瀬々良木ゆーとさん著作
ジャンル: ミステリ
「痛みも苦しみもなく死ねるというのは本当なんでしょうね」
「ええ、本当ですよ。だてに自殺請負人を名乗っているわけではありません」
一組の男女がカフェテラスで向かい合い座っている。
女が自殺請負人の存在を知ったのはインターネットで自殺方法を検討していたときだ。内向的な性格から友人と呼べる人間もできることなく生きてきた32年間。両親も幼いときに他界し、生きる目的のない人生にピリオドを打ちたいと考えていたころだった。
死にたい――というよりは、生きたくない、と言った方が正しい。そんな彼女は、わずかでも痛みや苦しみを感じることを嫌っていた。
「もっとも苦しい死に方は餓死だと言われています」
機械のような冷めた声にビクリと顔をあげる。
「口内、食道、胃、小腸、大腸。それらすべてに異常をきたし、自らが体内で作りだす消化液によってそれぞれの器官が溶かされていく苦しみ。それはもう想像を絶するそうですよ。胃は溶けだすと黒く変色し異臭を放ちます。息をはくときにその匂いを自分で嗅ぐことになるわけですが、それがあまりに強烈なため体内のモノが逆流してくるそうです。しかし吐き出されるものは溶かされた胃の表皮だけ。当然です。なにも食べていないのですから」
女は顔面蒼白になり、ひざに置いた手は小刻みにふるえだした。
「次は焼死。煙などを吸いこんで気絶しているのなら別ですが、もし意識があるまま体を燃やされた場合、全身のいたる皮膚が焼けただれる猛烈な痛みと苦しみに襲われます。知っていますか? 焼死というのは誰かを呪って死にたい人間にとってはもっともポピュラーな自殺方法らしいですよ。あまりに壮絶な最期をとげるため、あの世にいくことも叶わず魂が現世に残ると信じられているからだそうです」
「……わ、わかっているわそんなこと! わたしもいろいろ、調べたから……」
うっすらと笑みを浮かべながら話す男から感じる底知れぬ恐怖をふりはらうように、女は強い口調で割り入った。
すると男はにっこりと花がひらくように笑った。
「大丈夫です。私の考案した自殺方法はそれらとはまったく逆ですから。痛みや苦しみを感じないどころか、金曜日の夜お風呂あがりにゆったりとくつろぎながら借りてきたDVDで映画を見ているときのような、安らかな気分で逝くことができますよ」
さきほどまで余計に緊張が高まっていたからだろうか、女は男の言葉を聞いて安堵した。
一息つこうとタバコに火をつける。
「お金はすべて渡すわ。だからはやく説明してちょうだい」
男は落ち着き払った動作でバッグからビンを取りだしてテーブルに置いた。市販のモノよりはすこしだけ大きいようだが、見たところ高級な芳香剤のようだった。
「これを自室で開封してください。ただし、通常の芳香剤より効果範囲がせまいですから、ドアや窓はしっかりと閉めてくださいね」
女はすぐにピンときた。
「……毒ね」
毒。女は当然、さまざまな毒死も検討した。しかし苦しみを伴わない方法など見つけられなかったため、いぶかしんで男を見やった。
「いいえ、たんなる芳香剤ですよ。ほら」
男が未開封のビンを近づけてくる。警戒しつつも匂いを嗅ぐと、たしかにうっすらと甘い香りが感じとれた。
「どういうこと?」
「それは死んでからのお楽しみということで」
男はまたにっこりと笑った。
女はタバコを灰皿に押しつけて、ずっと疑問に思っていたことを訊いた。
「保証は?」
「はい?」
「痛みも苦しみもなく死ねるという保証はどこにあるの?」
「保証、ですか」
「当然の質問でしょ。もしあなたへ依頼した人間全員が死んだのだとしたら、それが本当に痛くも苦しくもなかったかなんて証言させることはできないじゃない」
男は首を傾げてうーんとうなる。
「すみません。残念ながら証明することはできません。お客様の言うとおり、私が請け負った方々は全員もれなく死んでいますから」
「は、話にならないわね。帰らせてもらうわ」
「15分間、じっとしていてください」
「え?」
「芳香剤を開封して15分。その間に一度でも痛みや苦しみを感じたら即座に私へ電話してください。いただいたお代は全額お返しします。さらに、私を詐欺罪として警察へ突き出してくださってもかまいません」
男のやすらかな微笑みをたたえた表情は変わらない。
「まぁ15分が経ったそのとき、お客様はいつのまにか天国におられるはずですけどね」
女は半信半疑だったが、そもそもこの男に頼ったのは他に方法を見つけられなかったからなわけで、実は質問をぶつける前から試してみる価値はあると考えていた。女はビンを手にとる。
「……わかったわ。後金のありかはさっき伝えたとおりよ。わたしが死んだら勝手に持っていってちょうだい」
「交渉成立ですね」
男はまたにっこりと笑って席を立つ。そして深々と会釈した。
「それでは、どうか安らかなる死がお客様に訪れますよう……」
「おやすみなさい」
◆◇◆
駅から家まで歩くこと15分。授業を終えた子供たちが元気に飛び跳ねながら家に向かう姿はいつもと変わらない。ときどき会う散歩中の老婆がこんばんはとあいさつを交わしてきて、それを無視するのも変わらない。車に轢かれた猫がぺしゃんこになったまま放置されている光景や、公園の入り口あたりでグチり合う主婦たちの下劣にゆがむ顔も変わらない。
それら平和でありつつも悪魔の棲みついたようなこの世界とも今日でおさらばすることができると思うと楽しくなり、女はクツクツと笑った。
一人で暮らすアパートに着いた女は、男に言われたとおり部屋にこもってまずは窓とドアの施錠を確認した。
敷かれたままの布団にどっしりと座り、小さな円卓の上にビンを置く。空ける前に液体を観察してみるが、無色透明で毒のような印象はまるで感じない。
「嘘だったら承知しないわよ」
女は警戒心を抱きつつ、ビンの上部にくくりつけられている紐をほどいてふたをとった。
すると、とたんにフルーティな甘い香りが室内を包んだ。
「桃かしら。いえ、リンゴ?」
代表的ないくつかの果物がミックスされたような、とてもいい香りだった。
女は拍子抜けした。これは本当にタダの芳香剤ではないか、と。ついで一つのことに気づく。もしかしたらあの男、数百円で買える芳香剤を法外な値段で客に転売する詐欺師なのではないか。
怒りの込みあげる思いで女は携帯をつかもうとしたが、ふと思いだした。
――15分間、じっとしていてください。
15分。
女は待ってやろうと考えた。もし15分経って何事もなく生きていたら、そのときは覚悟しておきなさいと心の中で呟きながら。
13分が経った。
壁時計を凝視し続ける女の呼吸は荒くなっていた。
女は自分で気づいていなかったが、ビンを空けたときからずっと極度の緊張状態を保ち続けていた彼女の精神は限界に近くなっていた。
寒気を感じながらも全身からは汗が噴きだす。暑さと寒さに同時に襲われているような矛盾した症状は、女をますます混乱させた。
「あと1分……」
これまでの14分間、たしかになんの痛みも苦しみも感じることはなかった。
女は考える。もしかしたら、死へのカウントダウンというこの超緊張状態が人体になにかしらの異常をもたらし、突如絶命するということなのではないか。このビンはやっぱりタダの芳香剤で、15分で確実に死ぬという恐怖をあおるための道具にすぎないのではないか。
壁時計の秒針は、とうとう15分の経過を告げようとしていた。女は心臓の鼓動がしだいに大きくなっていくのを感じながら、心の中で数える。
5、4、3、2、1――
――0
女は目をつむり呼吸を止めた。
しかし、何も起こらない。
目をあけても、そこにある光景はいつもと同じ。壁時計の秒針はただ冷たく一定のリズムで歩みを進めているだけだった。
スーっと落ちていく緊張の糸。大きくため息をつく。
「……なによ、生きてるじゃない」
女がまず感じたのは、男への不信や怒りではなかった。
安堵である。
死ななかったという安堵。それはどこか嬉しくもあり、虚しくもあった。
女は一息つくためにタバコをくわると、消え入りそうな声でつぶやいた。
「そうよね。世の中そんな甘い話があるわけないわよね。死ぬってやっぱり簡単なことじゃないんだわ。バカみたい……わたし……」
あんな男の話を真に受けるなんてどうかしていた。
急激な落差でもってむかえた安堵は、フルーティな香りもあいまって女に絶大な安心感を与えた。それはまるで金曜日の夜、寝る前に感じるあの安らかな気持ちのようだった。
ふぅとため息を吐き出し、タバコに火をつける。
0.5秒後。
女の体は破裂して粉々になり、一部は壁に、また一部は窓ガラスを破壊して外に飛び散っていた。
◆◇◆
「まーたガス引火事故だってよ。ったく、トーシロはガスの恐ろしさってのを全然わかってねぇんだからなぁ」
大柄な男は、休憩室で一服しながら部下にグチっていた。
「ホントですよね班長。一般に普及されているガスには、漏れていることがわかるようにちゃんと僕たち業者が匂いづけしてあげているのに、なんで気をつけないんですかね」
「まったくだ。まぁ昔と違って今のガスは気化してもなかなか息苦しくなったりしねぇから、匂いを無視されると終わりなんだよな」
大柄な男はタバコを灰皿に押しこんで立ちあがる。
「時間だ。いくぞ」
「あ、僕もう一本吸ってから行きます」
部下がそういうと、大柄な男は手をあげて了解を示し部屋から出ていった。
しばらくして部下の電話が鳴った。
「はい、こちら自殺請負人です」
『……痛みも苦しみもなく死ぬ方法を提供するってのは本当か?』
「ええ、本当ですよ」
部下はにっこりと微笑む。
「ところでお客様、おタバコは吸われますか?」
初めまして、ごくたまーに投稿させてもらっている瀬々良木と申します。
掌編は初めてですがよろしくお願いします!
※2/1 ご指摘を受けて若干修正しました。ありがとうございます。
2014年01月31日(金)17時51分 公開
こんばんは。
興味深い作品でしたので感想を書かせていただきます。
話の構成はTHE掌編といった感じでしたね。無駄なくコンパクトに収まっており、かつ物足りなさを感じさせない密度があって最後まで楽しめました。
気になったことを二つ。
一つは女に関してですが、自殺志願者にしては台詞や地の文の心情描写から読み取れる人物像が普通すぎる気がしました。死にたがる人間せよ生きることに倦んでいる人間にせよ、もう少し鬱屈とした雰囲気があるんじゃないかなぁ、と。読んでいて何度か「あれ、本当にこの人死にたがってるのか?」と思うことがありました。
もう一つは芳香剤について。
ライターの火で爆発が起きた、ということは、引火した物質が部屋にかなりの量が充満していたものだと思いますが、だとしますと開封してから十五分後を待つことなく女はガス中毒で死ぬなり意識不明になるなりしていると思うのですが……。
それとも、人体に対して無害な可燃性の気体があるとかですかね? あまり詳しくないのですが、そのあたりがちょっと気になりました。
そんなところです。
話の構成は見習いたいくらいによかったのですが、色々と引っ掛かる部分があったのでとりあえず評価はナシにします。
では、失礼しました。
読ませていただいたので少々感想を残しておきたいと思います。
とてもすばらしい作品です。
落ちもうまく、よくできてると思います。
あからさまなフラグに隠れて真フラグを立てていたり、衝撃のラストだったりとか、女の感情がリアリティあったりとか。
個人的に、このような下げから始まって上げて落とす物語は好きです。
少々気になったところとしては、二点ほどです。
>クツクツと笑う声
気にするほどではないと思いますが、少し違和感を感じました。「笑い声」のほうが個人的には自然です。
それから、時々簡単な単語がひらがなになっていましたが、何か意味があるのでしょうか?
ではでは!
読了しましたので、感想を残していきます。
オチが予想することができず、楽しませていただきました。しかし、なんてはた迷惑な自殺……(笑)まわりにも被害が出るのでは? 15分間もガスを部屋に充満させ、ガス中毒にならないのでしょうか……? まあ、オチが意外でよかったのでオールOKだと思います。SFチックな力がはたらいたと捉えることもできますし。
それよりも、気になったのは人物描写です。あんな危険物を売りわたす自殺請負人があまりにも普通。とんでもない方法で殺すのですから、ドラマやマンガなどでよく見かけるマッドサイエンティストのようなぶっ飛んだキャラでよかったのではないでしょうか?
面白い物語を有難うございます。
十五分で苦痛なく死ぬことのできるという非現実的でミステリアスなアイテムと、クライマックスの現実的な死に方が対比的で、とても良かったと思います。
思わず「なんてことだ!」と口走ってしまいました。
あとは冒頭の引きですね。残酷な死に方という強烈な引きは読者のことを思ってくれているのが伝わってきて、とても嬉しかったです。
気になるところはと言えば、これは良いところと表裏一体なのですが、クライマックスがあまりにも現実的過ぎて、少しチープに感じられました。
現実的であっても、もう少し雰囲気を壊すことのない殺し方というのがあったように思います。
といっても、この短さで、この対比、実に良い作品だと思います。次の作品も書いて頂けるのであれば読ませて頂きたいと思います。
ども南郷です。感想返しに伺いました。コメディ系の人間の意見なので話半分にお願いします。
面白かったです。評価点としては「先が読めない話」でしょうか。当方タバコは吸わないしガス屋でもないのであれですが。
死にかた、というテーマから切り込んで請負人の自信に裏打ちされた自殺方法からきれいに話をまとめる、というしっかりした構成でした。
ガスの臭いとか中毒とかは気にしたら折角の作品の余韻を失うので気にしないでおきます。あと、大変どうでもいいですけどガス爆発による自殺とか全然安らかな死じゃないじゃないか、たまげた詐欺師だなあ……(驚愕
突っ込む部分よりも面白いと感じた部分が多かったので30点を置いていきます。より良いご作品の制作を期待しています。
需要のありそうな仕事だなぁ・・・(苦笑)
>死にたいというよりは生きたくない、という微妙な心理
そんな感じは、よく出ていたんじゃないでしょうか。
脱ラノベ、というラノベがあってもいいじゃないでしょうか!
ラノベっぽいラノベには、若干飽きた感ってありますよね。
餓死と焼死体の、ぐちょドロ表現が素晴らしかったです。
どーやって調べたんだか(汗)
内蔵が消化酵素で自己融解していくところなんか、最高ですね。
鬱による自殺は、鬱が最大に出ている時は自殺するという行動さえ起こすことができないので、実際の自殺率は低くて、有る程度回復してきて普通っぽくなった時期に、自殺することが多いのでこの女性もそんな感じが良く出ているように思いました。
自殺は、したいと言うのと実際に行動を起こすのはまったく別次元のもので、自殺したいと言っていた人が、実際に自殺(もしくは他殺されようと)しようとすると、強烈に拒否しはじめる・・・なんてのが多いみたいですね。
>女の体は破裂して粉々になり、一部は壁に、また一部は窓ガラスを破壊して外に飛び散っていた。
外!?
リアルですねぇ。
一度、現場保全の手伝いで警察が来るまで見てた(犬猫が破裂した部品をくわえていくので、追い払うように)ことがあるのですが、破裂系の自殺はお勧めできないですね。
もっとも、お勧めできる自殺なんてないので、こういうお話をキチンと書くことで自殺防止に少しはなるんじゃないかと思いました。
医療系ラノベを自分では、なかなか書くことができないので書ける方は断然応援したいと思います。今作は逆医療系ですけど・・・
また、投稿してくださいねー
こんにちは。御作を読ませて頂きました。
以下、感想です。
文章、構成、ネタの裏付け等、隙のない作品だった印象です。テーマもオチもダークなので、純粋に「面白い!」というのは若干はばかられるのですが、正直ツッコミどころらしいものがほとんど見つからないです。
依頼人女性の心理も、共感…というか自然に理解できましたし、オチも全く察することができませんでした。無臭のままのガスを喫煙者の部屋に満たして爆死させる殺人トリックを、どこかの推理物で読んだ記憶すらあるのですが、それでも今作とは結びつかなかったです。
というわけで、以下に一応気になったところを挙げますが…すみません。ほとんどイチャモンです。
◇ガス警報器は鳴らないのか?
集合住宅のキッチンにはガス漏れの警報装置がついています。
依頼人の部屋の正確なつくりは不明ですが、私はワンルームと想像していたので、キッチンとリビングなどが直接つながっているか、仕切り戸があるかは微妙なところに感じました。
もちろん、単に現場とキッチンはつながっていなかったのだろう、などと推測すれば済むことなので、別段矛盾などはないのですが…ただ、この自殺請負人氏の企図に一般人が気づける要素は、ほぼ警報器くらいしかないと思うので、請負人自身は結構気にするポイントに思えたのです。
あくまで個人的意見ですが、女性が戸締りしているときに、「まずは玄関ドアを施錠し、キッチンとリビングをつなぐドアも閉め…」等、仕切ったことを明確化する描写があってもいいかもしれない、と思いました。
読み落としや知識不足でおかしなことを書いていたら本当に申し訳ありません。
◇自殺請負人の目的が見えないのが少し気になる
これはもう完全に個人的趣味レベルの発言ですが、彼が「何を目的に」この請負をやっているのかが、少しほのめかされていたらいいな、と思いました。
目的は金なのか、苦しむ者の救済なのか、はたまた底知れぬ悪意なのか…?
あえてキャラ性を強調しなかった、と作者様のレスにありますし、あるいは意図的に想像の余地を残してミステリアスにされているのかもしれないので、もしそういったことであればスルーでお願いいたします。
興味深いお話をありがとうございました。
これからも頑張って下さい。
瀬々良木ゆーとさん、はじめまして。はなうたと申します。
拝読したので感想を残しておきます。
人間の習慣や心理を読み切った上で紹介する自殺方法なのですねぇ。仕掛けがとてもお上手でした。
仕掛けもそうですけど、女性の心理描写がとくにリアリティがあって良かったです。とくに駅から家に帰るまでの世間の見方が秀逸でした。
気になった点は正直ほとんどありませんでした。
ただ、タバコの伏線をもう少し描写した方がいいかな、と思いました。リスクは増えますけど、現状だとややアンフェアな気もします。
でも、それも気にならないほどの面白さでした。
エグいですけど、まあ、納得です(笑)
拙い感想ですが以上です。
完成度の高いお話をありがとうございました。
ではでは失礼します。
タカテンと申します。
拝読いたしましたので、感想を送らせていただきます。
とても話に惹き込まれました。
上手いなぁ。
最初に餓死云々みたいな具体例が良かったのかもしれませんね。そのあたりから見事に意識をぐっと掴まれたような気がしました。
結局15分では死なず、女性が推測したようなことを自分も考えているところに、あの最期。うーん、どうなってるのかなと不思議に思っていたら、あのオチ。いや、上手いです。
ただ、あのオチならば、最初からもっとタバコを印象付ける必要があるように感じます。
というのも、最初に読み終わった時に「上手いけど、これ、タバコを女が吸うって情報はあったっけ?」と思ったのです。
読み返してみると確かにあったのですが、印象に残ってない。あまりにこれ見よがしなのも興ざめですが、序盤のシーンでタバコを何本も吸う女性に
「タバコ、お好きなんですね?」
「美味しくないけどね」
「死んだ後の一服はきっと最高ですよ?」
って会話を挟んでみるぐらいなら、あまりでしゃばりもせず、それでいてタバコ好きって印象が残るかもしれません。
でも、面白かったのは間違いありません。勉強にもなりました。
これからも執筆頑張ってください。
すみません。自分のレスを読み返して、ひどい説明不足に気づいたので補足いたします。
請負人の主目的が「金」であることは、作中で明確に描かれているので、もちろん私も理解していました。その点で、作者様の描写に不足は一切ないです。
ただその上で、彼がこうした無関係な人にも被害を及ぼしかねない凶悪行為を平然と行えるのには、表面的な金銭欲以外に、何か裏に自分を正当化するような「真意」的な目的があるのでは? と感じ、それが気になった…という意味です。
言葉足らずな上に主観的すぎるイチャモンで申し訳ありませんでした。
それと、「以前ガス爆殺ネタを見た」というのは、作者様のオリジナリティを否定したつもりではなく、むしろ「この現象をこういう話でこう活かすとは凄いオリジナリティだ!」と感動しての発言でした。こちらもご不快に思われていたらすみません。
このレスにはご返信頂かなくて大丈夫です。
大変失礼いたしました!
おはようございます。いさおMk2と申します。
御作を拝読致しましたので、拙いながらも感想など書かせて頂きます。
読了後、「なるほどなー」と膝を叩きました。
小生はぶっちゃけ掌編書くの苦手なので、良いお手本を見せてもらいました。
短い中で綺麗に起承転結が織り込まれているのは素晴らしいと感じます。
ネタがブラックなのも、個人的に好みですw
気になる部分は、既に諸兄により優れたご指摘がなされておりますが。
小生も、タカテン氏と同じく女性にもう少しタバコを吸わせる描写を多くするべきではと感じました。現状では二読して「ああ、ここが伏線だったのね」と感じる程度にしか書かれていない様に感じます。
とはいえ、落ちのインパクトは相当なものがありました。
最後の一言も実に良い感じですね。勉強になりました。
乱文、ご容赦を。
次回作にも期待致します。
先程はご感想ありがとうございました! 瀬海です。
拝読いたしましたので、感想をば。
……個人的なことなのですが、なんだか最近良作に感想をおつけできる機会が多くて嬉しい限りです。ご感想をいただく前からすでに読了はしていたのですが、自分が高得点のスイッチを押すのが躊躇われたこともあり、他の理由もありで二の足を踏んでいたのです。なんかすみません……。
冒頭の興味をひかせる展開から「口内、食道、胃~」というくだりで読者を引き込む構成、芳香剤という謎のアイテムが導く不可解な末路、そしてその真相。お見事です。他の方もおっしゃっているので伏線については言及しませんが、それを差し置いても魅力的な構成だったと思います。展開で物語に引き込んでいくのは言うほど簡単にはできませんので。
大きな指摘点がないので好みの話になってしまいますが……感想をおつけするのを躊躇っていた理由として犯人像があります。自殺幇助、というテーマをここまで持ち上げているのは素晴らしいのですが、犯人が刑事という点、彼がいともたやすく「芳香剤」を手に入れているという犯人万能的な点をそこに組み合わせて考えると、それぞれの要素がやや食傷気味であるために全体もそのような匂いを帯びてしまっている気がするんです。トリック以外に何か新しいモノが欲しかったような……もはやいちゃもんのレベルで申し訳ありません。
拙い感想は以上となります。
これからも頑張ってください! では。
自殺願望のある人間の前に現れた謎の人物。そして謎のアイテム。
チープと言っていいくらいベタなストーリーですが、つかみがシンプルであるほど、読者は先を予想しやすくなります。
予想をすればオチが気になります。
読者は予想が外れることを期待して先を読み進めます。
予想を裏切り期待に応えれば傑作。
予想を下回り期待に応えられなければ凡作。
私にとってこの作品は後者でした。
ただ、期待感を煽って結末まで読ませる筆力は評価されるべきだと思います。
意表を突くような、思わず声が出てしまうようなアイデアは見受けられませんでした。
例えば同じプロットを使い、この作品に感想を残された10人の方が掌編小説を書いたとしたら、その中に置いては埋もれてしまうオチだと思います。
良いオチだな。
感動的だ。
だから30点だ。高得点入りしてるけどこのクオリティなら仕方ないね。
眠いし指摘するとこないんでこれで失礼しますね。おもしろかったってのだけ伝えれたらそれでいいんで。
鍵入です。拝読しましたので感想を。なお、他の方の感想には目を通していませんので被る点もあるかと思います、ご了承下さい。
「奇妙な味」系の、心理成分強めな話かなーと思いながら読んでいたら唐突な爆破で噴きかけました。なんという力技。力技ではあるのですが、直前の「タバコに火をつける」がトリガーだとすぐに分かるので、「何が起きたのか」が感覚的に瞬時に理解できるのが上手いと思います。理解しやすいんでラストの会話いらないんじゃないかってくらい。
むしろ説明しちゃったせいで気になる箇所も出てきてしまいますしね。請負人の個人情報管理がずさんっぽいとか、いきなり出てきたやつが正体ですと言われましてもとか。あとまあ、実際に爆発するのか。無粋な疑問ですけど。アパートの部屋って目張りでもしない限り気密性そんなに高くない気がする。充満せずとも死ねるだけの量あればいいですかね。でも部屋の広さは請負人に分かるはずないし。拡散したら威力も薄れそう。っていうかそんなに高速に多量に気化するのかな。そもそもどれくらいの威力なんだろう。気になる。
無粋ついでの些事、しかも記憶頼りなので違っていたら恐縮ですが、ガス爆発って出火元は調べれば分かるんじゃないでしたっけ。火元は特に焦げ跡が濃いとか、焦げは火元から円状に広がるとか、かんとか。まあ、たいていはキッチンです。でもたまにそれこそ自殺する人が部屋の中心とかで爆破するし。そして火元が判明したところでなんだというのか……あ、不審死だから警察の捜査が入る可能性高そう。となると、顧客に個人情報晒してる請負人がやばい。
個人的な好み。自殺を扱う話なんですが、導入の会話が自殺に限らない「苦しい死に方」なので、なんでしょうね、女の心理に共感?という表現でいいかは分かりませんが、させるにはちょっと距離があったかなと。餓死とか火だるまとか、そりゃ苦しいでしょうけど、そんな選択肢は最初っからないじゃん? だからあんまり怖さについて想像力はたらかないじゃん? っていう。リスカや投身は絶対痛いから嫌、首吊りとか死ぬまで絶対苦しいから嫌、ぐらいの方が身近でいいのかなあと。
総。アイデアと見せ方がとても良かったぶん、読後に余計なことを考えさせない後処理をして欲しかったです。いっそ「直後、部屋が爆発した。」ぐらいシンプルに投げて終わるのもアリだったかなと。シンプルな説明で納得できる絵解きってスマートです。本作のネタなら、たぶん納得できましたしね。
それでは、失礼しました。
初めまして。新米研究生の非実在性少女と申します。
私は普段読む小説は100Pオーバーは余裕の長編ばかり見てきたものですから、掌編小説なんてなじみのないものを体験するのは非常に新鮮なもので、とても楽しませていただきました。
すっごい惹きこまれました!!話の進み方自体はあまり真新しさはなかったですけども、そのベターな展開を上質に仕上げられていて感心しました!!
雰囲気はばっちりで、たばこの複線もさりげなくと掌編小説のお手本のようないい作品でした。