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経験主義的文学の境地

 何かにつけて「あれは経験してみなくちゃ分からないだろうナア」と言う奴が昔から嫌いでした。「あれ」に入る言葉はなんでもいいです。
 こういう手合が斯くの如くの台詞を吐く時、大抵はこちらを見下した目をしつつ「経験していないチミとはこれ以上議論を重ねても無駄だよ。去りたまえ」という含みをもたせて勝手に勝負を打ち切り、勝利宣言をする。それどころか自分は経験者であると言う優位性をも誇示してみせる。
 蓋し、卑怯卑劣と言えるでしょう。
 こういった手合とは十六年の人生の中で何回も、議論のうえで衝突してきましたが、どれだけこちらが知識理性を駆使して相手を追い詰めても前述の悪魔の言葉によって、最後にはするりするりと逃げられてしまうのです。
 だが何回同じ手を喰らっても僕には為す術がありませんでした。歯がゆいが、そういった輩の口上は真実だからであり、真実であってもどうしようもありません。十六歳の僕にはまだ、世界が広すぎるのです。
 働く事の辛さも
 金の大切さも
 生き方一つをとっても
 僕に分かるものなんて一つもないんだそうです。
 だから僕が大人に何を言っても悪魔の言葉が返ってくるだけ。
 誰も、耳を傾けない。 
 経験に勝るものなし。無力なり机上の理論。
 ベーコンは強し。デカルトは弱し。
 そうなると、青雲の志を抱き、文学部に入部した僕はどうすればよいのでしょう?
「僕が書きたいのは小説であり、小説とは空想を扱うもので思うがままに書けばよい」
 最初は僕が抱えるジレンマと小説を無理に切り離して考えて生きていました。
 ジレンマの逃げ場として小説を求めたのです。
 経験にとらわれない、紙の中でならなんにでもなれる……
 だがそれも今日で終わりを告げました。
 杉並先輩といえば、校内で知らない人は稀有でしょう。僕が所属する文芸部の部長で、
『現役美少女高校生ミステリー作家鮮烈デビュー』
 そんな見出しが今ミステリー雑誌に踊っていたりもしますから。
 僕が文芸部に入ったのも彼女の存在が原因です。
 彼女は全ての面で魅力的だったと思います。そよ風が吹けば幾筋にも分かれてなびく柔らかな黒髪。桜色の唇。吸い込まれそうな眼をいたずらっぽく細めて笑えば、少し長い八重歯が見えて、それを指摘されると、さっと顔を陰らせて、実は自分はその昔狼と交配してできた一族の末裔なのだ……とかなんとか。
 口からでまかせが洪水のように飛び出してくる人でした。僕はいつもそれを少し離れた所できいているだけだったけれど。
 彼女は経験が大手を振って闊歩する現実からまったく自由な存在に見えました。憧れ。でした。いいえ、彼女への感情はそれ以上になりつつありました。だから、それだけに僕の悲嘆は大きなものでした。
「なんというか、君の小説はリアリティーがないな」
 時が一瞬にして凍りついたのを覚えています。
 どこがです。まずはトリックだな。派手さはあるが、どうもイメージができない。挿絵でも入れればいいんですか。複雑すぎるんだよ。先輩の作品にもピタゴラスイッチまがいのものが多いじゃないですか。今は私の話じゃなく君の話をしているんだ。挿絵でも入れましょうか。そういう問題じゃない、後は、何よりも動機だな。動機? そうだ、薄いんだ。どこがです。ミステリーで動機と言えば一つだろう。書きましたが。自分が理解されない、それだけか? それだけってなんです。それプラス何か現実的なものがほしい。自分が理解されない事が現実的じゃないとでも言うんですか? さっきから随分つっかかるな、それでも人殺しには至らんだろう? ……。それとこの殺人犯に惚れるヒロインだが、これも恋に落ちるには動機が薄いな。……なぜです。だって二人ともロクに会話した事ないじゃないか。それでも好きになったんです。ろくに接点もないのに?
「自分とかけ離れすぎていて触れる事ができないんです」
 そう、搾り出すように僕が反論すると、先輩は小さくため息をついて、私には理解できない。と言い、そして
「君、さ」 
「誰かの事、本気で好きになった事ないだろ?」
 
 そこからは覚えていません。ただ僕は僕の書いた小説の展開通りに事を進めたようです。結果トリックはある程度うまく作用し、今密室の中、正確には僕がもたれているドアの向こうに先輩の死体があります。三箇所の動脈を切断しましたが、僕のトリックが完全にうまくいっていれば、血痕は一つたりともないはずです。
 小説の最後で犯人である男は最大の理解者であったはずのヒロインの少女をも失望から殺めてしまうのですが、今なら、すべてを経験した今ならその気持ちが分かります。先輩に相談したかったのはラストの感情表現だったのですが、今なら書けます。
 きっと誰よりも正確に。
 
 僕は今、とても幸せです。
●作者コメント
 なんでこんな話になっちゃったんだろう……
 批評おねがいします


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●感想
水守中也さんの意見 +30点
 sdkさま、はじめまして。水守中也と申します。
 感想を残させていただきます。

 「僕」の「です・ます調」語りが、独特の雰囲気を出していましたね。冒頭からラストの展開も納得いきました。

 描写、語彙にも優れていると感じました。
>ミステリー雑誌に踊っていたりもしますから
 踊っているなんて表現、自分では思いつかず感心します。
 ただ、「蓋し」など難しい単語や漢字が多く、読みにくい印象もありました。
 一人称ですので狙ったものかもしれませんが、「斯くの如くの台詞を吐く時」の「時」は、平仮名で書いたほうがいいでしょう。

>杉並先輩といえば……
 この流れは急に感じました。一行開けてもいいかもしれません。

 ラストへの展開も急なように思えて、実は好きになった理由・犯行動機も先輩との会話に含まれており、上手いと感じました。
 それにしても、密室で動脈切って血痕が残っていない、って、先輩の言っているとおり「派手さはあるがイメージできません」(笑)

 
 それでは失礼します
 作品は、とても楽しめました。


ひとさんの意見
 理解出来ません。
 小説というものが経験なくして書けないなら、老若男女どうやって書き分けろというのですか。
 あなたは小説というものがどういうものなのか、全くわかっていませんね。一体どれだけの小説を書いてきたのですか。

 と、いうのはもちろん冗談です。

 まるで自分のことのようで、とても怖くなりました。
 異世界になんか住んだことのない私は、異世界の描写をどうやってすればいいのかわかりません。
 男性になった事のない私は、少年の心というものがどういう苛立ちと悩みに生きているのか、その描写をどうやっていいのかまったく検討もつきません。
 ましてや世界を救うヒーローなど、経験したことがないのでどんな迷いや恐れや不安を勇気に変えていけばいいのか、全くわかりません。
 もしかしたら明日はわが身じゃなかろうかと思いました。

 これも冗談です。

 でも正直、やっぱり理解出来ませんでした。だから良かった。
 この作品を理解出来たらおしまいだと思いました。ご期待に添えてますでしょうか。

 できれば、これが作中に収められた推理小説が見てみたいです。
 探偵役は、推理小説家(コナンパパみたいな)とか。
 そこで、殺人犯役が最後の推理が解けて白状するシーンで、
 「今なら書けます。きっと誰よりも正確に」って笑ったら面白そう。
 そこで探偵役の小説家がなんと答えるか、とか見てみたいです。


水守中也さんの意見 +40点
 ほにゃにゃちわー、Mickです。

 感動しました。
 上手く書けるか自信が有りませんが、感想を残していきます。

 まず、文章について。
 ライトノベルにしては表現が堅い、というのが第一印象です。
 しかし、そのお陰でとても良い雰囲気が出ているので、これは欠点というよりもはや個性でしょう。
 それに、その堅い表現の上に一人称であるにも関わらず、すらすらと読めるという点からして、素晴らしいです。
 次に、ストーリーについて。
 経験の持つ絶対的な優位性への無力感と、まったく理解されていなかったことへの憤りが伝わってきました。
 さすがに掌編だと厳しいのではないかと読み進めながら思っていたのですが、

>「なんというか、君の小説はリアリティーがないな」

 この起承転結で言う転の部分から一気に伏線が回収されていく様には、まるで主人公と共にどこまでも下へと突き抜けていくように感情移入していきました。
 ある種のおどろおどろしい爽快感といいますか、冒頭に一切無駄がないからこそできることでしょう。
 ラストの主人公の感情は、とても理解できるのですが、なぜ理解できるのかが分からないという不思議な状態なので、これについての客観的な良否の判断は置いておきます。

 経験の要らない世界を求めて小説を志した僕は、自分の理想の到達点に見える杉並先輩に出会い憧れるが、そんな杉並先輩すら、自分を理解してくれず、否定する者の一人であったということへの失望。
 丁寧な導入と、胸をえぐるような展開のお陰で痛いほどに共感でき、とても面白かったです。
 でも、とても面白かったからこそ、もっと面白くなってほしいと願ってしまう。
 その可能性が十分に有ると私は思います。
 なので、満点は避けました。
 それでは。


鍵入さんの意見 +30点
 動脈を切断したのに血痕が残らないなんて、全くもってリアリティーが無いな。密室の必然性も曖昧だし、トリックの穴も見過ごせない。君、さ。ミステリ書いたことないだろ?

 ……も、もちろん冗談ですよ! 初めまして、鍵入と申します。

 高得点につられて読んだのですけれど、これは大当たりでした。掌編と言えど、これだけの求心力を持った物語は久々です。自分が呼吸していることを忘れて画面に見入っている感覚も。読み終えてから何も考えられない感覚も。

 美点に関しては述べるまでもないかと思うので割愛させていただきます。また、細部を除いて気になった箇所もなく、点数は単純に満足度で付けさせていただきました。

 細部。

>だがそれも今日で終わりを告げました。

 個人的な感覚によるとは思いますが、どうにも違和感が拭えませんでした。多分、「それ」に直接対応する言葉がないため、指示語が不安定になっているのかと。

>杉並先輩といえば、校内で知らない人は稀有でしょう。

 これも個人的な感覚かもしれませんが、「稀有」よりは「稀」の方がスッと伝わりそうです。「稀有」でも間違いではないのですが。

>だって二人ともロクに会話した事ないじゃないか。それでも好きになったんです。ろくに接点もないのに?

 「ろく」の表現を統一した方が……って、そうすると読みにくいのか。でも、「蓋し」なんて使ってるくらいですし、これも漢字で問題ないかと思います。

 ……指摘箇所のささやかさに見返して自分でびっくりだよ!

 大したことは書いていませんがこんなところで。それでは、失礼します。


寺宙さんの意見 +30点
 こんばんは、寺宙と申します。
 読ませていただいたので感想のほうを書かせていただきます。

 びっくりしました。
 久しぶりに投稿してみたので、感想を書こうとお隣さんを覗かせてもらったのですが、SSでここまで上手いと思えるものはなかなか出会えないと思いました。自分の話のへたくそさが恥ずかしくなるくらいにw

 オチへの流れは予想通りでテンプレートとはいえ、話の展開のさせかたが抜群に上手かったと思います。物を書いている人間で、「経験してみなくちゃ分からないだろう」言葉を忌々しく思ったことがない人はいないんじゃないでしょうか。ただ、あくまでこれは自分がものをかくがわの人間だから、主人公の気持ちが良く分かるだけで、そうでない人はどう感じるのか気になるところです。

 特に、けちをつけたいと思える部分はありませんでした。
 純粋にsdkさんのほかの作品を読んでみたいと思います。
 それでは、良作をごちそうさまでした。


冬野まゆさんの意見 +30点
 感情の表現がとても素敵でした。冬野です。

 前半に主人公の性格、そして考え方。
 中盤に先輩の存在、そしてあり方。
 終盤に主人公の考えと先輩のあり方、その決裂。

 序破急のこの上なく良い見本だと感じました。
 参考にさせていただきます。

 さて、感想ですが、個人的には殺人を扱う小説は読みにくいです。好きですが。犯人が犯行に至るまで、どのような心理状態だったかを妄想していかなければならないからです。大抵、殺人に至る人間は普通の精神状態ではありませんから、妄想が膨らむので楽しいです。ミステリ系を読まれる方は好き好きに妄想することが多いと思うので、そう言った余地があるのは好ましいと思います。
 ただ、白紙の状態から妄想できる方は数少ないですので、今回のように主人公に動機があったことや、普通でなかったことはプラスになると思います。

 なんか暴走してしまいした。すみません。

 良作、ありがとうございました。
 掌編の間にこのような作品が多くなることを期待しつつ。では。


Hiroさんの意見 +30点
 はじめまして、Hiroです。
 拝読しましたので、拙いながらも感想など残させていただきます。

 ゾッっとしました。
 なんだか、すごく身に覚えのある話で、読んでいて息苦しさを感じるほどです(汗
 文体も作品内容に合っていて雰囲気作りに貢献していたと思います。

 気になったのは、個人的には殺人に至った後よりも、恨み言を綴っているときの方が恐ろしさが強かったことでしょうか。
 なんというか、殺してしまったことにより「あっ、これフィクションだったけ」と素に戻ってしまった感じです。

 やっぱり、殺人も経験しといた方が良いのかな?<んなわけない
 では、失礼します。


水波湖々さんの意見 +40点
 はじめまして。水波湖々と申します。

●指摘など

 は特にございません。きちんと推敲された作品だと思います。

●感想など

 久々に力作を読みました。商業作品も含めて、です。

 良かった点はたくさんありますが、大体あげられていますね。
 私からは「作品に引き込む力」が激しく感じられたと残しておきます。正直高得点に釣られたんですけど、冒頭を読んだだけで最後まで読ませる力がこの作品にはあると思います。一切気が紛れることなく最後まで目を通すのは久々ですね。なんというか、良作をありがとうございます。こちらまでやる気に満ちてきます(笑)

 悪い点は、そうですねぇ……。
 あえて上げるならその「トリック」が気になるくらいでしょうか。先輩も言っている通りまったくイメージが出来ません。まぁ、オチの力が強すぎてそんなのどうでもよくなってしまうのですが。
 後は共感できないと辛そう、というか、正に「あれは経験してみなくちゃ分からないだろうナア」これだと思います。人によっては首を傾げる人がいるのかもしれないですね。

 大した内容ではないですが、「拝読した」という感想を残していきます。
 参考にならないと思ったらスルーしていただいて結構です。取捨選択は任せます。
 それではお互い頑張りましょう!


筋肉太郎さんの意見
 +40点
 はじめまして。筋肉太郎です。
 拝読しましたので感想書きます。

 掌編でここまで面白くできるのはすごいですね。

 ただ、誰も突っ込まないけどこれ読んだ人は
>>ベーコンは強し。デカルトは弱し。
 の部分はちゃんと他の方は理解できていたのだろうか。
 意味の分からない表現なので、思わずググって意味を調べてしまいました。

 他にも「蓋し」等、分からない人の多そうな表現がありましたが、
 わざわざ使う必要があるのかナアと思いました。
 ただ単に私が無知なだけだったのかもしれませんが…

 文章が昔の小説っぽいですね。
 主人公の独白が太宰治の人間失格みたいでしたし、
>「あれは経験してみなくちゃ分からないだろうナア」
 のセリフは夢野久作のドグラマグラっぽかったです。
 別に似てるから駄目とかではなくて、この作品を読んでいて気になったので
 突っ込んでみました。


猫らぼさんの意見
 +20点
 文章の紡ぎ方が違いますね! 初めまして、猫らぼです。

 拝読いたしましたので、感想を残していきます。
 つたない感想になりますので、適当に取捨選択をお願いしますm(_ _)m


 冒頭から興味を惹きます。
>「あれは経験してみなくちゃ分からないだろうナア」
 誰でもあると思います。子供のときには特に。「バイトした奴じゃないとわからないって」「結婚してみればわかるから」「ずっと仕事続けてれば、必ず嫌になる時あるから。今は経験ないからわからないだけだよ」私も沢山言われてきましたね。
 読者に共感させつつも考えさせる……このような作品はあまり見たことがありません。
 高得点を叩きだす魅力は、テーマ自体にありそうです。しかし私は、その下地を作っている文章に惹かれました。

>こういう手合が斯くの如くの台詞を吐く時
>十六歳の僕にはまだ、世界が広すぎるのです。
>そよ風が吹けば幾筋にも分かれてなびく柔らかな黒髪。
>彼女は経験が大手を振って闊歩する現実からまったく自由な存在に見えました。

 語彙や表現方法のレベルが私の作品とは段違いです。
 ……すみません。それ以外言うことがありませんw

>「僕が書きたいのは小説であり、小説とは空想を扱うもので思うがままに書けばよい」
 この一文ですが、なぜカギ括弧つきなのでしょう。地の文が続く中で、特に強調させたかったからでしょうか。

>「自分とかけ離れすぎていて触れる事ができないんです」
 地の文で会話を続けてきた中で現れるこのセリフに、大きなインパクトを感じました。もはや小説の中ではなく、現実と完全にリンクしていますね。

 『複雑すぎるトリック』を『ある程度うまく利用し』というのはなんだか都合がよい気がします。テーマとは直接絡まない部分ですので、事細かに描くものでもないと思いますが、もう少しトリックの片鱗を見せてもいいのではないでしょうか。字数もまだ余っているようですし。

 読んでいて、深い海の底へずっと潜っていったような、そんな読後感でした。とにかく前半の文章表現が素晴らしく、ライトノベルではないなぁと感じましたw
 語彙も豊富そうですし、小説を書きなれている感じがしたのですが、まさか初めてではないですよね?
 『楽しむ』とはちょっと違う気がしますが、とても興味深く読ませていただきました。


 未熟者ゆえ、纏まりのないことを書き連ねてしまっているかもしれません。
 少しでも創作の助けとなることを願っております。

 以上です。次回作も頑張ってください!
 私も感想書きを頑張ります!


退魔師見習いさんの意見
 +40点
 こんにちは、初めまして退魔師見習いと申します。
 未熟ながらも感想を残させていただきます。

 正直、私如きが指摘できる点がないです。
 僕の「です・ます調」に、綺麗な序破急の展開。文章も引き込まれましたしテーマも興味深いものでした。ただ、一個引っかかった所を挙げさせてもらいますと、

>「なんというか、君の小説はリアリティーがないな」

 先輩の口調でしょうか。重箱の隅を突くような些細なことなのですが、小骨のように引っかかったので。
 それからsdk様はライトノベルより文学の方が向いていらっしゃると思うので、無理にライトノベルを目指さなくてもいいのでは? 今のままでも味があると思いますが。


瀬那森ユウキさんの意見
 +20点
 瀬那森ユウキと申します。
 以下箇条書きの感想で申し訳ありません。


・「文学に足を踏み込んだライトノベル」か「ライトノベルに足を踏み込んだ文学」か。自分は後者の印象を読後に抱きました。文学なんて学校の教科書程度しか知らない青二才の印象ですが。なんとなくお話の骨子というか土台にそんな匂いを感じて。
 五枚という短い枚数の中に『僕』が詰まっていて、それをぶっきらぼうに読者へ投げかけている。そこに読者を楽しませるギミックやガジェットはなくて、だけれど否応にも興味を持ってしまう内容でした。はっとする伏線も驚くオチも愛でる萌えもないけれど、それでも十二分に魅力溢れるお話だったかなと。これこそが『小説』というものだと自分は思います。
 
・個人的に参考にしたいと思ったのが、その文体。少々クセのあるものでいて、それでも意味の通ずる理解しやすいもの。自分の文章で書いているのに人に理解させることができるというのは、自分が目指しているところでもありますので。自分もいつかこういった文体を身につけられるのかどうなのかと考えています。


 本作への感想は以上となります。
 点数の方は、「面白い」というより「興味深い」といった感想でつけさせていただきました。個人的に求めているのはエンタメチックな面白さであり、その点ではベクトルの違う面白さだったかなと。なので高得点の一つ下のこの点数に。ひどく個人主観の強い感想になって、これなら顔を見せなかった方が良かったかと思ってしまい。

 拙い感想になりましたが、何か一つでもご参考になれば喜ばしい限りです。

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