せっかくなので、ワンピースを例にとってもう少し考えてみますね。
先の書き込みでは、アニメ・マンガが小説よりキャラを増やしやすい理由を指摘したわけですが、増やしやすいからといって闇雲に増やせばいいというわけではありません。
キャラの多さを利用してどんなストーリーを作っているかが重要でしょう。
ワンピースの特徴の一つに、複数のピンチが逆に大きな力に収斂していくという大逆転パターンがよく見られます。
主人公の仲間たちが強大な敵のテリトリーに乗り込んで戦うとき、いくつかのグループに分かれ、それぞれが苦戦するストーリーが並行して進むことが多いですよね。そして大抵は、あっちでもこっちでも絶望的な大ピンチというところまで追い込まれます。
しかしこの状況を敵の側から見ると、あっちでもこっちでも厄介な問題が同時多発的に発生しているということになります。
ドレスローザ編だったと思いますが、ルフィが別のところで行動している仲間たちの苦戦を聞いたとき、
「そこに、ウソップがいるのか。じゃあ、大丈夫だ。あいつは、やるときはやる男だ」
というシーンがありました。
ウソップというキャラはゾロのような分かりやすい強者タイプではないからこそ、かえってこういうセリフがグッとくるんですね。
大苦戦しながらもしつこく食い下がってくるというのは、敵からしたらイヤな相手のはずです。それでも局地戦では圧倒的な勢力差で押しつぶせるとタカをくくりますが、そういう事態が同時発生することによって徐々に支えきれなくなり、最後にはいくつかの力が一つになって大爆発するという。
キャラの多さを有効利用している好例だと思います。
キャラが多ければいいというわけではありません。
まず多人数のキャラをいかにして混乱なく読者に受け入れてもらうかが難関ですが、そこをクリアしたとしても、せっかくの多人数キャラを活かし切れなかったら何の意味もないわけで。
キャラの多さをどうやってストーリーの面白さや魅力につなげるかが重要で、そこまで実現しきれないのでは本末転倒だと思います。