ライトノベル作法研究所
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  4. 初心者は主人公いじめが足りない!公開日:2013/10/01

初心者は主人公いじめが足りない!

 これはライトノベル作家の日昌晶さんから聞いた話なのですが、
「初心者は主人公いじめが足らない!」
 のだそうです。

 とにかく主人公にはピンチに次ぐピンチ、試練に次ぐ試練を与え、「これは普通の人間だったら心が折れるだろう」「ここからの逆転は不可能だろう」と思うような状況まで追い込むことが、ストーリー制作のコツとなります。

 目的に対する「抑圧」の部分ですね。
 どうも物語が盛り上がりに欠けるという場合には、抑圧が足らない。主人公いじめが足らないのだと考えてみるのが良いです。

 主人公がトコトン苦しんだ後に、劣勢を跳ね返して目的を達成すると、その喜びは倍増し、読者が得られるカタルシスも大きくなります。

 主人公いじめの方法について手っ取り早いのは、敵を主人公陣営よりはるかに強大にすることです。
 勝てそうもない相手に勝つ過程において、おもしろさが生まれます。

 また、精神的に苦しめるのも良い方法です。
 例えば、妹と恋人のどちらの命を救うのか二者択一を迫ったり、愛する者を敵の計略によって自らの手で傷つけたり、親友に裏切られるなど、心に強烈な痛みを感じるような目に合わせるのです。
 小説は精神的な葛藤を描くのに向いているジャンルですので、精神的な主人公いじめは特に効果的となります。

 ただし、やりすぎて重い鬱展開が続くと、ライトノベルの強みである「楽しさ」「気軽さ」が損なわれてしまうので、バランスを考える必要があります。話全体が「重くなりすぎない」ように注意してください。

 2006年3月に刊行された、雨木シュウスケの人気ラノベ『鋼殻のレギオス』 第一巻のストーリーを例にあげてみましょう。

 主人公レイフォンは武術の天才で『天剣授受者』という武芸の最高位にいましたが、孤児院の資金を稼ぐために違法な賭け試合に出て、故郷を追放されます。彼はそれまで自分を英雄視していた孤児院の仲間達から冷たい態度を取られたことにショックを受け、武術をやめようとします。

 レイフォンは仲間のために自分を犠牲にして働いたのに、これが裏目に出てしまったのです。これはかなり苦しい試練ですよね。主人公イジメのお手本とも言える設定です。
 栄光の絶頂にいたのに仲間から追放される、というのは誰の心にもグサっと来る話です。

 レイフォンの目的は「新たな居場所(道)を探すこと」です。
 そのために学園都市ツェルニに入りますが、都市が存亡の危機に立っていたために、生徒会長にトラウマのある武術をするように強要されます。そして、小隊の対抗試合で実力を発揮してしまったために信頼関係を結びつつあった小隊長の少女ニーナに素性を知られ、卑怯者だと言われます。
 レイフォンは別の場所で新たな居場所(道)を探そうとしていたのに、これに失敗しそうになるのです。これが抑圧です。

 このように主人公が何かを失って、これを取り戻そうとするのは物語の王道の一つです。

 その後、彼は、昔からの唯一の味方であり、彼に想いをよせる少女リーリンから手紙をもらい、本当はレイフォンの気持ちは孤児院のみんな届いていたこと、レイフォンの行動によって孤児院が良い方向に向かっていること、自分が愛されていたことを知ります。
 これによってレイフォンは自信を取り戻し、またニーナの戦士としての強い意志にも触発され、仲間のフェリと協力して、襲ってきた汚染獣からニーナと都市を救って、学園都市の英雄になるというのが第一巻のあらすじです。

 それまで彼が精神的に苦しめられてきたからこそ、これを吹っ切ってのクライマックスのバトルや逆転劇の快感が増しているのです。

 あらすじだけ書くと、かなり重いストーリーに聞こえますが、レイフォンは冒頭でリーリンからキスされる、なぜか女の子たちから気に入られて放課後はキャハハウフフして過ごすなど、ライトノベルのお約束もしっかり守っていて、重くなりすぎないように工夫されています。

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