ライトノベル作法研究所
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  4. 視点移動のタブー公開日:2013/08/26

視点移動のタブー

 小説の視点となる人物を決めたら、その人物が心の中で思ったこと、目で見たこと以外は書いてはいけません。

 「おや、どうして?」と、あなたは首をかしげるかもしれません。
 マンガなどでは、視点となっているキャラクター以外の心情が、当然のように吹き出しで書かれていますものね。
 しかし、同じ娯楽媒体でもマンガやアニメと小説は決定的に違います。
 時点移動でも説明しましたが、小説は文字だけで構成されている娯楽媒体です。
 マンガやアニメと違って、読者は内容を理解するのにかなりの労力を必要とします。
 その労力を倍増させるようなことをするのは自殺行為なのです。

 視点として定めた人物以外の心情描写をしてはいけません。

 これは視点移動のタブーと呼ばれ、プロの世界では常識です。
 例えば、あなたに好きな相手がいたとします。とりあえず、片思いということにしましょう。 
 その人があなたをどう思っているのかは、当然のことながら、わかりませんよね。
 これは小説の世界でも同じです。
 もちろん、主人公が超能力者で、他人の考えが読めるというのなら別ですが……。
 例を上げてみましょう。

 触れ合った手の平から大介の温もりが伝わってくる。
 美佳の心臓は破裂せんばかりに脈打ち、頭の中が真っ白になった。
「どうしたんだ? 顔が赤いぞ」 
 心配そうな声が降ってくる。
 はっと、顔を上げれば大介の顔が息がかかりそうなくらい近くにあった。
「な、な、な、なんでもない……」
 美佳はしどろもどろになりながら、俯く。
(おかしな娘だな……)
 彼女の手を引きながら、大介は内心、首を捻った。

 上の文は途中で視点が美佳から大介に移っています。
 視点となっている人物に感情移入しながら読んでいたのに、そこに別の人間の視点が入り込むと、読者はその人物の感情を追うことを強制的に中断させられます。
 これはストレスを生みます。
 さらに、これが何度も続くと、視点が混乱し、誰の視点で物語が進んでいるのか、わかりにくくなります。

 主人公の心情だと思っていたのが、実は別の人物の心情だったなんて誤解が生まれてくるのです。

 こんなことが続くと、読者はイライラしてきて、読むのをやめてしまうでしょう。
 一人称の場合なら、視点が固定されているので、この罠に陥る危険性は低いですが、三人称の場合だとついうっかり視点に定めた人物以外の視点が混じってしまうことがあるので、気を付けましょう。

 だだし、章や場面が変わった際に、別の人間に視点が変わるのは有効です。

 あくまで、一続きのシーンの中で、視点が切り替わるのがいけないのです。
 1章は主人公、2章はヒロインの視点で描くというのであれば問題ありません。
 ただ、あまりやりすぎると主人公が誰だかわからなくなるので、ほどほどに。

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