ライトノベル作法研究所
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  4. 13ゲーム公開日:2015/01/18

13ゲーム ―そして、僕たちは殺しあった―

ジャンル:バイオレンス
著者:日高由香
出版社:魔法のiらんど単行本
発行年月:2014年12月24日

ラノベの王女様さん一押し!(女性・17歳)

■ 解説

 日本の権力者で秘密裏に結成された組織「十三支会」。そこでは、暇を持て余した金持ち連中が愉しむための“デスゲーム”が行われていた―。選ばれ、集められたのは、それぞれに傷を持つ13人の高校生たち。彼らの、生き残りをかけたサバイバルが始まる!

■ ラノベの王女様さんの書評2015/01/18

 冷たい床、ダークグレーの壁、金属製の扉、洗面台とバスタブ、装着された首輪、参加者を映し出すモニター、ゲームマスターを名乗るCGキャラ、閉鎖空間での生き残りをかけたバトル、翻弄される13人の高校生。
 『SAW』や『ダンガンロンパ』を思わせるシチュエーションの中、彼らは一億三千万円の賞金目当てにデスゲームへと飛び込むわ。
 ある者は父親の会社を倒産から救うために。ある者は三人の弟を養うために。ある者は叔父の性的虐待から姉妹一緒に逃れるために。

 主人公の有馬恵一もまた、他の参加者同様に過酷な境遇を抱えてこのゲームへの参加を決意した一人なの。
 母親の交通事故。妻の死に目に立ち会わなかった父親。商談で忙しかったという言い訳。
 でもそれは真っ赤な嘘で、浮気相手とホテルでイチャイチャ。母親を裏切ってたわけ。
 そんな父親との暮らしに嫌気が差して、恵一は荷物を詰め、翌日の早朝に十七年間住み慣れた家を飛び出すわ。

 そこからの生活描写がリアルなの。
 ネットカフェで過ごすぼんやりとした時間。いずれ生活費が底をつく不安。週に一度の派遣バイトでしのぐ生活。加算される料金を気にしながらの風邪との戦い。保証人がいないためにアパートを借りることのできない絶望感。
 必死に一人で生き抜こうとする主人公に、次々と容赦の無い現実が突きつけられるわ。
 「ひどい親の元から抜けだして大成功!」なんてご都合主義は『13ゲーム』に存在しないわ。

 リアルなのはゲーム描写だって同じね。
 三人称視点でありながら、終盤になって死者が大量発生するまでは、全てが主人公を中心に描写されるわ。
 チームに引き入れなかった女の子は、外見と名前とあとは部活程度しか知り得ることができないの。
 現実的に考えたら当たり前とはいえ、そこがゲームの緊張感を増大させるスパイスの役割を果たしてるわね。
 『LIAR GAME』よろしく全員生存ルートを選ぼうにも、相手チームの居場所がわからないから交渉できないし、何よりゲームに乗り気でないメンバーが向こうにいるかどうかさえ怪しい。「皆殺しなんて考えてない……はずだよね? 本当に?」と常に疑い続けなければならない。

 先の見えない不安との戦い。仲間を死なせるかもしれない恐怖。読者も有馬恵一の気分を味わえるわ。

お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?

 関西弁が特徴的な鳴海五十鈴。
 感情表現が素直で、最後まで生き残って欲しいと願ってたわ。

この作品の欠点、残念なところはどこですか?

 『ダンガンロンパ』以上に救いがないわ。キャラがバンバン死ぬ。
 「この娘の背景掘り下げないの?! もったいない!」なんて感情が通用しない世界ね。
 冷酷で無慈悲なゲームの現実を突きつけてくれるわよ。

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