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できそこないの魔獣錬磨師

ジャンル:異世界FT
著者:見波 タクミ
出版社:富士見ファンタジア文庫
発行年月:2015年1月20日

ラノベの王女様さん(女性・17歳)一押し!

■ 解説

 授かったモンスターの紋章によって優劣が決まる世界。モンスターを従え闘わせる『魔獣錬磨師』の育成学園『ベギオム』に通うレインは学園唯一のスライムトレーナー。周囲の嘲笑も気にせず、相棒のペムペムを信じ、誰よりも努力を重ねていた。
 そんなレインに固執する学年3位の美少女ドラゴントレーナーのエルニア。紋章と美貌を兼ね備えた完璧な彼女が底辺のレインにこだわるのは、過去の因縁が原因らしいが…!?最弱も最強も関係ない!勝利への執念が定められた運命に逆転劇をもたらす!!

■ ラノベの王女様さんの書評2015/03/10

 この世界に生まれ落ちたものは皆、生まれながらにしてモンスターの紋章を授かる。その授かった紋章により、従えられるモンスターが決まるのだ。授かるモンスターの紋章は、遺伝が大きく影響する。両親、そしてその先祖が発現したことのあるモンスターの紋章が、子供に受け継がれていく。ごく稀に、今までの先祖に発現したことのない高位の紋章が子に発現することもあるが、99%は遺伝であるというのが学者たちの見解だ。
 モンスターの紋章はこの世界で重要なステータスとなる。レアなモンスターの紋章を受け継げば、それだけで将来は約束される上、何より異性から絶大にモテる。そりゃそうだ。なんて言ったって、自分の子供や子孫に、レアなモンスターの紋章が発現するチャンスが与えられるのだ。
『できそこないの魔獣錬磨師』本文より引用

 残酷な格差! 救いのない現実!
 でも、これは本作にかぎらず三次元の世界でも実際に起こってる出来事よね。
 "We are the 99%"のスローガンを堂々と掲げ、富裕層が肥え太る現状への異議申し立てでアメリカ中が湧き立ったウォール街占拠デモの映像は印象的だったんじゃないかしら。

 最近(2015年3月)、話題沸騰のフランス生まれの経済学者トマ・ピケティも、格差を語る上では絶対に外せないわね。
 5500円という高値にも関わらず、『21世紀の資本』は東大や京大の生協で売上一位を記録したわ(http://www.univcoop.or.jp/fresh/book/best10/)。
 彼が主張した「r>g」とは、資本収益率(the rate of return on capital)が経済成長率(the rate of economic growth)を上回る状態のことよ。つまり、真奥みたいに汗水たらして働くよりも、お兄様みたいに裕福な親の恩恵を受ける方が遥かに儲かるわけ。
 持つ者は資産を増やし続け、持たざる者は困窮し続ける。この格差が拡大してくの。絶望的でしょ?

 そこで現実逃避におすすめなのが本作。
 労働者階級(実家がモンスターファームを経営)のRain……じゃなくてレインが、貴族階級(精霊石鉱山を五つ所有)であるエルニアを知恵と熱気でブチのめすの。といってもモンスター同士のバトルでだけどね。
 大して学のない主人公が、文化資本に恵まれた箱入り娘を「二度も」打ち負かす快感!
 見波タクミ先生はラノベ読者の気持ちをよく理解してるわ!

お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?

 エルニア! あたしと同じ貴族階級だから! あと男口調だし!

この作品の欠点、残念なところはどこですか?

 バトルは面白いんだけど、それだけなのよね。
 世界観や登場人物が「モンスターを戦わせる」という舞台設定のためだけに存在してるかのように見えるわ。

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