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  4. 『努力』『友情』『勝利』の法則公開日:2012/01/09

『努力』『友情』『勝利』の法則

 大手漫画雑誌『少年ジャンプ』が創刊してしばらく経ったとき、ジャンプの編集部は読者に「好きな言葉は何か」と尋ねるアンケートを実施したことがありました。
 その結果、

 『努力』『友情』『勝利』

 という3つのキーワードがぶっちぎりの人気票を得、以来ジャンプのマンガは必ずこの3つの要素を含むように作られているそうです。
 これは、戦後マンガ史の伝説ともなっている逸話です。
 『努力』『友情』『勝利』……なんとも男心をくすぐる言葉ではありませんか。

 実際にこの3つが相乗効果を現したとき、どれほどの力を発揮するかは、『ドラゴンボール』や『スラムダンク』などの大ヒットから容易に想像がつくでしょう。

 え? ドラゴンボールとスラムダンクを知らない?
 そんなことをおっしゃる方は、いますぐ漫画喫茶にでも行って読んでください。
 時が経つのを忘れられます。
 とりあえず、ドラえもんと並ぶ超有名漫画『ドラゴンボール』は、おそらくあなたも知っていると思うので(もし、知らなかったらごめんない)、
 この作品を使って『努力』『友情』『勝利』の法則をより詳しく説明します。

 ドラゴンボールは、主人公の孫悟空が次々に現れる敵と戦いながら、何でも願いを叶えてくれるという『ドラゴンボール』を集めるという話です。
 途中から、だいぶ様変わりしてバトル一辺倒になってしまいましたが……
 悟空はピッコロ大魔王などの強敵が現れるたびに、必ず修行して強くなり、コレを打ち破ります。
 修行にはかなり重点がおかれていて、どれだけ強くなれるのか、読んでいる方は毎回ハラハラします。

 ここに、努力と勝利の法則があります。

 次に、倒したピッコロはサイヤ人が地球侵略にやってくると、利害の一致から悟空たちの仲間になって共闘することになります。

 ここに、友情の法則があります。

 かつて死闘を繰り広げた敵が、仲間になるというシチュエーションはかなり燃えるモノです。
 さらに、悟空たちは、サイヤ人を倒した後、死んだ仲間を生き返らせるために、ナメック星のドラゴンボールを探しにいくハメになります。
 そこで宇宙の支配者フリーザと戦うことになります。
 フリーザはメチャメチャ強くて、みんな死ぬ気で努力して戦闘力を上げます。
 このとき、かつての敵だったサイヤ人のベジータは、共通の敵フリーザを倒すために協力して戦うことになります。
 フリーザ編の最後は、仲間のクリリンを殺された悟空が、友情の怒りからスーパーサイヤ人に変身してフリーザを倒します。つまり、

 『努力』『友情』『勝利』のプロセスが延々と繰り返されるわけです。

 そして、これこそが物語に緊迫感と爽快感を与える黄金のパターンなのです。
 これはマンガの話ですが、ライトノベルにも十分応用できる技です。

 「主人公は強敵に打ち勝つために努力し、友情に支えられつつ、勝利する」

 「少年漫画風の燃えるシチュエーションを目指したい」という人は、ここで解説した3要素を作品に取り入れることで、「ハズレにくい作品」にすることができるでしょう。
「少年漫画みたいな子供向けの手法を取り入れていいの?」
「テンプレートを使ってしまうとオリジナリティーが失われるのでは?」
 と心配する人もいるかもしれませんが、少年漫画には、娯楽作品を作るためのノウハウが長年にわたって蓄積されているのです。
 ここから学ばない手はありません。

●小説で重要なのは心理的葛藤

 小説において『努力』の要素は、心理的葛藤や人間ドラマと関連させることが重要です。

 例えば、ヤマグチノボルのライトノベル『ゼロの使い魔』の主人公サイトは、異世界に召喚され、伝説の魔法『虚無』の使い手である少女ルイズの使い魔になり、『どんな武器でも達人並みに使いこなせる』能力を手に入れます。
 しかし、彼はルイズと仲間を守るために、瀕死の重傷を負ったことから、使い魔としての契約がリセットされてしまい、その能力を失ってしまいます。

 サイトは、力を失った自分では、もうルイズを守ることができない、存在価値がないと悩み、彼女の前から姿を消そうとします。
 しかし、葛藤の末、銃士隊隊長アエニスに師事して、一から剣術を学ぶのです。
 ちょっと前までは、無敵の剣士だったのに、単なる初心者になってしまった彼は、体中に傷を作りながら、腕を磨きます。
 そして、ルイズのピンチに再び姿を現して、彼女を救うのです。
 サイトは努力して、好きな女の子を守れるだけの力と自信を取り戻しました。

 ここでのハイライトは、努力の風景ではなく、大変な試練に直面しての彼の精神的な葛藤と成長です。

 漫画と違い、小説では「彼は重さ100キロの岩を背負いながら、断崖絶壁を登った」というように、常識外れの特訓も一行で書けてしまうので、迫力がなく、共感しにくいです。
 漫画ならおもしろい絵になるでしょうが、小説の場合、単にキャラクターに努力をさせるのではダメです。

 小説の醍醐味とは、登場人物の心の葛藤などの心理描写や人間ドラマにこそあります。
 努力や友情などは、すべて心理的葛藤とリンクして描くようにすると、おもしろいストーリーになります。

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