なるほど。「悪役令嬢」でいいんですね。じゃあ、そこを軸にして整理してみます。
1)主人公である今世人格のジェイク。このキャラは前世の記憶を思い出すのではなく、前世の自分が別人格・コオロギにアドバイスやサポートを受けるという形で情報を得る。
で、ジェイクがコオロギから教えられた情報は、
2)ジェイクの所属するパルム帝国はいずれ滅亡する。
3)ジェイクが憧れる皇女エリーチカは、謀殺される運命になっている。
4)謀殺の黒幕は、ジェイクの直属の上司エウリー。
など。
そして、ストーリーの進展の中で、
5)エウリーはもう一人の転生者で、コオロギの前世における親友だったことが発覚する。(そうなるとエウリーにも背後霊のような別人格がついているのかどうかも気になります)
こんなところでいいでしょうか?
さて。
思ったのは、悪役令嬢よりも関係性がだいぶ複雑になっているということです。
あ、それがダメだというんじゃなくて、まとめるのが難しそうだということね。逆にうまくまとめきれれば面白いストーリーになりそうです。
複雑さの原因の一つは、主人公の動機の分裂。大きく分けて、帝国の滅亡からの保身。ヒロイン・エリーチカを救うこと。一方で親友エウリーとの関係。この三つがあります。
もう一つの原因は、主人公の人格も分裂していること。ジェイクとコオロギの利害や想いは必ずしも一致していないんじゃないかと思うんですね。端的に言ってエリーチカに想いをよせているのは多分ジェイクの方。この気持ちをコオロギは共有していない可能性があります。
一方で前世の親友に想い入れがあるのはコオロギの方で、ジェイクにとっては「そんなヤツ知らないよ」という感じかもしれません。
なので、エリーチカを選ぶかエウリーを選ぶかの葛藤は、別人格同士の対立になりかねません。
加えて、帝国の滅亡をどうするのかという課題も。
ジェイクはまあ下っ端なのでしょうから、まきこまれずにトンズラするという方向でまずは考えそうです。しかしヒロインとの関係から帝国を捨てられなくなり、帝国滅亡という未来そのものを変えてしまうという選択肢も。
彼は下っ端とは言えコオロギの情報によって帝国滅亡へのプロセスを知っているわけだし、皇女との接点があることを考えれば事態を変える大仕事を試みることも可能かもしれません。
自身の破滅からの逃走を選ぶか、ヒロインのために事態を変えることを試みるか。これは普通のストーリーに有りがちな熱い葛藤のパターンですが、そこに上記の転生・別人格という要素から生じる別の葛藤がからまってきそうです。まとめるのが難しそうだと思ったのは、そんな理由ね。
でですね。
急に話がそれるようで恐縮ですが、別のスレで大野さんが書かれていた「勝利条件」という言葉を思い出してほしい気がします。
「勝利条件」の設定という考え方はバトルだけではなく、すべてのプロットに応用できると思うんですよ。
この物語の主人公にとっての勝利条件は何か? 帝国の滅亡を阻止することか? ヒロインを救うことか?
そういったこと。
そして、ジェイクにとっての勝利条件と、コオロギにとっての勝利条件が一致していない可能性もあります。
このようにストーリーの前半・中盤では勝利条件が錯綜しているのが「葛藤」ということであり、終盤で主人公が「たった一つの冴えた方法」を見つけ出すことによって勝利条件が鮮やかに一本化される。
そういう流れを作ることが、エンタメ作品のプロットのコツなんじゃないかと思います。