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実写版、感想。(元記事)
デビルマンは原作はファンなのですが、実は実写版は観ていなかったので、せっかくだから視聴しました。
まず、結論から。
俺は、けっこう面白かったよ。別に駄作じゃないと思うけど、それが何か?
まあ、デビルマンは原作のレベルが高すぎるので、それよりは見劣りがするということはあります。
それと今回、実写版がヒドイヒドイというところから観たので、逆のバイアスがかかったところも無いではありません。
実写版デビルマンは、一言でいうなら典型的なB級ゲテモノ映画に仕上がってますね。それに尽きる感じで、そういうものとして観る分にはそれなりに楽しめました。
ただね。
B級グルメっぽい作品というのも、誰でも簡単に作れるかというと、そんなこともないんですよ。
いや、もちろん一般の観客は素人だから作れないのは当たり前なんだけど、そういう意味じゃなくてね。分かりやすい欠点も多々あったけど、頑張ってるところも多々あったから、クリエイターならそういうところも見ないと。同業者や小説とか書いてる人があれを駄作の一言で片付けるとしたら、そいつの目が節穴だと思いますよ。はっきり言って。
この作品の欠点は、わりとはっきりしています。以下、すでに言われていることも含みますが。
1)主演、準主演クラスの俳優の演技が上手いとは言えない。
2)長いストーリーを劇場版1本の尺に詰め込んだため、駆け足すぎる。
3)中途半端なサービス精神。
4)SFXがややチープ。
それに対して良かった点は、
5)主役の風貌が、けっこうデビルマンっぽい。
6)主役のデビルマン完全体モードそのものは、けっこうかっこいい。
7)宇崎竜童がいい味を出していた。
8)シナリオにけっこう工夫があった。
9)いくつか悪くないと思った演出があった。
こんなところです。
1~4の欠点が目立ちすぎるのでそればかり言われてしまうのが低評価の所以と思われますが、これらの大半は、
低予算!
これにつきるでしょう。
映画業界の人間ではないので制作費10億円というのがどれほどなのか知りませんが、少なくともハリウッド映画には遠く及ばないのでは? デビルマンを正攻法でまともに作ろうと思ったら10億じゃとうてい無理だったということがまずあるのだろうと思います。作品全体に安普請感がぷんぷん漂っていました。
しかしそれは「お仕事」という意味では仕方のない制約で、観客はそれをくさしてもいいけど、プロの批判じゃないと思うんですね、そこは。
1と5は裏腹です。
主役の子は殺伐とした雰囲気を漂わせていることは間違いなく、そういう風貌を持ったキャラを探した結果のキャスティングと思われます。演技力よりも持って生れたキャラ性を優先したのだろうと。そういう意味で、悪くはないキャスティングだと思いました。
2・3と8も裏腹。ストーリーが駆け足すぎるため、デーモンやデビルマンの位置付けが良く分からない感じになっていました。
また、中途半端なサービス精神というのは、シレーヌやジンメンといった原作の人気キャラを無理にねじ込んだところ。ちょっと出て大した見せ場も作らずにすぐに退場。あの扱いなら、シナリオ術的には出さない方が良かったでしょう。しかし、人気があるから出したかったんでしょうね。
ボブ・サップのニュースキャスターもよく指摘される不評点ですが、個人的にはあれはそう悪くなかったと思います。普通に(?)報道しているシーンでも神経質そうにネクタイをいじったりするという伏線があり、最後に報道しながらデーモン化するという。そういうキャラとしては、それなりに合っていたと私は思いました。
ただ、小錦の方は確かに意味不明だったので、ボブ・サップと小錦という組み合わせがいかにも安易だったということはあるかも。小錦を出さなかったら、サップの方はそこまで叩かれなかったかもしれません。
シナリオは、原作の構想を活かしながらアレンジもしていた点は、小説を書いている身としては評価したいです。宇崎竜童演じる牧村のオジさんや、牧村美樹、最後に生き残る二人の設定などは、けっこう丁寧だったと思いますよ。
ただ、シナリオについては2の問題点が大きいので、そっちばかり批判されてしまい、光っている部分もあることが注目されないようです。
それらのすべてを含め、トータルの平均点で言えば、まあ、大した映画ではないのは間違いないとは思います。
しかし、創作者であるならば、美点も少なからずあることを見抜けないとしたら恥だと思います。
実写版、感想。の返信
スレ主 半額オソーザイ 投稿日時: : 1
あまくささんの感想、個人的にはとても参考になりました!
「デビルマンという原作が既に完成されたかたちで存在する」「ビジュアル面で期待値が上がっていた(完全体とか特に洗練されていましたよね)」「原作が心を揺さぶるストーリーだったぶん、読者各々の思い入れや拘りが強くなっている作品だった」という要素から、ハードルが上がりすぎていたからこそ、こういった評価なのかもしれないなぁ……と自分も感じました。
このへんの消費者側でハードルが上がっていたからこそ起きた批判は、最近の映画でもたまに見かけますね。フラットな視点で見ると、大したことではないのだけれども……みたいな。「消費者ってフラットな視点ですら見れないのか、やってられねぇな」とかではなく、どうしてハードルは上がるのだろうか、どうすればハードルを越えられるのか、ということを成功例と失敗例から学んでいけるなぁと。
要所要所の演出が印象的だったので、頭に残っているシーンは多いんですよね。このあたりの演出法は自作の執筆にも役立てられそうだと感じています。長いストーリーを駆け足で網羅していったのが裏目に出てはいると思いますが、その分1シーン1シーンが「丁寧に描くよりも、端的で印象に残りやすい描き方」に特化していたので……。
俳優の演技や容姿、原作の有無など、自作の執筆に直輸入できない要素もありますが、学べる部分は多いと感じます。
《学べる部分》
・1つのシーンとして短い尺でも読み手に印象付けられる演出。
・細かな仕草を伏線にすると良い。
⇒文章であれば、ネクタイを神経質そうにいじる素振りも読者に”読ませる”ことができるので、ここは文章の強みだと感じました)。
・良いストーリーだけど全て入れると尺が足りなくなる。
⇒シレーヌもジンメンもとても良いキャラでストーリーですが、描くものを絞らないと読者がついていけなくなる?
・読者の期待(ハードル)が高まっている部分を意識する。
⇒これは具体的にはまだよく分からないのですが、期待に応えたり、期待を良い意味で裏切ったりする演出かなと。もっと広く言えば、タイトルの時点で「読者に何を期待させているのか」は自覚したほうがいいのかもしれませんね。原作ありの実写映画ほどではないにしろ、タイトル一つで読者はどんな物語を期待するのか分かるアンテナは張っておいたほうが良さそうです。
個人的に実写版デビルマンで期待を良い意味で裏切ったと思ったのは、ボブ・サップでした。ボブ・サップというある種のコメディリリーフというイメージのある人物(キャラ付け)を持ってきつつ、最終的に彼がデーモン化していく展開になるのは、世界の終末を実感させる良い演出だったと思います。
キャラとして「ボブ・サップ」に期待していたのはコメディリリーフでしたが、デーモン化という裏切りによって良い意味での絶望感を与えられていたのかな、と(少なくとも自分に対してはw)。
カテゴリー : その他 スレッド: 物語作品の「何が駄目なのか」が読者視点で分からない