第4研究室 創作に関するQ&A 15P | トップへ戻る |
秋夜満月さんからの質問  
 ライトノベルにおける性描写の許容範囲。
(研究所の掲示板に書き込まれた文章を修正して転載しました)

 このサイトにお世話になりっぱなしの秋夜満月です。
 今回、質問させていただく内容なのですが、
 賛否両論分かれるであろう「ライトノベルにおける性的描写」のことです。
 実は今、自分が書いている作品の中で、実験的に主人公とヒロインが結ばれるシーンを書いてみました。 いや、もちろん言葉通りの意味です。ちなみに……
 
 「本当にいいの?」
 「うん、貴方とだから」
 僕らは、その日初めて同じベットで一夜を共にした。
          ・
          ・
          ・
 「おはよ」
 耳朶をくすぐる、その甘い囁き声で僕は眼を覚ます。
 すぐ隣には、悪戯っぽい表情で僕を見つめる彼女の横顔があった。
 
 ……などという、ボカシは一切ありません!
 非常に具体的に描いております。
 いわゆるA→B→Cの三段スライド方式で。
 文字数で言うと千字ぐらいでしょうか。(書き込みすぎですかね?)
 自分も基本的に、キスまでしか許せない人間でした。
 が、昨今の少女マンガなどは非常に進んでいる話も耳にしますし、
 (秋夜の知識は「赤ずきんチャチャ」あたりで打ち止めです)
 ライトノベルの世界でも『デビル17』など、はっきりとセックスシーンを描いている作品もあります。
 不快感を感じる読者の方が減りつつあるのか、
 それとも単に尖った個性で突き進んでおられるのか。
 ともかく性的描写の許容範囲というものを知りたくなり、質問させていただきました。
 ぜひ皆様の意見をお聞かせください。特に女性の方の意見をお待ちしております。


●答え●

 暴力描写や性描写は、人の興味を惹きつけるための強力なエッセンスです。
 同時に、時と場合によっては不快感を感じるものでもあります。 

 特に、ストーリー展開上必要もないのに性描写を入っていたりすると白けますね。
 エッチなシーンを入れることで読者の興味を引こうとする、
 作り手側の安易な戦略が透けて見えるからです。

 また、自分の好きなキャラクターが、
 誰かと性的関係を持ってしまうのが許せないという気持ちもありますね。
 「俺の○○ちゃんに、なんてコトを!?」 という感じです(笑)。

  時代の移り変わりと共に、性に対する認識も変わってきますから、
 一概に性描写はダメ、これ以上濃厚なエッチシーンは禁止という線引きはできません。
 性描写を入れることが作品の展開上、避けて通れないことならばやっても良いでしょう。

 でもライトノベルはあくまで中高生向けの小説ですから、
 性描写ななるべく避けた方が無難だと思います。


 エッチシーンが読みたいのであれば、官能小説を手に取れば良いのです。
 ライトノベルは20代の読者層も多いですが、基本的には中高生向けの小説です。
 そこに官能小説みたいな濃厚な性描写が入ってくると、
 読者としてはダマされたような気分になるでしょう。


野々宮さんからの意見 
 野々宮と申します。
 非常に単純な答えで申し訳ありませんが、

 「ストーリーの展開上、必要であれば具体的に描くべきだし、必要なければ省けばよい」

 ということではないでしょうか。
 性的描写の許容範囲に関しては、本当に人それぞれでしょうから、
 あまり気にしてもしょうがないと思います。
 それよりも重要なのは、「そのシーンがストーリーの面白さに貢献しているかどうか」ということです。

 そのシーンを省いてみて、
 ストーリーの面白さに変化がないようであれば、省いたほうが無難でしょう。
 性的描写を嫌う方もそれなりにいらっしゃるでしょうから。

 でも、そのシーンがストーリーを盛り上げるために是非とも必要なものであれば、
 躊躇せずに描ききるべきだと思います。
 「すべては面白さのために」です。


柊 木冬さんからの意見 
 こんばんは。
 現在進行形で性描写のある小説を書いております柊です。

 私も「表現のために必要であれば別に構わない」というほうです。
 最近の十代進んでますし……

 でも描写方法にもよりますよね。
 あからさまに扇情的に描く手法もあるでしょうし、さらっと流しちゃうケースもあると思います。
 個人的な意見としては、具体的に描くだけなら構わないけれど、
 あんまりその、ムラムラくるような(どういう表現だよおい)書き方はして欲しくないですね。
 できれば『さらり』に近い書き方をしてほしい。
 実際秋夜さんの文面を見るに、性欲を煽る目的で書くシーンではなさそうですしね。

 だって、えっちな小説が読みたいのならライトノベルじゃなくて、
 駅の売店にでも売ってるエロ小説でも読めばいいわけですし。

 性描写自体は問題ないですが、
 あくまで表現上のツールとして扱うことを忘れてほしくはないものです。


 例を挙げるなら菊池秀行の、題名は忘れましたが秋せつらが出て来るシリーズ。
 女性が悪漢に暴行されるシーンがしょっちゅう登場するんですけど、
 あそこまでいくと私はちょっと駄目です。もう読めない……


みつきさんからの意見(女性) 
 こんにちは。
 特に女性の方の意見をお待ちしております。
 と有りましたので、それならばと意見を。

 ライトノベルでの性描写についてですが、
 あまり露骨な描写があるものは個人的に好きではありません。


 自分が女性だからなのかもしれませんが、物語の中に生々しい性描写があると、
 ライトノベル特有の楽しさとか、それまでの心の交流とか、
 スリリングで面白かった出来事などが全部帳消しになってしまうような、
 虚しい気持ちにさせられてしまうんですよね。
 「結局はそれかい」と、冷めた気持ちになってしまうというか。

 性描写をするならば、そこに至るまでの心の動きを踏まえたうえでさらっと書くに留め、
 感情的・叙情的な部分中心に表現してあるほうが、読んでいてホッとします。

 女性向けのBL小説などで性描写が露骨なのは、それが望まれているジャンルだからですね。
 つまり、BLは女性向けのポルノ小説なんです。


 なので、そんなことを期待していないのに、
 BLレベルの性描写を異性・同性間問わず普通のラノベでやられたら、
 私の心の海岸線からは、一キロぐらい潮が引いていくこと請け合いです。

「私は別に、ポルノが読みたくてこれを買ったわけじゃないんだけど。
 なのに、なんでこんなことまで読まされなきゃいけないわけ?」

 と、それまでの内容がとても面白くても、ものすごーくがっかりさせられてしまいます。
 なんというか、露骨な性描写が不快とか嫌悪感があるというよりは、
 ほんとうに『あ〜あ、がっかり』って感じなんですよね。
 その性描写がストーリーに何の関係も影響もなく、
 ただ作者が書きたいだけなんでしょ、ってのが見えるとダメなのかも知れません。


 以上、一人の女性からの意見でした。


 で、ここからは蛇足ですが。
 少女漫画では最近、一部で性描写の過激なものが見られるようになりましたが、
 すべての少女漫画ユーザーがそれを喜んでいるわけではありません。
 大半は苦い目で見ています。

 確かに、バブル期のレディコミにも過激なものは多々ありましたが、あれは『大人の女性』がターゲットであり、読み手は成熟した成年で、自分で情報を選択することが出来ました。
 ところが、今の少女漫画の過激な性描写については、まだ性の入り口に立ったばかりの子供の興味をいたずらに煽って、ただ雑誌の売上げを伸ばすためだけに掲載されているとしか言いようがありません。
 性に興味を持ち始める時期にそういうものがすぐ手近にあったら、不快感を持っているのかいないのか、自分でも分からないまま、好奇心に引かれて読んでしまうのは当然ですよね。

 しかも扱っている題材が、レイプや望まない行為を強要されるという、わざわざ女性の尊厳や意志を奪うような書き方をして、ストーリー上のスリルを創り出そうとしているものが大半です。
 『良識ある大人の女性である』と自負している私としては、これを本気で(女子男子の別なく)小中学生に読ませる気なのか、読ませたいと思っているのか、と書き手と編集者の倫理観というものを疑ってしまいます。

 『少女が読む漫画雑誌にレイプなどの過激な性描写のある漫画が掲載されている』
 という現状だけを見て、
 『女性のほうが性的に成熟するのが早いから、そういうものを女子小中学生が好んで読むのだ』、
 という考え方をするのは、大人として是非やめていただきたいです。
 彼女たちは、大人たちの都合によって好奇心を利用され、
 質の悪いポルノ作品を『読まされている』だけに過ぎないのですから。


不空さんからの意見  
 こんにちは。男でスミマセン(汗
 私は、エッチな場面はなるべく省略してほしいと思っております。

 私の最も尊敬するファンタジーに、「真実の剣」 というシリーズがあります。
 非常に心情描写が細かく、キャラクターも魅力的な傑作です。
 私が小説を書きはじめるきっかけとなった作品です。

 しかし、大人向けの小説という事もあってか、所々に性描写がでてくるのです。
 効果的に使われている部分もあるのですが、
 明らかに作者の趣味だと思われる箇所もたくさんあります。

 困るのは、あれだけすばらしい作品だから他の誰かにも推薦したいのに、そのような部分があるばかりにはばかられるということです。
 特に異性の友達などに、その部分がなかったら紹介したいのに、と何度も感じました。

 心情的(内面的)に主人公達が成長するきっかけとなる場面なら必要かもしれませんが、できるだけ避けてもらいたいものです。


峰しずくさんからの意見 
 小説としては、富島健夫さんの作品が参考になるのではないでしょうか?
 少女小説家ともジュニア小説家とも官能小説家とも呼ばれている方で、
 現在はなくなられていますが、まだまだ作品は手に入るはずです。

 あと、マンガですが、大人気の「NANA」の性描写は役に立つと思います。
 なんと、首を絞めてイク、なんてシーンがさりげなく登場します。
 クッキー掲載ですから、りぼんより読者年齢が高いとはいえ、びっくりしました。
 読者層による表現の違いを研究するなら、同じ作者の「ご近所物語」(りぼん掲載)と、
 その続編である「パラダイスキス」(「Zipper」掲載。「りぼん」より読者年齢層が高い)
 の違いなどが参考になると思います。


ricoさんからの意見 
 20代前半男性、ricoです。

 結論から言えば、よほどの必然性がなければよしたほうがいいのではと思います。
 以下理由です。

●苦手な人がいる
 僕もそうですが、その種の表現がどうも苦手な人というのは、男女問わずある程度存在しています。はじめからそうした人に受け入れられないことがわかっているため、わざわざ読者を限定することになります。
 したがって性描写を盛り込む際は、苦手な人が読まずに済むために、読む前にそうとわかるようにしておく必要があります。発表者にはその責任があると言ってもいいでしょう。

●不意打ちはまずい
 事前の断りが必要な理由がもう1つ。苦手でない人でも、いきなり遭遇すればびっくりするからです。
 18禁ではないと思っていた小説やAVGでいきなり18禁シーンが始まったら、たとえ好きな人でも面食らうでしょう。
 しかし……

●ライトノベルは10代の少年少女向けの読み物である
 「この小説は18禁シーンを含んでいます」と誠実に表示したとすれば、その作品はライトノベルとは思ってもらえないかもしれません。
 所長様もおっしゃっていますが、ライトノベルは中高生が読む(と、少なくとも認知されている)ものです。また、読む側もそれを承知して手に取ります。出版社ももちろん、そのつもりで出しています。
 実際のところ、ライトノベルはもっと小さな子供でも読めてしまうわけです。読まれてしまう可能性があるわけです。そうした配慮も必要ではないでしょうか。

●読者はヒロインを寝取られている
 小説を読み進め、読者はヒロインに好感を持っています。そうなるように書いてあるべきです。
 このとき読者は(嫌らしい表現ですが)ヒロインを自分のもののように思っています。
 もちろん彼女が本の中の存在にすぎず、自分とは関係がないことは百も承知です。
 でも彼女は読者自身のものなのです。
 読者の頭の中で動き回り、話をし、冒険をしてきたのですから。
 小説というメディアが「文章」と「読者」の相互作用によって成立する以上、これは当然のことです。

 そのヒロインが作中の何者かに手込めにされてしまうというのは読者にとって大きなショックです。

 どんなに共感できる主人公であっても、しょせんは他の男なのです。

●アングラなイメージが流布している
 芸術表現の世界はもちろん例外ではありますが、一般的に性の問題は恥ずかしいこととされ、おおっぴらにしにくい風潮があります。また、汚い欲望のイメージも付与されています。
 こうした負の印象を否応無しに背負わなければならなくなります。

●エロは究極のマンネリである
 エンターテインメント小説を読む大きな動機は先が気になるからだと思います。
 性行為は人類(その祖先も含め)が生まれた頃から続けてきた営みで、結末はいくつも用意されていません。この先どうなるのか楽しみで夢中でページをめくる緊張感は得られないのです。
 奇抜な題材をとることもできません。普遍的なだけに昔から膨大な表現の蓄積があるため、独創的な表現というのも難しいでしょう。

 不利な点はこんなにあります。
 それを承知で「多くの人は認めてくれないかもしれないが、俺は自分が書きたいものを書くんだ!」とおっしゃるのなら、その信念を僕は尊敬します。
 そうした強い意志のもとに編まれた作品は、人気者にはならなくても、どこかの誰かの心に深い感動を巻き起こすかもしれません。

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聖さんからの質問  
 現実離れした設定はダメなの?
(研究所の掲示板に書き込まれた文章を修正して転載しました)

 個人の某サイトの評論で「現実離れした設定は如何なモノか」とありました。
 内容をよく読んでみるとほぼ私が書いている作品の事を指しているのです。
 上手く説明が出来ないのは悔しいですが、私としては全く違うジャンルの人にそのような事を言われたくない、と言うことです。
 その評論を書いた人はファンタジーを書いているようなのですが、私から言わせると、じゃぁ、フアンタジーだったら現実離れしていてもいいのか、と言いたいのです。
 私としてもその話を書くに当たり、可能な限り調べました。
 調べた上で、実際のものは可能な限り彎曲せず作品の設定として脚色して書き上げました。
 それを現実離れしている言われたら、非常に不愉快です。
 「踊る大捜査線」や「はぐれ刑事」はほぼ事実通りの刑事ドラマだと思います。
 それに対して「ルパン三世」「西部警察」「富豪刑事」は現実離れした刑事ドラマと言えると思います。
 でも、これはこれで楽しいではないでしょうか。
 その人に反論したかったのですが、一方的な投稿だったので不可能でした。

 上記とは別に最近他のサイトでの感想にその当たりを指摘され意味もなく可成り凹んでいます。
 何故だろう(笑)


●答え●

 
現実離れした設定を否定するとは、すごい暴論ですね。

 現実離れした設定がタブーだというのなら、
 現在、世の中に発表されているゲーム、アニメ、マンガ、小説、映画、といった作品、
 ほとんどすべてが駄作だということになってしまいます。
 
 ライトノベルで現実世界そのままの世界観の作品など、
 逆に見つけるのが大変なのではないでしょうか?

 そもそも小説の醍醐味とは、仮想世界を楽しむことです。
 その仮想世界が、現実世界とまったく同じだったら、興ざめしてしまうでしょう。
 
 おそらく、某サイトの人というのは、リアリティのない小説を批判したのだと思います。
 例えば、誰でも簡単に回復魔法が使えて、手軽に怪我や病気が治せるのに、
 現実世界同様の医療技術を身につけた医者という職業があったり。
 誰でも簡単に空が飛べて、制空権争い、対空迎撃が重要な戦略となってくるのに、
 城や砦といった防衛設備が中世世界と全く同じだったりしたら、リアリティ無しの小説になります。

 現実離れした設定自体は悪くないのですが、そこにはリアリティが伴わないとダメなのですね。


F軍曹さんからの意見
 同じく小説家を目指す者として看過出来ぬ話題だと思いましたので、書き込みします。

 とりあえず、その方にはアカデミー賞を総なめした「ロード・オブ・ザ・リング」を100回見てから出なおしてこいと言っておきます。
 ファンタジーであろうがなかろうが、評価されるものは評価されるのです。
 それと「踊る大捜査線」は現実離れした設定の代表格ですな。

>現実離れした設定
 これを言い出すと古今東西あらゆる作品を否定することになりますね。

 「プライベート・ライアン」という映画を御存知でしょうか?
 最後の方にドイツ軍重戦車が街中に突入してくるシーンがあるのですが、
 あれは軍事知識がある者が見ると「ありえねー」と思います。


 なぜなら、「歩兵の護衛なしで戦車は街中に入るな」と、ちゃんとドイツ軍の戦車運用マニュアルに書いてあるからです。特にあのティーガー重戦車は、文字通りドイツ軍虎の子の貴重な戦車で、扱いには慎重に慎重を期していました。
 ノコノコと、戦車にとって不利な市街地に入るわけがないのです。
 しかも、戦車の操縦席にはちゃんと防弾ガラスがあって、拳銃程度では貫通できません。
 劇中では兵士が内部に向けて発砲しています。
 この点から言いますと、
 プライベートライアンは血も内蔵も飛び散る真実味溢れる戦争映画という体裁を取りつつ、
 実は「現実離れした設定を用いている」ということになります。


 もう一つの代表例が、「坂の上の雲」という、司馬遼太朗氏の作品です。
 1904年に勃発した日露戦争を描いた歴史大作として知られています。
 この第三巻は、空前の戦死者を出した「旅順要塞攻防戦」がメインとなっています。
 司馬氏は、「大量の戦死者を出した司令官乃木は無能である」と断定しています。
 しかし、司馬氏は資料をかなり読み落としており、事実とかなり異なる推測を元に物語を展開しています。これも「現実離れした設定を用いている」と指摘してよい作品でしょう。
 
 問題なのは、世界観がファンタジーか否か、設定が現実味があるかどうかではなく、
 人間の行動が真実に迫っているか否かと思われます。


 もちろん、世界観にはいりこめるか否か、もある程度の要素に含まれまると思いますが。

 「坂の上の雲」が誤った事実を元に書かれながらも多くの人々を惹き付けたのは、乃木や児玉の人間描写が非常に優れていた為です。
 「指輪物語」が人々の間に語りつがれる傑作になったのも、世界観の力だけではなく、虚構の世界の中で活躍する登場人物達が魅力的だからでしょう。
 自分は、フロドを励ますサムの台詞を読む度に涙が出そうになります。

 小説家を目指す我々としては、設定はいくらでも虚構を積み上げましょう

 物語の為なら現実世界も180度曲げましょう。
 日本を陰陽術国家にしたり、中学生が殺し合いをする国家にもしちゃいましょう。
 ただし、人間の姿は真実を描かなくてはならないと思うのです。
 真実といっても大仰なものではなく、それこそ日常のちょっとした心の触れ合いから、青年達の恋愛、未来への不安、組織人の苦悩、人間のことなら全てあてはまります。
 「虚構の世界の中で、いかに人間の真実を描くか」が、小説家(というよりクリエーター)の手腕が問われるところだと思います。

 では、互いの健闘を祈って。


Triple-Iさんからの意見
>「踊る大捜査線」や「はぐれ刑事」はほぼ事実通りの刑事ドラマ

 いや、アレを「事実どおり」とか言われると、
 本当の刑事さんはほぼ百パーセント怒り狂うと思うんですが……。

 そんな与太はさておき。
 『現実離れした設定』については、ほぼF軍曹さんと同じ考えです。

 問題は、『いかに現実離れした設定を現実っぽく見せるか』だと思います。

 そこで、聖さんに是非知ってもらいたい言葉があります。
 これは、僕が尊敬している作家である、夢枕獏先生が言っていたものなのですが、

「ファンタジーを支えるのがリアリティーである」

 という思想です。
 小説はどんなにリアリズムに徹しようが、所詮は虚構です。
 現実には決してありえないことです。
 どんな現実的な設定を用いても、どうせフィクションなのです。
 ですが、そこに、現実味溢れる心理の動きや感覚を感じさせなければ駄目だ、という事です。
 僕個人としては、現実に縛られて矮小な作品を作るより、設定に矛盾さえなければどんどん虚構を織り交ぜ、虚構自体を作り出していけばいいと思います。


宮原聖さんからの意見
 こんにちは〜。
 同名(?)の物書きひじりんです(笑

 さて、「現実離れした設定」とのことですが……
 ラノベの大半は、現実離れしてません?
 登場人物の性格、思考、行動、そして作品世界の設置などなど……
 ほとんどは現実的ではないと思います。
 ですので、現実的であるかないかは、正直ラノベにはあんまり関係ないんじゃないでしょうか?

 ただ、ここで問題となってくるのが、「説得力」というものです。

 異世界ファンタジーでもなく、仮想世界色のない、現実的な作品で、突如途方もない設定を出されるとしらけます。
「なんなの、この無茶な設定は……」という感じにです。
 ですが、その設定に二重三重の緻密な理由付けをして「説得力」を生み出していけば、どんな無茶な設定であろうと「まあ、納得できるかな」という感じになります。
 つまり、わたし的に言ってみれば、現実的であろうと現実味がなかろうと、すべては「説得力次第」です。

 いくら現実的でも、
 何の説明もなしにポンポン設定を出されては、読み手に受け入れてはもらえません。


 例えば「高校生の主人公がタレント」ということも、現実的にはありますよね。
 ですが、わたしたち一般人にそういう経験はないわけですし、そういう主人公の視点がどういったものかもわかりません。
 すると、「普通ではないから、ちょっと現実離れしてる」という考えに行き着きます。
 そういうものを、いきなりポンと出されたら、やっぱり困りますよね?
 でも、ちゃんと「子供のころからタレント志望で、オーディションを受けて今年からタレントとして活動を〜」とわかりやすく設定を出していけば、ある程度親しみもわきますし、「なるほど」と納得することもできます。

 ファンタジーでも、これは同じですよ。
 重厚な世界に「魔法」が出てきて、それがメインテーマなのに、「世界には魔法という術がある」という設定だけだったらしらけます。
 絵本みたいな作品だったり、ライトライトした作品だったら別なんですけどね。
「かつて、世界に魔法がなかった時代。後に魔法の父と呼ばれる大魔術師○○が、世界暦○○年に世界論理の構造を発見し、その力を引き出す術を発見した〜」とかそんな感じの設定があれば、少しぐらいわからなくても納得できませんか?

 無駄な例が多くて回りくどくなってしまいましたが、
 これは現実的とかではなく、要は説得力の問題だと思います。

 主人公が、普通ならありえない行動をとっても、何か理由をあってそれに説得力があれば、読者ってあんまり文句つけないと思うんですよね。
 かなり失礼ですが、聖さんの作品はその説得力が足りなかったのではないでしょうか?
 (よく知らないのに生意気なこと言って申し訳ありません)
 もちろん、そういうことも知らない人が批評しているという可能性もあるのですが……
 なんにせよ、他の方の批評を気にしすぎない方がいいですよ。

 気にするなっていうのも難しいですけど、
 自分に必要な批評、意見を選んで取り入れて行ったほうがいいですから。


 誰にでも受け入れられる作品なんて出来ない、ということを頭に入れておくと、
 嫌な言い方になりますが妥協できるんじゃないかと思います。

 とりあえず、いろいろあると思いますが、がんばってくださいね〜。
 同じ「聖」仲間として応援させていただきます(笑


徒喪夜さんからの意見
>「現実離れした設定は如何なモノか」
 ですが、もちろんOKですよ。
 皆さん言ってらっしゃいますが、ほとんど全ての作品を否定することになってしまいます。

 例えば、ライトノベルだと……(自分の知っている限りでは)全ての作品が、どこかしら"現実離れ"しています。
 また、内田康夫氏の作品、「浅見光彦シリーズ」 では、現実世界の現実の理論を用いた本格ミステリーです。ドラマ化もされていたりする有名な作品ですね。かかれていることには、ファンタジー要素も何も含まれていませんが、ただ一つ、
「そうそう、行く先々で殺人事件がおこるか?」
 という疑問が出てくるわけです。いささか、現実離れしていますね。刑事でもないのに。

 そして、ファンタジーと言うものでも、
 (だからこそ、)かなり勉強しておくことが大事なのではないでしょうか。
 とくに、政治や経済などは、現実世界なら、教科書にあることをそのまま引用したら済みますが、ファンタジーではそうも行きません。日本(限定はしませんが)の世界観をそのまま取り入れると、
「これは日本と同じじゃないか」 
 ということになってきます。そうすると、面白みが減ってしまいますよね。
 (あくまで自分の意見ですが)

 何も調べずに「とりあえずこうしておけばいいやー」とすると、破錠する危険性が大いにあります。
 とくに、その辺りを深く書きたいときには。


 ということは、ファンタジーでも、ある程度のリアリティが必要だ、ということですね。
 「十二国記」などは、政治方面がかなり頑張っています。

 なんだか、長々と書いてしまいましたが、あまり参考にならないかもしれません。
 まあ、聞き流してやってください。

 ではでは、徒喪夜でしたー。

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聖さんからの質問  
 ライトノベル=ファンタジー?
(研究所の掲示板に書き込まれた文章を修正して転載しました)

 「ライトノベル」は即ち「ファンタジー」というジャンルで構成されているのでしょうか?
 ネット上でも創作小説の7割はファンタジーが占めているように思えるのです(2005年2月)。
 こちらのサイトも一見、ファンタジーが多いような気がして自分の作品の投稿を躊躇っています。
 躊躇っている理由は他にも山のようにありますが(汗)


●答え●

 「ライトノベル」=「ファンタジー」ではありません。
 ライトノベルの発祥は、1980年代初頭、
 数々のSFアニメ作品を生み出した『スタジオぬえ』の創設者・高千穂 遙が執筆した、
 『クラッシャージョウ』 だと言われています(諸説の一説です)。
 この小説はアニメ化を視野に入れたイラストを使用しており、現在のライトノベルの元となりました。
 この「クラッシャージョウ」は、ファンタジーではなく従来色の強いSFです。
 他にも黎明期のライトベルは、それまでのSF小説の影響を強く受けたものが多いですね。
 
 その後、80年代後半、ゲーム・ドラゴンクエストの爆発的ヒットでファンタジーブームが到来し、
 角川書店が、ファンタジーフェアを開催。
 『ロードス島戦記』『スレイヤーズ!』といった超人気ファンタジー小説が生まれ、
 ライトノベルが世間一般に認知されるようになりました。
 このため、ライトノベルと言えば、
 ファンタジーだという先入観を多くの人が持ってしまっているのだと思います。

 ライトノベルには厳密な定義などありません。
 マンガ・アニメ調のイラストを使用している中高生向けの文庫本サイズの小説なら、
 どんなものでもライトノベルと呼ぶことができます。

 そのため、読者がライトノベルだと思っていても、作者や出版社が否定しているものもあります。

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KUROBAさんからの質問  
 平らな描写とは?
(研究所の掲示板に書き込まれた文章を修正して転載しました)

 はじめまして。KUROBAと申します。
 自分も少しだけ小説を書いたりするのですが、その中でこのようなご指摘を受けました。

>描写が平たくて、言葉が迫ってこない。

 この描写が平たいとはどういったことなのでしょうか?
 比喩表現が少ないから?景色の描写がないから?
 はたまた一人称の話だったので、主人公の心情がないから?
 そもそも「描写が平たい」とはどういったことを指すのか?
 色々と考えましたが、自分では分かりません。
 そこで皆様の意見を伺いたく、書き込みしました。
 「描写が平たい」ということについてご教授いただければ幸いです。
 これが指摘を受けた文章です。

>窓越しに彼女が手を振る。
>僕は下を向いたまま手を振る。


●答え●

 ここで言われている平らな描写とは、
 登場人物の感情、個性が伝わってこない文章のことですね。

 
>窓越しに彼女が手を振る。
>僕は下を向いたまま手を振る。

 これでは、この2人の感情がまったく伝わってきません。
 言うなれば、
「○○の攻撃、○○は5ポイントのダメージを受けた」
 というようなゲームのナレーションに近い無機質な文章です。
 こういう文章はそもそも描写とは呼びません。説明と言います。
 描写とは『物の形や状態、心に感じたことなどを、言葉によって写しあらわすこと』です。
 改善例を上げれば、

 窓越しに、彼女は人目も憚らずに力一杯手を振る。
「おーい、○○!」
 周囲の注目を浴びて、僕は俯きながら手を振り返した。

 こんな感じでしょうか。
 登場人物たちの動作や心の動き、周囲の状況などを盛り込みむと、臨場感のある文章になります。


不空さんからの意見
 こんにちは。不空と申します。
 「描写が平たい」というのは、表現が単調だということではないでしょうか。

>窓越しに彼女が手を振る。
>僕は下を向いたまま手を振る。

 この文章で、二人の行動が「手を振る」というふうに同じ書き方をされています。

 同じ表現の連続は陳腐で技量不足な印象を与えてしまいますし、
 うっぴーさんの仰るとおり人間的なものを感じさせることができません。


 別れという重要な場面で、
 それぞれの思いを適切な言葉で表すというのは小説において大切なことだと思います。

>一人称の話だったので、主人公の心情がないから?

 関係ないかもしれませんが、これについて勘違いされておられるのでは?
 一人称は主人公の描写中心の手法です。


里山俊平さんからの意見
 こんばんは。はじめまして、KUROBAさん。
 里山俊平と申します。

 さてさて、描写が平たいとのこと。
 まあ、うっぴーさんがお答えしていますので、出る幕も無さそうですが一応、念のため。
 KUROBAさんが「説明」と「描写」の違いをちゃんと理解しているかがポイントになるかもですね。

 説明はただ客観視した時の文章。そして描写は、主観が入るものです。

 神様視点でない限りは、どんな小説でも「キャラクターの目で見たモノ」が書かれます。
 例えば、ある人にとっては「蒼い空」が清々しさの象徴であっても、別の人には陰鬱さの象徴であるかもしれない。
 また同じ人物にしてみても、その時の感情によって目に入ったモノの印象が変わります。
 これをそのまま文章に起こすことで、様々な個性や感情を表すことができるわけです。
 これが「描写」という奴です。
 説明ではなくを描写する。すると「場景描写」をしただけで、それがそのまま主役の心理を表し「情景描写」へと姿を変えるわけです。
 すなわち文章に人間性が宿るのです。

>窓越しに彼女が手を振る。
>僕は下を向いたまま手を振る。

 これは描写が平たいと言うよりは、描写になっていませんね(苦笑)。説明的文章になってます。
 その場面を神様みたいに上から見下ろすのではなく、
 作者自身がそのキャラクタになって(なりきって)、その場面を見て、感じて、そして書く。

 これが僕流の描写のコツです。
 さて、以上です。少しでも参考になれば幸いです。

 追記。
 一人称でも三人称でも、人物の心情は充分に描けるので、そこのところはご注意を。

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rikuさんからの質問  
 空想世界に、実在の人物を登場させても大丈夫?

 初めての投稿です。よろしくお願いします。
 ファンタジー小説を書く上で、
 空想の世界なのに、歴史上実在した人物を登場させるというのは、大丈夫なのでしょうか?
 教えていただければ幸いです。


●答え●

 いくつか質問を受けてきて気づいたのですけど、発想に制限を加えている人が多いようですね。
 小説作法や文章作法では、破ってはならない決まり事・法則がありますが、アイディアにそんなものはありません。

 特にライトノベルは何でも有りの分野です。
 どんな常識外れの設定だろうと、おもしろければ官軍です。


 空想の世界に、実在の人物を登場させても、まったく問題ありません。
 1つ例として、ソノラマ文庫から出版されている『火星の土方歳三』 という作品を紹介しましょう。
 土方歳三というのは、幕末に活躍した新撰組の土方歳三です。
 以下、本書の解説文を抜粋。

1869年5月11日、土方歳三は箱館郊外で敵弾に倒れ、魂だけの存在となってしまう。
しかし、彼は死してなお戦いを欲し、戦える場所があれば、躊躇うことなく行ってみたいと願っていた。
そんな土方が夜空を仰ぐと、天空には欧米で戦の星とされている火星があった。
いっそ火星にでも行って、そこで再び戦いたい――そう火星に両手を差し伸べた土方の魂魄は、
軍神マルスに誘われるがごとく、一瞬にして地球と火星の間の隔たりを跳躍した――!?
これぞ土方歳三版『火星シリーズ』。

 いかがでしょうか? ハチャメチャ奇想天外でしょう?
 このように、空想世界に歴史上の人物を登場させているプロの作品が実在します。
 これは、空想冒険小説の大家エドガー・ライス・バローズが描いた『火星シリーズ』のオマージュ作品なんですけどね。なかなかおもしろいので、一度読んでみても良いでしょう。

 以前にも書いたことなのですが、
 アイディアを生み出す際に障害になるのが、私たちに染みついてしまっている常識です。
「こんなことを書いたら笑われる」
「恥ずかしい」
「常識外れではないのか?」
 といった考えは、小説家にとっては最大の敵ですね。

 発想に制限を加えていては、いつまで経っても斬新なアイディアなど浮かびません。
 常識の範囲で考えていたら、常識的な発想――陳腐なアイディアしか浮かばないのです。

 もっと、自由な発想で小説を描くようにしてください。
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