ライトノベル作法研究所
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  4. 貴種流離譚公開日:2012/01/31

貴種流離譚

 貴種流離譚とは、高貴な血統・身分の生まれの者が何らかの事情によって、本来属する階級から追放され、庶民の中で才覚を発揮して英雄となるという型のストーリーです。
 これは物語の王道の一つと数えられ、この形式の作品はライトノベルにもたくさんあります。

 例として、王女として生まれながら世界を滅ぼす猛毒と予言された少女がヒロインの『スクラップド・プリンセス』、王の庶子が主人公である『魔法戦士リウイ』などがあります。
 もっとも有名なのは『吸血鬼ハンターD』でしょう。

 吸血鬼ハンターDは、神祖と呼ばれる吸血鬼たちの王と人間の女性との間に生まれた混血児です。
 彼は混血でありながら、吸血鬼たちを上回る超人的な力を持ち、孤高の吸血鬼ハンターとして生きながら、父親を探して旅しています。
 Dの正体に気づいた吸血鬼の貴族が「ま、まさか、あなた様は……!」と言ったりするのが、燃え。
 彼のような魔王と人間の混血児が、人間に味方して、魔の勢力と戦うというタイプの貴種流離譚は、人気が高く、似たような設定の作品が数多くあります。
 『ハッピーエンドとバットエンド』についての項目でも少し触れましたが、

 人間は他人の悲劇を好む傾向があります。 

 王族などの高い地位にいる者が、そこから落ち、泥にまみれることに密かな快感を覚えるモノです。
 同時に、かわいそうだなぁ、という憐憫の情も芽生え、感情移入しやすくなります。
 また、悲劇的な境遇にありながらも、めげずに努力して栄光をつかむというサクセスストーリーは王道の一つであり、人々に勇気と感動を与えます。

 貴種流離譚は、この2つの要素を併せ持つが故に、使い古された設定ながらも、支持され続けるのです。

 本来、高い身分にあった者、高い階級に属せる資格を持った者が、不運にも栄光の座から転落するという悲劇。
 しかし、腐ることなく努力し、徐々に才覚を発揮して、成功していく……
 というのがこの型のミソです。

 貴種流離譚は、物語序盤から登場人物(主人公)が“貴種”であることが示されるものもあれば、途中で「実は……」といった形で明らかになることもあります。
 結末としては、本来の身分に返り咲くというパターンもあれば、自力で新たな栄光を勝ち取る場合もあります。

 ただし、構造的な欠点として、「血統の優れた者が結局、勝つのか……」と感じ取って嫌う人もいます。

●補足例
 日本昔話の『竹取物語』も貴種流離譚の一つ。
 高貴な月の住人である「かぐや姫」が地上で生活して修行してきます。

 ライトノベル『ゼロの使い魔』に登場するタバサというキャラクターも貴種流離譚の流れを組んでいます。
 彼女は、本来、王女の身分でありながら、王である父を叔父に殺されたことにより、半ば身分をはく奪され、危険な任務に従事させられます。
 王位を奪った叔父は、厄介者の彼女が任務中の事故で死んでくれることを期待しているのですね。
 しかし、タバサは生まれ持った魔法の才能と機転でピンチを毎回切り抜け、自らを鍛えながら、反逆の時を待っています。
 彼女をいじめる従姉妹のお姫様とかも登場して、タバサちゃん健気でかわいそう!(だが、そこが萌えか) 

ナザレ記狸子さんの意見2012/01/30

 傲慢だったゆえに地位を落とされた者がやがて改心して、地位を再び上り詰めるというパターンもあります。

 グリム童話の『つぐみひげの王さま』です。
 傲慢でわがままな姫が結婚を申し込みに来た王子を見て「あの人の顎はとがっていてつぐみみたい」といいます。それからその王子は「つぐみひげの王さま」と呼ばれるようになります。
 それに怒った姫の父王は、娘を貧しい芸人と結婚させてお城を追い出してしまいます。
 姫は途中で通りがかった大きな森や草原、大きな町もつぐみひげの王さまのものだと知り、あの時結婚を断った事を後悔します。
 それから姫は慣れない家事などに戸惑いながらも芸人と一緒に乗り切って行きます。
 やがて、お城で女中として働く事になり、お城の台所でつぐみひげの王さまと再会します。姫はつぐみひげの王さまがあの芸人と同じ人物であった事を知り、自分の間違いに気づきます。
 そして、姫はつぐみひげの王さまとの結婚を父王や家来、他のみんなから祝福されます。

 貴種流離譚のうちに入るかどうかわかりませんが、何かの参考になれば幸いです。

香奈さんの意見2012/01/31

 貴種流離譚について、それをなぞったような小説を読みましたので参考にしていただければと思います。
 どちらかというと、この小説は血統が優れた者が勝つ、という訳ではないんです。

 ボーカロイドの曲から生まれた小説ですが、『悪ノ娘』 というものがあります。
 14歳の王女様リリアンヌは「黄ノ国」を治めていました。ですが彼女は傲慢で、愛する人への嫉妬心故に他国を滅ぼしてしまうほどです。
 もちろんそんな王女様に対して国民の不満は募り、とうとう彼女は革命により処刑されてしまいます。

 ここまでは普通の話ですが、実は処刑されたのはリリアンヌではなかったのです。
 リリアンヌには(彼女自身には記憶はありませんが)アレンという双子の弟がいました。

 このアレンが貴種流離譚の流れを組んでいまして、彼は双子の姉であるリリアンヌに召使として仕えます。
 元はちゃんとした王子様だったのですが、政治混乱に巻き込まれたのです。

 そしてアレンは、革命によって危険に晒されたリリアンヌを逃がし、彼女の代わりに自分が処刑されるという運命を辿ります。

 このアレンは最後まで報われません。ただ双子の姉と共にいられたことが幸せだったのです。
 最後まで報われない貴種流離譚もあるということで、紹介させていただきました。

 この小説は他にもいろいろな要素を含んでいます。
 七つの大罪の悪魔だとか、そんな感じの。そっちに関してもとても面白いと思います。

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