ライトノベル作法研究所
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  4. 藤間紫苑公開日:2012/01/23

藤間紫苑さんのインタビュー

 CLAPコミックスのWeb連載ボーイズラブ小説が書籍化

ドリンク擬人化『伊藤君と円先輩』

〈STORY〉
 CLAPコミックス特設ブログにて連載中のドリンク擬人化小説『伊藤君と円先輩』が1冊になりました。
 石原 理先生の美麗イラストと藤王さやか先生描き下ろし4コマ漫画、そしてブログでは読めない書き下ろし小説を一挙50ページ掲載!
出版社:メディアックス
発行年月: 2011年02月

藤間紫苑の小説サイト

■ 管理人からの藤間紫苑さんの紹介

 藤間さんは、BL、百合といったセクシャルマイノリティーをテーマにした作品を書いておられる女性ライターです。
 主に電子書籍の分野で活躍しています。
 紙媒体でのデビューは、企業のサイト上で連載していた小説が書籍化されることで果たしました。
 プロの小説家になるためには、新人賞受賞だけが道ではなく、電子書籍やWebからの書籍化という道もあるのだということを知っていただくため。BLや百合小説を書いてプロを目指す人が、どのような道をたどって、それを果たすのか参考にするために、インタビューをさせていただきました。
 お引き受け下さった藤間さんに、心よりお礼を申し上げます。

■ 作家になられた藤間さんに気になる質問をいくつかしてみました

Q1: 初めてライトノベルに出会ったのはいつですか?
 『魔界都市〈新宿〉』(菊地秀行 朝日ソノラマ 現・朝日新聞出版)だったと思います。

Q2: 初めて小説を書かれたのはいつですか? それはどのような作品でしたか?
 中学生の時に自由課題として出した、野菜達が闘う絵本みたいなものが初めて書いた小説だと思います。

Q3: 作品はどのようなソフトを使って書かれていますか? あるいは手書きですか?
 PCで書いてます。
 使用ソフト TeraPad、ATOK、エクセル。

Q4: 作品の書き方で(例:クライマックスを先に書くなど)、自分なりの書き方がありますか?
 テキストの頭におおまかな話のラインを5行(200文字)ぐらいで書いて、後は書きながら考えてます。
 キャラクターなどの設定はエクセルで管理してます。
 あと時間軸が複雑になってきた時もエクセルで管理してます。

Q5: 初めて作品を新人賞に応募されたのはいつですか?
 19歳ぐらいの時。

Q6: スランプになった、もしくは作家になることを諦めようと思ったことはありますか?
 お金がないと毎回思います(笑)

Q7: アマチュア時代に参考になった本はありますか?(ハウツー本など)
 どの本も参考になります。

Q8: 尊敬している作家さんはいますか?
 ジョージ・オーウェルと沼正三。あとうちのカノジョ。

Q9: アマチュア時代にどのような方法で筆力を高めていきましたか?
1:文芸誌『少女帝国』を出してコミケ等、同人誌即売会に10年程出てました。
2:今もですが、友人達と作品を書いた後に読書会(批評会)をやっています。半年に一回ぐらい。
3:友達と読んだ本の情報交換。
4:とにかく書き続けること。

Q10: 執筆は、いつもどのような時間帯にされていますか?
 11:00頃~18:00頃。

Q11: 一日の執筆速度はどの位でしょうか? また、ノルマを作っていますか?
 執筆速度:一日1枚~50枚(一枚400字換算)。
 ノルマ:ノルマを作るとストレスになるので商業締切日直前以外は全くありません。

Q12: 一日にどれくらい執筆に時間をかけておられますか?
 7時間ぐらい。資料を読んだり調べたりする時間含む。

Q13: どのような方法でプロットを作られていますか?
 今までは出す賞に合わせて主人公の年齢を考え、テーマを考え、それに今の社会状況等の問題などを絡ませて考えていました。
 これから暫くは賞に出さず電子書籍コンテンツを充実させたいと思っているので、書きたいテーマから導き出される主人公達を動かす形で書くと思います。
 ちなみに『伊藤君と円先輩』(藤間紫苑 キャラクターデザイン 石原理 発行 メディアックス ドリンク業界擬人化小説 http://drink110.blog29.fc2.com/)は元々私のカノジョと私の二人でジュースを飲みながら数年前から温めていたキャラクターです。
 伊藤苑の二人を中心に有名ドリンク会社を選別し、キャラクターを作りました。キャラクター発注数は10名と決まっていたので、キャラ選別(会社選別)が難しかったです。

 この単行本が出せたのは『伊藤君と円先輩』の話を編集さんが元々知っていたのも大きいです。
 ドリンク擬人化の馬鹿話を飲み会で話していたのが、きっかけでした。

 そこに石原理先生の旦那さんがいたので私が「石原先生、キャラクターを描いてくれないかなぁ」とお願いしたら旦那さんが「忙しいから無理じゃね?」と言いながらも仲介してくださって、そうしたら先生が仕事を受けてくださったという私の勇気と皆様のご協力と偶然が重なった結果です。
 ちなみにこのような偶然が重なった結果でないと石原先生にキャラデザを頼むのは、いろんな意味で100%無理です(笑)

Q14: 作品を書く上で何か大事にしている、または心に留めていることはありますか?
 百合やBLなどセクシャルマイノリティーをテーマにした作品を書いているので、どうやって書いたら人が不快に思うのか、差別だと感じるのか、というのはいつも気に留めています。
 そしてただ不快な表現、差別表現を回避したり書かなかったりするのではなく、わざと書いた上で問題提起をする事もあります。

Q15: 「売れるものを書くべきか」、「書きたいものを書くべきか」、
 答え辛い質問ではありますが 、もし良ければ意見を聞かせていただけませんか?

 『伊藤君と円先輩』はプロットの段階から「売れる物を書かなければいけない」という選択しかありませんでした。
 私は120Kgオーバーの巨漢デブキャラが好きなのですが、そういうのは出せないわけです(笑)
 石原理先生にお金を払って発注するので、美形キャラが前提でした。
 エロゲーシナリオを書いた時もデブキャラは却下され、結局幼女のような容姿の成人女性、と設定が変更されました。

 賞に出すのなら自分が思う中で一番『売れると思った作品』を書くべきです。
 この出版社に一体どういう作品を出したら「売れる」だろうかと考えるべきでしょう。

 ただ問題は誰もがその時代の売れる作品・注目される作品・編集者がたまたま持っていた気になるテーマが書けるわけではありません。
 結局人は自分のテーマに合った作品しか本領発揮出来ませんし、他人のテーマをコピーした作品はコピー作品でしかないわけです。

 でも上手くコピーが出来るのは才能だと知るべきです。
 そして売れる作家になるのは大抵、そういうコピー能力が上手い人なのです。

 ただ、今(2012年1月現在)は日本の出版社自体の体力・資本力が落ち、海外や他分野から電子書籍メディア会社が現われ、電子書籍という新たな市場が現われつつある移行時期なので、どうなるのか分りません。
 賞を出している出版社や文庫本などのブランド等がシャッフルされるかもしれません。シャッフルどころか出版社自体が潰れるかもしれません。

 だから「どこどこの賞向け」と絞ってしまうとそれ以外使えない作品になってしまいます。
 お金と時間があるのなら、自由に書いて電子書籍として自ら発行していくのもよいと思います。

 あと上記に書いたのは「自分の書きたいテーマが決まっている」というのが前提なので、まだ作品数が少ない時は自分が書きたいテーマがなんなのか考える事が重要です。
 例えば私だとメインテーマは『セクシャルマイノリティー』で、これは百合を書いてもBLを書いても共通しています。

Q16: プロになれた理由を、ご自分ではどうお考えですか?
 努力と人脈

Q17: プロになって一番嬉しかったことは何ですか?
 お金が多少入ること。

Q18: 最後に、これから藤間さんに続け!と頑張っている方達にアドバイスをいただけませんか?
 とりあえず私は貧乏なので、あまり「続け!」とかいって目指さないでください(笑) 
 もっとお金持ちの作家さんを目指してください。そうしないと有閑マダムじゃない限り、生活が出来ません。
 そうです、私は有閑マダムです。カノジョのヒモをやって生活してます。
 昔、文芸誌の新春鼎談で(雑誌発行時現在)一番売れていた新人文芸作家が開口一番「転職したいんですけど、なんの仕事に就いたらいいですかね!?」と言ってました。
 今はどこの出版社も刷り部数が少ないので、生活がさらに苦しいです。福利厚生などもちろんありません。
 底辺作家なんてコンビニバイト以下の年収です。

 そして今現在(2012年1月)、電子書籍市場の実情もあまりよくありません。
 100万部売れたベストセラーが電子書籍化され、売上が二桁、なんてこともあったそうです。

 あの林真理子ですら311後に書いたエッセイで「売上が落ち、生活を引き締めた」と書いています。311後の出版社はどこも大変です。
 お金や生活を考えるのでしたら他の業種に就いたほうがいいでしょう。
 それでも書けるのなら。

 書き続ける資本(資産・現金・体力・時間)があるのなら、とにかく長く書き続けてください。

 私はずっと文芸同人誌で小説を書き続けていました。その作品を評価され、エロゲーシナリオライターの仕事が回ってきました。
 また今回本が出せたのも、友達にだけ回している小説があったからです。
(賞に落ちた作品『池袋ファナティックロリータ』http://p.booklog.jp/book/30926)
 そうやって書き続けている事を評価していただいた結果なのです。

 だから書き続けること。完結させること。人脈を作ること。この三点が重要だと思います。

 この不況下で『作家を目指す』というチャンスに恵まれた皆さん、頑張ってください。応援しています。

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