ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. 文学論・文学史
  4. ジョージ・マクドナルド公開日:2012/05/11

ライトノベルの先駆者ジョージ・マクドナルド

 ライトノベルの基礎を一番最初に築いた作家は、19世紀のスコットランドの幻想作家ジョージ・マクドナルド(1824年12月10日~1905年9月18日)だと考えられます。
 彼は児童向けファンタジーのパイオニアであり、次のように述べているからです。

「私は子供のためではなく、子供の心を持った人……5歳だろうと、15歳だろうと、75歳だろうと実年齢は関係ない……のために書くのだ」

 この言葉から19世紀においても、子供向けのファンタジーを楽しんでいた『大きなお友達』がいたことがうかがえます。この精神は、現代のライトノベル作家そのままです。

 マクドナルドは日本ではまったく知られていませんが、人間探求の手法としてファンタジーを活用し、『ナルニア国物語』(1950年刊行)のC・S・ルイスや『指輪物語』(1954年刊行)のJ・R・R・トールキンに大きな影響を与えました。

 トールキンは子供の頃、マクドナルドの作品をむさぼるように読んでいたそうです。彼の著者『指輪物語』は、日本のファンタジーブームの火付け役で、この作品からTRPGが生まれ、TRPGから『ロードス島戦記』(1988年刊行)といったファンタジーライトノベルが派生しました。

 『指輪物語』からさらにライトノベルの源流を遡れば、マクドナルドの作品に行き当たるのです。

 『ファンタステス』、『お姫様とゴブリンの物語』、『黄金の鍵』、『北風のうしろの国』といった作品がマクドナルドの代表作としてあげられます。
 トールキンは『黄金の鍵』をファンタジー童話の最高傑作と賞賛しています。
 C・S・ルイスは、『ファンタステス』を「私の想像力を回心させ、洗礼した」と絶賛しています。ルイスのマクドナルドへの傾倒ぶりはすさまじく、長編小説『天国と地獄の離婚』(1945年刊行)の中にマクドナルド本人を登場させるほどです。

 また、マクドナルドは、ルイス・キャロルの友人であり『不思議の国のアリス』(1865年刊行)の未完成原稿を読んで、この出版を手伝いました。ルイス・キャロルにこの作品の出版を決意させたのは、マクドナルドの娘の熱心な勧めによるものでした。もし、マクドナルドとの出会いがなかったら、『不思議の国のアリス』は存在しなかったかも知れないのです。児童文学界にも多大な影響を与えていると言えます。

 マクドナルドが文学の道を志したのは、18歳の頃、ドイツ・ロマン主義の作品に出会ったからだとされています。中でも後期ロマン派を代表する幻想作家E.T.A.ホフマンに影響を受けました。

 ライトノベル『“文学少女”シリーズ』(2006年刊行)のヒロイン天野遠子によると、彼の作風は次のようなものであるそうです。

 「マクドナルドの物語には、生と死、光と影が、同居しているの。ページをめくった瞬間、魔法のような言葉の連なりが、荘厳な音楽のように響いて、わたしたちの周りの風景を、夜明け前の薄桃色や夕暮れ時のセピア色に、染め変えてしまうのよ!」
“文学少女”と飢え渇く幽霊【ゴースト】より引用

 遠子先輩、絶賛していますな。もっとも、文学少女である彼女は、どんな文学作品でも絶賛レビューしていますが。
 現在のライトノベルや漫画、アニメは、似たような作品が溢れてコピーのコピーと言われるような状況になっています。この状況から脱するために『指輪物語』のさらに源流の物語を読んで、そのエッセンスを吸収してみてはいかがでしょうか?

 マクドナルド童話全集『王女とゴブリン』の訳者、村上光彦は、優れたファンタジー童話というのは、イメージの豊かさと、そこに込められた思想の深さ(作家の精神内部の絵図)があるものだと、あとがきで語っています。
 ともすれば私たちは、目新しい設定や世界観にばかり目が行ってしまいますが、そういったものが、人間を描くのに役立っていなければ、優れたファンタジーにはならないということです。

●補足
 マクドナルドは牧師をしていた経歴からか、その作風は説教臭い物という批判もあります。

    

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

意見を送る

『ライトノベルの先駆者ジョージ・マクドナルド』に対して、意見を投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索