どのようにすれば効率よく作家の技術を吸収できるのでしょうか?
作家の林望さんは、その著書『「芸術力」の磨き方』において、このように述べています。
p214「三人の文体アイドル」より引用。
その後も、私の文章修行というのは、「臨模」が中心でした。
これは大半の物書きがそうだと思いますが、師匠がいないので、誰かの文章を真似ることが必要になるんです。
私の文体は、森鴎外、伊丹十三、北杜夫の三人がいわば憧れの文体アイドルで、彼らの文章をお手本にしてきました。
「芸術力」の磨き方・林望
「三人の作家を師匠と定めて、彼らの文章を模写して勉強する」
という手法の有効性は、他の作家も述べています。
1人の作家の作品をマネすることは、あなたをゴーストライターにしてしまう危険があります。
マンガの世界でも、勉強のためにプロの作品を模写し続けたら、その先生そっくりの絵しか描けなくなってしたという事例が多々あります。
つまり文章的なオリジナリティ、独自色といったものを潰しかねない……
でも三人の作家から同時に学べば、それぞれの作家の長所を取り込むことができ、自分独自の文体を築く基礎を作ることができるのです。
模写するのは大変、時間がない、根気が続かないと言う方は、次のことをだけでもしてください。
1:
本を読んでいて、わからない言葉や言い回しが出てきたら辞書で調べる。
そして、メモ帳に書き写す。
2:
いいなぁ。と思う比喩や表現、描写がでてきたら、同じくメモ帳に書き写す。
これはうまい。これは知らなかったという語彙や表現を書いて覚えるのです。
書くというアウトプット作業を脳にさせることによって、知識を定着させやすくできます。
語彙と表現力は小説家の財産です。
これが脳内にインプットされていないと、どんなすばらしいアイディアを持っていても 具現化させることができないので、宝の持ち腐れとなります。
最近では、知識より創造力や思考力の方が大切だ、という風潮が、世の中に蔓延してきていますがこれは間違いです。
知識あっての知性です。
知識とは思考の材料であり、これがなければ、考えることがまずできません。
考えることができなければ、そこから独創的な発想のセリフや描写など生まれるわけが ないのです。
一例をあげてみましょう。
●例1
森の中に馬の走る音が響く。
●例2
大地を叩く馬蹄の音が、森の静寂を破る。
例1の方は、誰でも書ける文章でしょうが、例2の方は、ちょっと高度です。
馬の足の先を馬蹄と呼ぶ知識がなかったら、馬蹄という表現は当然、浮かんできません。
著者の表現力があるかないかで、小説のおもしろさは格段に変わってきます。
その場の情景をよりリアルに、迫力ある映像を伴ってイメージできるだけでなく、文章を読むこと自体に心地よさを感じられるからです。
語彙が豊富になれば、作品の雰囲気、対象読者層に合わせて、言葉を取捨選択することもできるようになります。
●補足
珍しい言葉を覚えると、ついつい調子に乗って使ってしまいがちです。
語彙が豊富であるのは良いことなのですが、聞きなれない難しい漢字や横文字を使うと、読者に意味が通じず、独りよがりな作品になることがあります。
特に難しい漢字は読者を選ぶので、なるべ くわかりやすい言葉を使うようにしましょう。
本当に文章力がある人は、難しいことをやさしい言葉でわかりやすく伝えられる人です。
文章力が無い人ほど、難解な言葉で、意味不明な文章を作ります。
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