川井クナイさん著作
ジャンル: 恋愛・ホラー
「ねえあなた、いま優里が喋ったわ!」
一歳の娘を抱いて、妻の里穂が歓声を上げた。
家で愛する家族と過ごす、幸福な休日。
こんな日が俺に訪れるとは想像もしていなかった。
五年前の今日、俺は婚約者の遥を失った。交通事故だった。
突然すぎる別れに俺は絶望し、生活も荒れに荒れた。遥の遺影にすがっては、俺には一生お前だけだ、と涙する日々が続いた。
そんな俺を立ち直らせてくれたのが里穂だった。
彼女の優しさは徐々に俺を癒し、やがて俺達は結ばれた。
そして去年の今日。
遥の命日に、子供が生まれた。遥によく似た、大きな黒い瞳の娘が。
まるで生まれ変わりのようで、なおさら愛しさが募った。
「ママー。マーマ」
そんな大切な娘が妻を呼ぶ。その声が、今度は俺の耳にも届いた。
俺は感激して、妻の手から娘を抱き取る。
「優里、パパのことも呼んでくれ!」
期待をこめて頼む俺を、可愛い娘はまっすぐ見返し、言った。
「うそつき」
こんにちは。川井と申します。
本作は、以前うまく膨らませられず頓挫したプロットを、逆に圧縮することで一定の形にしたものです(投稿室の「一枚ブーム」より示唆を頂きました。有り難うございました)。
拙作に面白みがあるかどうか、率直なご感想を伺いたく投稿いたしました。
つまらない、わかりにくい、展開が読める等々、何でもご指摘頂ければ嬉しく思います。
もちろん一枚縛りであることにご配慮頂く必要はございません。
どうぞよろしくお願いいたします。
2014年03月22日(土)01時11分 公開
拝読させていただきました。
うわ、怖っ……。
ほのぼのと終わると思ったら、そう落ちましたか。
ゾクゾクっとしました。
個人的には最後の台詞のあとに、娘ちゃんの表情があれば良いかなと思いましたが、でもそれをすると綺麗に落ちない気もするし……。
つたない感想ですが、面白かったです。
ではでは。
どうもはじめまして無です
最後の落ちが秀逸でした!
ぞくぞくっと背中が震えました
短いですが失礼します
これからも頑張って下さい!
お疲れ様です。としきです。
拝読させていただきました。
ラストはすっと背中にうすら寒さを感じました。良かったです。
以下、個人的に気になった点です。
・男の絶望が足りないのでは?
初読時の率直な感想は、「悪くないが何か物足りない」といった感じでした。
幸せ絶頂から、いかに低く速く突き落すか、が肝要な作品かなと勝手ながらに考えております。
とした時に、
-妻と二人で聞いている
セリフの驚きや恐怖を二人で分かち合えてしまう。
一人で聞き、この後、誰にも相談できない(言っても信じてもらえない)状況の方が……?
-直前の俺のセリフ
「一生守ってやる」などの「一生xx」というセリフに対して、ラストのセリフが来たら……?
などと勝手に想像している次第です。
・子供への愛情
>「遥の命日に、子供が生まれた。遥によく似た、大きな黒い瞳の娘が。
> まるで生まれ変わりのようで、なおさら愛しさが募った。」
生まれた時点で、「生まれ変わり」と感じて、「なおさら」愛しくなるのかな、と少し気になりました。
成長していくにつれ、時折り似ていると感じる、なら分かるのですが。
でもこれは、初読時はさらりと読み流しています。それほど引っかかるほどではないです。
>つまらない、わかりにくい、展開が読める等々、
・固有名詞(わかりにくさ)
3人の名前が出ますが、初読時、途中で「あれ?妻の名前はなんだっけ」となり頭から読み直しました。
もう1行読み進めれば「それを立ち直らせてくれたのは~」と妻の名前が出てきていたのですが。
私が名前を覚えるのが下手なほうなので、他の方は大丈夫なのかもしれませんが、念のためお伝えしておこうかと。
・展開
私の場合は、最後何かくるだろう、という「期待」を持ち、ラストで「そうきたか」的な感触です。
以上、偉そうなことを言って申し訳ありませんでした。
執筆お疲れ様でした。良い作品を読ませて頂き、ありがとうございます。
こんにちは、幸です~。
素晴らしいの一言に尽きますね。正攻法でやれる極限じゃないかなと思います^^
400字なので、遙=赤ちゃんを前提に読み進めても「ママー。マーマ」の後に「うそつき」、すごい落差です。分かっていても当てることの出来ないフォークボールでした。
この家族の十余年後がとても気になります。
続きを上手く作れば東野圭吾の「秘密」に並ぶ名作になるかも知れません、それくらい見事な内容だったと思います。これをお蔵入りにするのは勿体ないです。
以上、創作お疲れ様でした!
うわびっくりした!
マジで転生しちゃったんですね…こわぁ…。
奥さんの死を乗り越えて、ようやくあたたかい家庭が、みたいな雰囲気を掴んでほのぼのとしてたところに、うそつき。ぼけーと読んでたんですけど、一瞬で覚醒しました。こわいよー! ゆるしてー!
インパクトありました。よかったです!
ではではー
はじめまして、こんにちは。けとると申します。
拝読させていただきましたので、感想をまとめさせていただきます。
【良かったと感じた点】
◆これぞ王道! といった内容で、とても面白かったです。
◆短くまとめながらも、必要な描写がしっかりあって混乱せず読めました。
◆転生系とか輪廻系はぞくっときますね。世にも奇妙な物語に凄くマッチしそうです。
【少し引っ掛かった点】
◆この長さとしてまとめる上では、特に感じませんでした。なので、これを骨にしてボリュームアップを狙うとしたら、という視点で以下書かせていただきます。
◆一年の間に、赤ちゃんがだんだんと薄気味悪い行動をしたり、表情をみせたり、という描写があると、よりぞくっとするかもしれません。
◆死に別れた女性から、今結婚した女性への心変わりの葛藤が詳しく描写してあると、最後の重みが一段と増すように感じました。
以上です。あくまで私の感想ですので、川井クナイさんが共感出来たり納得して頂ける点を大事になさっていただければ幸いです。
ではでは~^^
一生、好きでいるからね。
ずーと一緒にいようね。
私を一ヶ月で振った彼女から言われたことです。
基本的に女のほうがうそつきだし、うそがうまいんですね。
一ヶ月間、散々ふりまわされましたよ。
服が欲しいからつれてって、いって遠い彼女の家までいったら、やっぱり今日はいいや。
というので、電話もメールも通じなくなって、その後怒ったら、別れよ。
おい、てめえなんなんじゃ!
わてだって忙しいんじゃ!
仕事、必死に終わらしてきてなんじゃわれ!
おらあ!
実際にはやだやだあ、怒ってごめんねえ、別れたくない~。
いったんだけど振られました。
なんか気持ち悪くなってきた。
おええええええ。
川井クナイさんへ
はじめまして。
茉莉花と申します。
お名前は前々から拝見しておりました。
作者からのメッセージにある件ですが、私としては不快とは思ってはおりませんよ。お気になさらず。
さて、貴作の感想ですが、ストーリーやオチなどとても面白かったです。
短い中でよくここまでまとめたものだと思っています。
背筋がぞくぞくする感じの話ですね。
指摘もあるにはあるのですが、指摘というよりいちゃもんに近いものとなっているのでお伝えすることができません。
作者からのメッセージに答えることと、読ませていただいたということを伝えるのが目的でした。
この作品がもっと多くの方の方の目に触れるといいな、と思っています。
それでは執筆お疲れ様でした。
とてもキレのある作品でした。
読むことができて、本当によかったです。ありがとうございました。
川井クナイさん
拝読したので感想を残したいと思います。
あ、これホラーだったんですね。初読時はどう解釈したらいいかちょっと測りかねて、むしろそこをあれこれ考えて楽しむ作品だと思いました。作中ラスト直後の主人公の反応次第で解釈が変わってしまうので。↓例。
1:「うわぁ遥! 許してくれぇっ!!」
2:「遥! 生まれ変わったんだね! また会えて嬉しいよ!!」
3:「キェェェェェアァァァァァシャァベッタァァァァァァ!!!」
御作をホラーとして位置付けるには描写不足な気がしますけど、他の方は概ねホラーということで意見が一致してるので問題ないのかもしれません。
個人的にはこれが輪廻転生とか記憶の継承だとあんまりホラーって感じしないんですよね。生前の主人公と遥の関係にもよりますけど、まぁ上記2の反応になるかと。ちょっと説明しにくいですが、この場合生まれた娘は遥とは何の関わりもないにもかかわらず主人公の不義(?)を糾弾してくるからホラーになり得るのだと思います。といっても作中からは生まれ変わりかそうでないかは判断できないんですが。真性異言の一種とかかもしれません。
もしくは主人公が生前の遥に明らかに恨まれるようなことをしていた場合ですね。怪談噺にありがちですが、主人公が里穂と結婚するために邪魔になった遥を殺害したとか。そんで生まれた子供に「うそつき」なんて言われた日には夜中ひとりでトイレ行けなくなりますね。
ぐだぐだと書きましたが、いろいろ想像を膨らませられて楽しめました。
良い作品をありがとうございました。
最後につまらない小噺をひとつ。
和尚が言った。
「殺生は決してしてはならぬ。もし牛を殺せば来世は牛に、豚を殺せば来世は豚に生まれてしまうぞよ」
小僧が答える。
「じゃあ人間を殺せば、来世は人間に生まれ変わるんだね!」
お粗末。
はじめまして。新参者の櫻もちと申します。
拝読させていただきました。
1枚という制限の中で、きれいにまとめていて素晴らしいと思いました。
読み終わった後に、何とも言えぬ恐怖感が残りますね。
最後の台詞にたいする父親の反応を想像するのが楽しいです。
このような作品を書けるようになりたいです。
特に目新しくも無い感想ですみません。
これからも頑張って下さい。
こんばんは。樹思杏と申します。
とても面白く読ませてもらいました。
掌編は短編とはまた違ったテクニックが必要だなあ、と掌編の作品を拝読しながら、実感しております。
短い文章の中に、過不足ない描写とオチを挿入するのは至難の業だと思います。
クロレラさんもおっしゃっていますが、私もこれをホラーと感じるには、少しだけ情報が足りないような気もしました。
遥さんに、主人公を糾弾するだけの(転生してまで)理由が不足しているように感じたのです。主人公に罪悪感もないようですし。
遥さんは交通事故じゃなくて病死とする。それで、常々「私を忘れないで」って言っていたとかどうでしょう?
ただし、他の方のご感想ではみなさん、ホラー要素を十分に感じておられるようですので、私が斜めの目線で読みすぎているのかもしれません。
無粋な指摘をしました。
決して自分では書くことのできない、良質な掌編だと思いました。
次回作も楽しみにしています。
こんばんは、高山ゆうやです。作品、拝読させていただきました。
私は、怖さを感じると同時に、展開がハマれば、幸せな家族になれるかも。という感想を抱きました。
優里=遥さんは、復讐のために生まれ変わった存在かも知れませんが、娘になりきることが出来れば、かつて愛した人の隣にいることが出来るのです。自分が死んだ存在で、同じ時間を過ごせない。ならば娘として生きることを選択する。このパターンになれば成功。なれなければバッドエンド。
奥さんのことをちゃんと「ママ」と言っているのがポイントです。現実を直視するのは辛いことですが、この娘が夫のかつての婚約者の生まれ変わりであることが理解出来れば(かなり厳しいですが)、優里=遥さんが、自分が果たせなかった夢を里穂さんに託す日が来るかも知れません。
あとは主人公がどうするか。亡くなったとは言え、遥さんに嘘をついてしまったことは確かです。このことが一番の問題で、嫌でも娘と向き合わなければなりません。また、妻に本当のことが言えるのか、主人公の力量が試されます。家族のために頑張れ主人公。
以上、とりとめのない感想でしたが。人によって様々なとらえかたが出来るのが、この作品の真の面白さだと思います。
執筆お疲れ様でした。
こんにちわ!
読みましたという報告のような感想です。
みなさんが素晴らしい感想をつけているので、もうあえて言うことがないという……。
400字ですばらしくまとめてあるんですけど、もうひとひねりがあっても良かったかな、なんて個人的には思いました。
「うそつき」 この時点でホラー
「でも、幸せになってね」 って赤ちゃんがいえば、感動的ホラーに!!
あ、なりませんか。
ですよねー。
すいません。
では、失礼します!!
400字小説仲間に乾杯!!
読ませていただきました!
ラストでリアルに「うぇっ!?」って声が出ました(汗)
てっきり愛する人を失って傷心の男が立ち直って幸せな人生を歩む和みのお話かと思いきや…
一昔前のホラーによくある展開ですね。
読んでる途中にも「あれ、今の奥さんがいるのに前の奥さんに似てる子供?ん?」とは思ったんですがね。
にしたってこんな露骨なホラーでくるとは思ってなかったので印象的でした。
400字という短い中でホラーと、それを怖くするための要素(過去)をちゃんとまとめられていて良かったと思います!
どうも、友達連中がどんどん子供を作って幸せになってる中取り残されてるデルティックです。
これは恐いですね。
この子が成長して4~5歳くらいになるとすごく和製ホラーの家庭になりそうです。
しかもお母さんは気付いていない系だと最悪。
お父さんの胃袋と毛根がマッハ確定ですね。
個人的には、妻に注いだ愛情が娘に対する愛情に転化するだけで幸せな家庭にもなりえるので、そっちのが好みではあるんですが、これはこれで良いですね。
なんか最近400字小説が凄いですね。レベルが高い。
皆さん精錬されてきてるように思えます。
それでは、お邪魔しました。
かなりの数読みましたが、この作品はベストオブ掌編でした。
すごいキレだったと思います。
これからも創作頑張ってくださいノシ
初めて。つきしろと申します。
作品読みました。
最初の婚約していた方が亡くなって、「一生お前だけだ」と言っていた傷が癒えて、子供が出来たら。の流れで、うんうん。良かった。と思ったのですが、子供が亡くなられた婚約者に似ている。と言うところで、あれ?何か違くないか?と思いました。
けど最後で、何と!とビックリしました。
短いのにとてもよく出来ている作品だと思います。
いい作品をありがとうございました。
こんばんは。お久しぶりです立山です。
クロキキ!の感想を書かせていただいたのですが憶えてらっしゃるでしょうか?
(クロキキ!の作者さんだという前提で話していますが違ったら超恥ずかしいです)
最初に「うそつき」の部分が目に入ってしまったので、「何がうそつきなんだろう?」と思いながらちゃんと最初から読み、最後に「なるほど」と納得する形になりました。
小説はちゃんと上から読まないと駄目ですね……。
一枚という短さながら、しっかりと内容と落ちのあるお話で、流石だと思いました。
作者検索から来たのでタイミングを外した感想になってしまいすいません(;・∀・)
具体的にわかりませんが、多分、アイディア自体は似たようなものが存在すると思います。
だからといって、この打ち抜かれたような読後感は出せるものではありません。
すごいです。
読ませていただきました^^
1ページでこの切れ味はすごいですね。
絶望→幸福→どん底
をこの短い文章で揺らして見せたのはすごいです!
短いからこそすごい作品だと思いました。
すごいって何回言うんだよって感じですが
すごいものはすごいです。
いわゆる「こんな晩」のパターンですね。
夏目漱石『夢十夜』にもありますね。この変形が、古典落語『もう半分』です。
(別のパターンが、「現場を幼い子が見ていて、言葉を話せるようになってからバラしてしまう」というパターンですが。)
さて、この文章だけでは、「死んでからも私だけを愛してほしい」という女の情念が感じられません。
時系列順に書いた方がよかったのでは?