失います。そうなると、主人公の身に何が起きても、「ふーん、それで?」くらいにしかならなくなる。

その辺りはバランス感覚としか言いようがありません。何が必要な描写で何が不要、余計なのか、機械的に判断する術はおそらくありません。少なくとも自分は知らない。試行錯誤して納得できそうな線を模索するしかありません。

6.ゲームと小説の差異にも注意が必要

さらに、ゲームと小説の設定で許される範囲についても少し。ゲームはプレイヤーが主人公で、(ゲームシステムで可能な範囲で)プレイヤーが行動を選択します。ですので、多少無理があってもプレイヤーは納得できる。自分の選択ですから。

小説は読者は受け身です。作者が語ることに従うしかない。「おかしいな」と思っても、作者が話を進めてしまう。ですので、設定やストーリー進行、キャラの行動・言動等に無理がないよう、注意する必要があります。

ゲームではプレイヤーの選択の結果をプレイヤーが満足し、小説では読者が書いていない部分を想像して満足する。そのため、有効な見せ方には技術的な違いがあります。その差は要注意だと思います。

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