ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. 世界観の作り方
  4. 架空技術による社会の変質を考える公開日:2013/08/21

架空技術による社会の変質を考える

 ライトノベルは、魔法や超能力、超科学が登場する架空の世界を舞台とした話が多いです。
 当然、魔法や超科学が存在する世界の常識は、私たちの常識とは異なっています。

 ライトノベルは、誰でも簡単に作れる低レベルの小説だと思っていませんか?
 もし、そう思われていたらそれは大間違いです!
 一般の小説は、現実世界を舞台にしています。
 そのため、資料集めさえキチンとしていれば、世界観作りにはそれほど悩まないのです。
 江戸時代の文化や風習、生活様式を調べれば、江戸時代の世界をリアルに再現できます。
 中世ヨーロッパの文化や風習、生活様式を調べれば、中世世界をリアルに再現できます。
 でも、ライトノベルの場合は、架空の世界を自分の頭で生み出さなければなりません。

 魔法が実在する西洋ファンタジーを書くのなら、中世の世界をそのまま再現したのではダメなのです。
 魔法を社会基盤に取り込んだ、変質した中世世界を描かなくてはなりません。

 どういうコトなのか、例を上げて解説しましょう。

●例
 ファンタジーには回復魔法というのが良く登場します。
 怪我や病気を治すことができる大変便利な魔法です。
 たいていヒロイン役となる美少女魔法使いが身につけています。
 しかも、たった2,3年ほどの軽い修行で……。
 これを踏まえた上で質問します。
 この世界に現実世界と全く同じ『医者』という職業があったら、どうでしょう?

 お医者さんは、病人や怪我人の診察をして、その人にあった治療法を何日も続けて行います。
 無論、治療の際には薬や包帯、消毒液といった医療品を消費します。
 一方、美少女ヒロインは、呪文を唱えるだけでお手軽に患者を治せてしまいます。
 競合した場合、商売として成功するのはどちらでしょう? 
 そもそも、この世界で医術が発展すると思いますか?

 回復魔法が誰でも修得ができるような簡単なモノであるのなら、医者などという職業は生まれないでしょうね。

 なにしろ、苦労して医術を身につけたとしても、その労力にあった見返りは得られないのですから……
 おそらく医者の代わりに、医療魔法士などといった職業が繁栄するでしょう。
 でも、医術と違って回復魔法を覚えるのは簡単なので、それほど尊敬される職業ではないかも知れません。

 魔法を登場させるなら、魔法を生活基盤に取り込んだ世界がいかなるものであるか、細部にわたって想像できないとリアリティが生まれません。

●例2
 例えば瞬間移動できる魔法があるとしましょう。
 これは魔法学院の中等科で教える魔法で、魔法使いの称号を得た人なら、誰でも使えるという設定です。
 これを踏まえた上で質問します。
 この世界では、中世ヨーロッパと同じように、馬車が上流階級の主要移動手段に使われているでしょうか?

 ……考えてくださいました?
 ちょっと想像力を働かせればわかると思いますが、おそらくそんなことはありえないでしょうね。

 『時は金なり』はいつの時代、世界でも同じでしょう。
 一瞬で行きたいところへ行けるような瞬間移動魔法があるのに、ソレをメインに使わないのはおかしいです。

 趣味や道楽で、馬車を使う人はいるでしょうが、大多数の貴族は、お抱えの魔法使いを雇って瞬間移動魔法を移動手段に使うでしょうね。
 そうなったら、城壁や門というものの存在意義が希薄になりますから、物理的な防衛施設より、瞬間移動を防ぐための結界技術の方が発展するでしょう。
 城壁も中世と同じモノではなく、結界を生み出すための魔法陣とか呪文とかがビッシリと描かれた、不気味なモノになるかもしれません。
 道は、馬車が通ることを想定しない道幅、舗装になるかも知れません。
 あなたはどう考えますか? いろいろ想像してみてください。

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

意見を送る

『架空技術による社会の変質を考える』に対して、意見を投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索