ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. 新人賞受賞者
  4. 瀬川コウ公開日:2013/08/01

瀬川コウさんのインタビュー

 鍛錬投稿室(小説投稿室)でスカウトされてプロデビュー

完全彼女とステルス潜航する僕等

〈STORY〉
 ネット小説サイトで常にアクセストップをキープしてきた東北大学生でもある作者のデビュー作品。 思春期に揺れる少年・少女たちのスローテンポな恋とじれったくも甘酸っぱいドキドキした気持ちを丁寧に描いた、さわやか系ラヴ・ビフォア・ストーリー! なにげない日常の切なさ、心の襞が、ジェットコースター感覚で劇的に迫りくる!
出版社:フールズメイト
発行年月: 2014年01月31日

フールズ・メイト・ノベルスの公式ページ

■ 瀬川コウさんからのコメント2013/07/31

 瀬川コウという名前で、主に長編の間にて活動させていただいた者です。このサイトには本当に何から何までお世話になりました。
 このたび、フールズメイトノベルズの創刊で、こちらに以前投稿したもの(「日陰から完全彼女を観察したら」)を出版する運びとなりました。
 自分が投稿させていただいた4つの作品については、いただけたコメントをメモ帳にコピペして何度も何度も読み返しました。その経験はこれからもずっといきていくと思います。何しろメンタルが鍛えられました。
 自分は、書きはじめるまでは読書も本当に一年に一冊みたいな感じでしたし、決して才能があったわけではありません。その代わり創作に関しては結構いろいろと考え、努力を積んできましたので不肖ながらお役に立てればと思い、アンケートに答えさせていただきます。

■ 作家になられた、瀬川コウさんに気になる質問をいくつかしてみました

Q1: 初めてライトノベルに出会ったのはいつですか?
  去年(2012年)の3月だと思います。作家になりたい→どうやらラノベは門が広いらしい→参考に何冊かラノベを読もう!ということで「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」シリーズを読みました。ラノベの一冊目でそのチョイスはどうなんだという感じですね。その前はアニメを見ていました。

Q2: 初めて小説を書かれたのはいつですか? それはどのような作品でしたか?
 高校の頃に文芸部で短編を書いていました。SFとミステリ、ホラーとかでしたね。あと、「生きる意味を見いだせず死にたいと毎日思っていたサラリーマンの主人公が癌と診断され、どうせだからと昔の友人一人一人に会いに行き、その中で『やっぱり生きたいな』と思いながら死んでいく」という、何この鬱・・・みたいな話を書いたこともあります。
 ですからライトノベルを初めて書いた時は大変苦戦しました。初めての長編ということもあり丸々三か月かかりましたから・・・今思い出してもつらい。

Q3: 作品はどのようなソフトを使って書かれていますか? あるいは手書きですか?
 ワードです。プロットやネタ出しは手書きです。ネタ出しのときにパソコンの前にいるとなぜかソリティアが始まってしまう不思議・・・。限られた創作に当てる時間の一分一秒が貴重ですから無駄にしないようにしています。そういえばそのあたりの創作論のことを日日日さんが何かおっしゃっていたような・・・

Q4: 作品の書き方で(例:クライマックスを先に書くなど)、自分なりの書き方がありますか?
 普通に最初から書いていきます。プロットを詳細に組むので、強いて言えばそこが自分なりの書き方だと思います。
 あ、それとキャラの掛け合いなどは日常で思い付いた時に書いてしまいます。それをとっておいて、本文を書いている途中に、周りにうまく馴染むように入れます。
 その作品での決めセリフとかも先に書くことがあります。これはあくまでモチベを上げるためですけれども。

Q5: 初めて作品を新人賞に応募されたのはいつですか? 
 去年の9月です。ガガガさんです。二次落ちでした。もうこの時には次の作品を書いていて「こっちの作品の方が100倍おもしろいぜ!」と思っていたのでさほどダメージはなかったです。・・・まぁ、その「次の作品」はぼろくそだったことをここにお伝えしておきます。くそぅ・・・

Q6: スランプになった、もしくは作家になることを諦めようと思ったことはありますか?
 一作目をかきあげるまでは非常に苦戦し、書いている途中で「もうこれつまんないよ、書き上げてもしょうがないよ・・・」となって何度も筆を置いていましたが、「これ書き上げないと死ぬルール」という自分ルールを適用してがんばってました。自分ルール最強。その時がスランプ?なのでしょうか。
 作家になることを諦めようと思ったことは一度もありません。どんなぼろくそな批評をもらっても、「なるほど、ここがこうだがらダメなのか、次から気をつけよう」と前向きの力にするように注意しています。

Q7: アマチュア時代に参考になった本はありますか?(ハウツー本など)
 『ミステリーの書き方』 ですかね。乙一式穴埋めプロットを自分なりに改変して使っています。穴埋めプロットに頼れば山場などの構成に気をつける必要がなくなるのが嬉しいです。
 
 あとはこのサイトでの知識がほぼ全てです。

Q8: 尊敬している作家さんはいますか?
 アガサ・クリスティー、ドストエフスキー、重松清、伊坂幸太郎、森見登美彦、入間人間、田中ロミオ、さんなどなど・・・僕は矛盾した人や狂った人などが出てくるミステリやホラーが好きなので・・・自己矛盾に苦しむキャラなども好きです。
 そしてそれとは対に夜は短し歩けよ乙女や有頂天家族、俺たちに翼はない、デュラララ!などの「街」の魅力が描かれているお話しも大好きです。僕の書く小説の舞台が仙台なのは自分が住んでいるというのもありますが、伊坂幸太郎さんの影響ですし、複数シリーズ書かせていただける時は入間人間さんが採用しているスターシステムも使いたいと思っています。世の中にはおもしろい作品がたくさんですね。

Q9: アマチュア時代にどのような方法で筆力を高めていきましたか?
 このサイトへの投稿です。これが絶大な効果を誇ります。自分では「これが最高に面白い!!」と思うのに、読者にはウケない。なぜだろうか、と考えざるを得ず、「自分の考えのズレ」が補正されていきます。
 そして考えに考えて考え抜いて「分かった!じゃあこういうのはウケるんじゃね!?」と次の作品を投稿してまたボコボコにされる・・・この繰り返しが結局最短なのだと思います。
 自分の思う「面白い」が読者の思う「面白い」と一致していない、ということが作品を書く上で一番の問題です。

Q10: 執筆は、いつもどのような時間帯にされていますか?
 学校が終わったらすぐ、で寝るまでずっとですかね。休日も一日中やっています。その代わり書いていない時は本当に何も書いてないです。短期決戦、ですね。

Q11: 一日の執筆速度はどの位でしょうか? また、ノルマを作っていますか?
 書きはじめの日にスケジュールを組み、二週間後に完成するようにします。
 自分は通常、文庫260Pで尺を取るので、単純に一日26P×10日、改稿に2日、予備に2日という感じです。もちろん260Pの尺は書いている途中に変えたりしますし、一日の作業量も変動します。(でも26ページより少なくならないようにはしています)ミステリの場合は改稿で重大な問題が発覚する場合もあって一週間かかったこともありました。
 短期決戦なので書いていない時は本当にゼロです。なぜ短期決戦にするかというと、自分の場合、書く期間が長くなるだけ気力が減って完結から遠ざかるからです。

Q12: 一日にどれくらい執筆に時間をかけておられますか?
 普通に学校がある日は6時間とかで、休日は一日中です。何も考えずにひたすらプロットに従ってキーを叩き続ける、いわば「作業」のような感じです。単純作業というのは集中力が増すらしいですが、それに似たものがあります。飯も食わずにあへあへしながらキーボード叩く人形になっています。何それ怖い・・・

Q13: どのような方法でプロットを作られていますか?
 まず、「こういう場面、書きたい!」「こういうキャラ、書きたい!」というアイデアが複数浮かぶところから始まります。一つだと足りません。
 そして、その物語での新しい提案は何なのか、つまり他の作品にはないこの物語だけのアイデアは何なのかを考えます。(これすごく大事だと思います)
 主人公とヒロインに目的を与え、それに沿ったキャラ設定を作った後で、そのキャラは「魅力的なのか」という別の視点から考えます。(なかったら付け加える)特に一人称で物語を語る場合、語り手が魅力的じゃないと読者が嫌になってしまうと思うので非常に注意します。
 後は物語の中盤に大きな盛り上がりをドスンと置き、乙一式穴埋めプロットを使って穴埋めしていきます。途中で自分のメモ帳にある掛け合いリストやネタリストから適当に引っ張って来て「ここでこのネタ使う」みたいな感じでプロットを組んでいきます。
 これが完成すると、もう物語は出来たも同然です。後は肉付けなる単なる「作業」になります。ちなみにプロット作りには二週間ほどかかるときもあります。

Q14: 作品を書く上で何か大事にしている、または心に留めていることはありますか?
 物語の真ん中で最も重要な、物語の根幹的なイベントを起こすことでしょうか。
 これをするといわゆる中だるみがなくなります。それと、どの場面でも単なる「プロットのなぞり」にならないように読者が面白いと思えるような箇所を入れることです。
 あと、悲しいイベントが起きる時には直前にちょっと読者を嬉しい気持ちにさせるなど、このサイトに書いてあった感情の揺さぶりを入れるようにしています。いわゆるフラグというやつでしょうか。大切だと思います。
 それと、とことん「この場面を読んだら読者はどう思うだろうか」ということを考えることに尽きると思います。書きながら読者の気持ちになるというのはとても難しいですが。

Q15: 「売れるものを書くべきか」、「書きたいものを書くべきか」、
 答え辛い質問ではありますが 、もし良ければ意見を聞かせていただけませんか?

 一番良いのは「書きたいもの」をベースにして(テーマとか)キャラを「売れるもの」にしてシリアスをあまりヘビーになりすぎないようにすることかなと思っています。「売れるもの」ばかりに気を取られると結局売上が高い、今だと、はがないやSAOなどのパクりになってしまう可能性があります。
 ですから僕はうまく、書きたいものと売れるものを融合させることが必要だと思います。間を取るのではなく融合、というのがこれまた難しいです。才能のある人ならこんなことをしなくても「読者が求める、既存作品にもない設定、キャラ、ストーリー」を思い付くのでしょうが、僕は凡人なのでそれなりの努力が必須です。

Q16: プロになれた理由を、ご自分ではどうお考えですか?
 拾い上げなので、運の要素が大きいですね。後はやはり「どんな物語がおもしろいのか」「どんな物語が売れるのか」を必死に考え続けながら書いていたことかもしれません。

Q17: プロになって一番嬉しかったことは何ですか?
 まだ出版されていないのでアレですが、やはり編集者さんから会議通過のメールをいただけた時でしょうか。その日は電気ブランをストレートで飲みました。ひどい目にあいました。

Q18: 最後に、これから瀬川コウさんに続け!と頑張っている方達にアドバイスをいただけませんか?
 上でも述べましたが、自分の中で「これ絶対面白いし既存作品にもないし売れる!!」と三拍子そろった絶対的な自信がある作品を書き上げ、サイトに投稿してボコボコにされ「ぐぬぬ・・・なるほど。ここが駄目だったのか。じゃあこれならどうだ!!弱点克服してるぞ!!」というものを書き上げ、サイトに投稿してボコボコにされ・・・を繰り返してください。
 これが作家への最短の道です。モチベがなくなった時は自分の本が製本されイラストがついたものが書店に並んでいる様を想像してください。決して諦めないでください。作家になるまであと一作品書いてボコられるだけでいいのかもしれません。応援しています。

Q19: 新人賞を受賞する以外の方法で作家になった経緯を詳しく教えて下さい。
 このサイトの長編の間にて作品を投稿し、そのコメント欄に編集者さんからの書き込みがありました。連絡をとると「この作品を会議にかけたい」という趣旨のメールをいただき、数か月経った後に、「会議を通過したので本にしますよー」という連絡が来ました。そこから打ち合わせ〜、という感じです。

▲ 目次へ