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異形の町ケイオス・ヘキサを舞台にしたバイオレンスアクション

ブラックロッド


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 37
 おもしろいです! 10
 なかなか良いです。 5
 ふつうです。 0
 イマイチです。 0
 おもしろくないです。 0
 買うと損します。 1

ジャンルアクション・バイオレンス
著者古橋 秀之
出版社:電撃文庫(メディアワークス)
発行年月:1997年 04月
本体価格:490円 (税込:515円)

稲荷さん(男性・19歳) 人形使いさん(男性・25歳) 大狸さん(男性)一押し!

■ 解説                               

 ブラックロッド―公安局・魔導特捜官。
 精神拘束により全ての感情を封印した彼に表情はない。まるで死人の顔。
 ヴァージニア9―降魔局・妖術技官。黄色い外套をはおった少女。
 だが、侮る事は禁物だ。彼女は魔女の分身なのだから。
 ビリー・ロン―探偵業をなりわいとする気さくな青年。
 人なつっこい笑顔には、だが"牙"がある。
 ゼン・ランドー―3つの都市を奈落堕ちさせた隻眼の男。その正体は人か魔か……。
 第2回電撃ゲーム小説大賞で「大賞」を受賞した異色作。
 異形の町ケイオス・ヘキサが今、文庫に出現する。


■ 稲荷さんの書評                        

 科学と魔術――SFとファンタジーは相容れないモノだ、と思われる方もいらっしゃいますが、
 この作品はそれらを巧みに織り交ぜ、なおかつ破綻せずに昇華させた、希有な例かと思われます。


 この作品は、10年以上前に出版されたとは到底思えないほど異色な作品で、
 以後の電撃文庫の流れを決めた、とおっしゃる方もいらっしゃるくらいです。

 物語の舞台は〈ケイオス・ヘキサ〉。カースト制度と類似した制度が敷かれ、
 それに従い、陽光差し込む清潔なA層から、魑魅魍魎が跋扈する無法地帯であるD層(最下層)まで、
 住民は棲み分けさせられている、砂漠の中の積層都市(バビロン)。

 一作目――『ブラックロッド』では、公安局・魔道特捜所属の感情を消した魔術士・黒杖特捜官
 (ブラックロッド)と、降魔局(A.S.C)V系列妖術技官(ウィッチクラフト・オフィサー)・V9が、
 奈落堕ち(フォールダウン)を企む凶悪犯・〈影男(シャドウ)〉、ゼン・ランドーを追う捜査の行方を追う。
 
 二作目――『ブラッドジャケット』では、〈ケイオス・ヘキサ〉を襲った吸血鬼渦と、
 それから都市を救った英雄アーヴィング・ナイトウォーカー誕生秘話を語る。

 三作目――『ブライトライツ・ホーリーランド』では、
 七つの名を持つ魔術士・スレイマンと廃棄された魔女・V13、機甲折伏隊(ガンボーズ)、
 降魔局が発動した謎のプロジェクト「プロジェクト・トリニティ」の行方を、
 これでもか、というほど疾走感のある筆致で描いていきます。

 ひたすら造語・ルビの嵐です。最早、暴力的と言っても良いくらいです。
 ですが、こういうモノが好きな人には、たまらないと思います。


 内容はアクションを主としたバイオレンス・エロス・ほんの少しのリリカルさを持ったSF風ファンタジー。
 正直申し上げますと、10年前によく出版できたな、と思うくらいスプラッタしております。

 そして、世界観もそうなのですが、悪役の格好良さが異常です。
 ここまで悪に徹する悪役は、なかなかいないと思います。

 最近の「萌え」風潮に嫌気がさされた方は、是非ご一読下さい。
 ライトノベルには「萌え」がほとんど存在しないこういう作品もあるのだ、とお思いになるかと。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 この三部作には魅力的なキャラクターが多いのですが、強いて上げるなら、V系列妖術技官です。
 特に妙に子供っぽいところと狡猾さが同居した、V9がお気に入りです。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 エロス・バイオレンスの要素が入っているので、明らかに人を選ぶ点です。

 好きな方にはたまりませんが、嫌いな方もいらっしゃると思いますので。
 また、上でも申し上げたとおり造語・ルビの嵐ですので、その点でも人を選ぶと言えます。
 
 次に、手に入りにくい点です。何せ10年以上前のライトノベルなので、
 古本屋にも置いていないところが多いと思います。三作目以外は重版未定ですし。
 あと、個人的には、三作目の文章が粗いと感じました。



■ 人形使いさんの書評                     

 「ライト」ノベルと銘打ってはいますが、
 闇のように黒く、鉛のように重い異形の御伽噺。


 第一弾「ブラックロッド」では
 黒い制服の魔導特捜官・ブラックロッドとレインコートの魔女・ヴァージニア7が、
 第二弾「ブラッドジャケット」では
 狂気の戦闘本能をその内に秘めた気弱な青年・アーヴィーと、隻腕の少女・ミラが
 第3弾「ブライトライツ・ホーリーランド」では
 悪逆非道の魔法使い・スレイマンと、廃棄された魔女・ヴァージニア13が、
 古橋秀之の紡ぐ言霊に乗って踊り狂う。

 この作品の目玉はなんと言ってもキャラクターを含めた世界設定の圧倒的な存在感。
 ページをめくるたびにそこには、悪霊のひしめく路地裏が、
 血煙の舞う戦場が、眼前に展開することでしょう。

 また、ウィリアム・ギブスンを髣髴とさせるサイバーパンク的な雰囲気と、
 魔法や呪術といった要素が過不足なく合わさっているのが素晴らしいです。
 こういった雰囲気や、はったりの効いた造語が好きな人にはたまらないでしょう。
 基本的にアクションメイン、そのアクションも血飛沫乱れ飛ぶ荒涼無残なものなんですが、
 そんな中にもどこか温かみのあるエピソードが綴られているので、不思議と安心します。
 ……まあそれも後から来る悲劇的カタストロフの引き立て役になるんですが。

 アクションメインの作品が好き、造語が好き、鬱話やグロ描写に抵抗がない、
 ブレードランナーやJMが好きな方は即座に購読しましょう。


 構造的な視点からでは、キャラの立ち方が尋常でないです。
 アクが強いどころかアクをそのまま煮詰めたような個性的なキャラは、
 一度見たら決して忘れることが出来ないほど印象的です。

 「キャラを立てるにはどうしたらいいか」、その極めて優れた手本になる思います。
 では最後に、とあるコミックの煽り文句を流用させてもらって締めるとしましょう。

 その物語には、怒りと、恐怖と、愛がある――。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 エロス・バイオレンスの要素が入っているので、明らかに人を選ぶ点です。
 好きな方にはたまりませんが、嫌いな方もいらっしゃると思いますので。
 また、上でも申し上げたとおり造語・ルビの嵐ですので、その点でも人を選ぶと言えます。

 次に、手に入りにくい点です。
 何せ10年以上前のライトノベルなので、古本屋にも置いていないところが多いと思います。
 三作目以外は重版未定ですし。
 あと、個人的には、三作目の文章が粗いと感じました。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 内容が明らかに人を選ぶ点。グロ描写や鬱描写多し。

 読みやすい、読みにくいではなく、
 こういう内容を生理的に受け付けないという人も確実にいるでしょう。
 特に第3弾「ブライトライツ・ホーリーランド」は要注意。



■ 大狸さんの書評                        

 この本において、魔導特務捜査官はブラックロッドと読まねばなりません。
 呪装戦術隊はS.E.A.T、残留思念濃度計はラルヴァカウンター、真皮層写経はダーマスートラ、
 少年僧侶はボーズキッズ、人形嗜好者はピュグマリオン、祝福単位はクライスト、
 沙弥尼はシャミニ、呪弾はブリッド、力士と書いたらスモーレスラーです。

 ここで目眩を催したり、思わずウィンドウを閉じようとした方は、
 まぁ、縁がないということで仕方ないとしましょう。

 しかし、少しでも「かっこいいかも?」と思った方がいたら、
 書店や古本屋に入る度にこの本の名前を探しても損はしないはずです。

 電撃ゲーム小説大賞の第2回大賞という、古めかしい称号を頂いているこの作品。
 先述の通り、世界観はガチガチ過ぎてギャグとも取れるサイバーパンク。


『肉体と言う器にバックアップされる私の魂は、それでも私なのか? 人と物の違いは一体何だ?』
『人と物は違うものではない。元々一緒の物なんだ』

 イカれにイカれたイカした世界観。
 そんな世界を、「ハード」で「スプラッタ」で「バイオレンス」な方々が跳梁します。跋扈します。


 積層都市「ケイオス・ヘキサ」に突如現れた、魂を食らう巨人「アレフ」。
 その原因を追うのは、精神拘束(ゲアス)を施され、
 感情・個性を封じ込められた黒杖特捜官(ブラックロッド)。
 補佐をするのは、降魔局・妖術技官(ウィッチクラフト・オフィサー)、謎めく魔女のヴァージニア9。
 別所で動き出すのは私立探偵、
 笑顔と軽さと吸血鬼ばりの犬歯が売りの「牙」のある男、ビリー・ロン。
 三つの都市を奈落落ち(フォール・ダウン)させ、
 尚「ケイオス・ヘキサ」の奈落落ちを企むのは影の男、ゼン・ランドー。

 呪弾が飛び交い、頭部が吹き飛び、牙が食い込み、
 はらわたはみ出て、爪が薙いでは目玉が潰れる。
 飛ぶ、蹴る、殴る、打ち込む、撃ち込む、薙ぎ払う、投げつける、
 飛び出す、飛び散る、爆裂して炸裂する。
 死しして屍尚動き、死なば御霊も地獄行き、死者は神のおらざるを嘆く。

 エロスとバイオレンス、そして少しのリリカルさを含めて送り出される、
 血で血を洗う上に血が飛び散る痛快痛快スプラッタアクション。


 それがブラックロッドです。
 諸々の甘っちょろさに嫌気がさしていたあなた、ご一読下さい。
 是非。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 私立探偵ビリー・ロン。
 己の出自と、その生き方への矛盾に悩む姿が、話の流れから透けて見えます。
 ええ男です。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 余りにサイバーパンク・スプラッタしすぎて、
 無駄な造語や、飛び散る血と臓物に嫌悪感のある方にはおすすめできません。


 かなり人を選ぶ作品ではあると思います。


■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

最高です!一押し。
おもしろいです!オススメします。
なかなか良いと思います。
ふつうです。
イマイチです。
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