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作品内にライブ場面を出すような場合についての返信

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作品内にライブ場面を出すような場合について(元記事)

こんにちは。初めてこの掲示板に投稿させていただきます、稲七と申します。
書こうとしている小説の中で、ロックシンガーによるライブが行われる場面が頭の方にあるのですが、歌詞を考えようにも曲が作れないのでうまく音数合わせができず、困っています。ライブ場面なので、歌詞だけでなく「どこで音を伸ばすか」というような要素も入ります。
こうした場合、メロディーのことは考えずに歌詞を(とりあえず音数だけ一番二番で揃えて)作って音は適当に伸ばす形で書いてしまうものか、メロディーも頑張って作るのか、そもそもライブ場面だからといって音楽の中身そのものには踏み込まないようにして創作コストを下げるのか。
皆さまならどうお考えになりますでしょうか。

作品内にライブ場面を出すような場合についての返信

投稿者 にわとり 投稿日時: : 1

 小説に登場するバンドのライブシーンで個人的に一番好きなのが、『新興宗教オモイデ教』(大槻ケンヂ)で登場人物の1人が回想する以下の場面。ちょっと長いけれど引用します。

――――(引用ここから)――――

 ――氷はすでに溶け、バーボンのグラスにはえび茶色のドロリとした液体が沈んでいる。中間は指でそれをかき回しながら、『自分BOX』フューチャリング「ゾン」初ライヴを思い出していた。
「ボクのレスポールはトレブルもボリュームも、もちろんフルレヴェルや、マーシャル直結でな。ピック使わへんねん。『老人と海』の文庫本ぐらいな厚さのガラス板や、そいつで弦をひっかくんや、シュワーン、ギュワーンいうてな。鼓膜破れるでぇ。ほんでゾンや、あいつ最初マイク・スタンドの前で棒立ちしとった。けどな、ボクが耳元で『蓮の花見せてくれよ!』言うた途端や、『ごぅおわわわ!』本当に臓物吐き出すような奇声を発して、痙攣しながら床をころがりだしたんや。うぐぅおおおお、うわあああて叫びながら、手足バタンバタンいわせてはいずりまわるんや。モヒカンのハードコアも客でおったけど、完全に呑まれて目ェ白黒させてたわ。ボク、もううれしくてねぇ。のたうつゾンは何かで切ったのか、破れたシャツからのぞく肩が血だらけや。それでものたうつんや。ボクは、ゾンは人間やないなあ思うて、でもなんだろ思うて、そや、こいつは芋虫や、蛾になる前の幼虫や、芋虫に火がついて暴れとるんや、思うて、早よ蛾になってしまえ、お前は毒蛾や、その毒だらけの羽から降る鱗粉で、凡庸な者どもを殺し尽くしてくれえ。この世の果てまで翔んでいけ、ゾン! 思いながらレスポールかきむしったんや」

(中略)

 ゾンはそれから、『自分BOX』のギグ当日になると、どこからともなくふらりとやって来るようになった。そして火がついた芋虫、永遠に脱皮できぬ地獄苦を見せつける一匹の芋虫となって、ステージ上をのたうち、叫び、時には自分のシャツを引きちぎり、全裸になって、総立ちの客席に頭から飛び込んでいくのだ。客を殴り、そして殴られ、鮮血で顔面の半分を真っ赤に染めながらも、ゾンは美しかった。中間はレスポールをかきむしりながら、狂い咲くゾンを見て、ああ、やっぱりこいつは人間やないなあと思った。人間やない。ボクはゾンを仲間や、考えとったけど、そんなレヴェルやない。もっとと尊いお方や。そう思うと鼻の奥がツンとなり、涙が溢れてくるのだった。
 波うつ客の海から、ゾンがステージにはいあがろうとしていた。金髪の男に肩をつかまれ、ふり切れずもがいている。
 中間はレスポールをふりあげ、それを金髪男の頭にガツンと叩きつけた。ビュッと額からシャワーの様に血が吹いて、男は腰から崩れ落ちた。
『ゾン! はよ上がってこい! はよ上がって、こいつらみんな殺してくれ! ゾン! ゾン!』
 中間の叫びに、ゾンは血まみれの顔で、ニッコリと微笑んでみせた。中間の初めて見るゾンの笑顔は、生まれたままの赤子の無邪気さで、血まみれでも、蓮の花のように美しかった。

――――(引用ここまで)――――

 どうでしょう。表面的にはだいぶ異常なシチュエーションが描写されているのですが、作者の本業がミュージシャンなだけあって、現場の熱狂的な雰囲気、空気感をよく捉えているように思います。

 で、これを読んで思うのが、"べつに歌詞どこにも書いてない"ってこと。まあ作中の説明によれば自分BOXはノイズミュージックらしいので、そもそもまともな歌詞なんてないんだと思いますけど。
 創作コストとか関係なく、そもそもライブ場面において描写すべきことは会場の熱気とかバンドマンの情念、パフォーマンス、ボーカルの声色、トーン、ギターの音色、ドラムのビート、などなどであって歌詞じゃないのではないだろうか。
 歌詞って、音楽という聴覚に訴えかける芸術形態のうちのほんの些細な一要素でしかなくて、メロディー、リズム、音量、音色、音の厚みなどの音響的な要素が楽曲の本体であり、それをいかに捉えて描写できるかが重要なのだと思います。それに加えてライブであれば、演者のライブパフォーマンス、観客の盛り上がり、音響、照明、臨場感とか、そういった環境要因も大事でしょう。
 それに加えて上記引用で上手いと思ったのが、ボーカルの言語化できない独特の雰囲気を、蓮の花と蛾(芋虫)の比喩で表現したところ。蓮の清浄さと蛾の毒々しさ(そして芋虫のまま羽化するすべを知らない鬱屈)の二面性を併せ持ったボーカルのイメージが詩的な比喩で的確にあらわされている。なんていうか、音楽って文学と違って、言語を介さずに人間を直接感動させることができるので、あれに小説表現で対抗するとなると音楽そのものの描写に加えて比喩や詩的技法を借りてくる必要があるのかなと感じます。
 そうでもしないと、小説はページから音が出ない以上音楽には永久に勝てなくて、いくら歌詞やメロディーを丁寧に記述したところで、ほんものの音楽の劣化コピーのさらに劣化版程度のものしか表現できないのではないか。そんな気がします。

カテゴリー : 文章・描写 スレッド: 作品内にライブ場面を出すような場合について

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