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 触れれば切れるほど研ぎ澄まされた、冷厳なる幻想世界が君を待つ!

エンジェル・ハウリング


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 128
 おもしろいです! 35
 なかなか良いです。 10
 イマイチです。 6
 買うと損します。 5
 ふつうです。 4
 おもしろくないです。 3

ジャンル
異世界ファンタジー
著者秋田 禎信
出版社:富士見ファンタジア文庫(富士見書房)
発行年月: 2000年 10月
本体価格:460円 (税込:483円)

消炭さん(男性・18歳) 根っこさん(女性) 緋月さん(男性・20歳)一押し!

■ 解説                               

 白く美しい指先に一瞬だけ力が込められる。ただそれだけ。
 それだけでその男のあごは音を立てて、あっさりと外れる。
 痛みにのたうち回る男をその真紅の髪の美女は、炎のような赤い瞳で冷たく見つめていた……。
 絶対殺人武器―イムァシアの刀鍛冶たちにより、
 最強の暗殺者として育てられたミズー・ビアンカは辺境の街にいた。
 目的はとある退役騎士の情報を得ること。
 彼は"精霊アマワ"の手掛りを持つ唯一の男なのだ。
 世界の滅亡の鍵を握る"精霊アマワ"。
 その強大な力と、それを巡る陰謀にミズーはたった一人で闘いを挑む!
 触れれば切れるほど研ぎ澄まされた、冷厳なる幻想世界が君を待つ!
 秋田禎信入魂の新シリーズいよいよスタート。


■ 根っこさんの書評                       

 エンジェルハウリングは僕のイチオシの小説です!

 特に、哲学が大好きな人、あれこれ思索を巡らせることが好きな人にお勧めします。

 というのも、この物語の一番の魅力というのは、やはり『御使い』からの問いかけと、
 その問いかけに答える『契約者達』だからです。

 この物語には多くの「問いかけ」があり、
(それは『御使い』からのものもありますし、他の登場人物、
 またはそのまま物語からの問いかけもあります)

 それの答えを自分自身で考え探していくのが楽しいのです!

 実はこの作品が僕の始めて読んだライトノベルで、確か中学生の時に、友達から二巻を借りました。

 「なにこれ凄く面白い!」と思い、全部集めて読んだのですが、
 結局中学生の僕では、ストーリーを楽しむだけで物語の奥にあるテーマを理解できなかったのです。

 しかし、高校生になってから改めて読んだら、
 そのテーマの深さ、哲学的な意味に気付き、圧倒されました…。

 とにかく、すごい。
 あまり内容について語ると、ネタバレになってしまうので控えますが、是非読んでみて欲しいです!

 一巻が取っつきにくいと感じたら、是非一巻目は飛ばして第二巻を読んでみて下さい。
 こちらの方が、主人公が若く、楽しく読めると思います。

 偶数巻のフリウ編だけでも読んで欲しいのです! 
 そして、最終巻最後の章題、これは「エンジェルハウリング」と対になる言葉なんですが、
 その意味を考えて、愛すること、信じること、そして証明するということの意味を考えた時に、
 この物語のすごさが伝わってきて、世界が開くような感覚を味わえると思います。

 そうしたらやっぱりミズー編のラストも見て欲しいのです! 
 『地図』『空白にいる怪物』にまつわるひとつの答えが、す
 っと差し出されてきて、物語の強さに感嘆します。

 エンジェルハウリングという小説は、受動的に読むのでなくて、
 自分の頭で考えながら読むという能動的な読み方で、本当の面白さを見つけられる小説だと思います。
 
 そういう意味で、この小説はあれこれ考えるのが好きな方にお勧めなのです!


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 ハリスコー夫妻。

 彼らの取った行動とその時の心情を考えると胸が……。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 ストーリーだけでも面白いんですけど、やっぱり「読んでいて面白い」小説というより、
 「考えて面白い」小説だと思うので……。

 わかりやすい「萌え」「燃え」というのは、ないと思います。



■ 根っこさんの書評                       

 何といっても「残酷で、それゆえ美しい世界観」が際立つ作品でしょう。
 秋田氏の独特の文体で語られるテーマは、非常に深く、読めば読むほど、
 新たな発見があるという点で、ファンの間ではどこか純文学的な作品だとも言われています。


 物語のシステムとして特徴的なのは、ダブル・ヒロインにより、一巻置きで交互に語られる、
 二つの視点、という所でしょう。
 が、やはり物語全体としては、「戦いあり、旅ありの、エンターテイメント作品」でありながら、
 非常に哲学的な物語だという点が、魅力だと思います。

『人間であるということは、どういうことか?』
『心とは何なのか?』
『力とは何なのか?』
そして『愛とは何か?』

 「地図の話」や「真っ暗闇の話」の直喩、「ルール」や「約束」「距離」や「仮面」の暗喩、などなど。
 キャラ達の紡ぐ、哲学的な台詞に魅力を感じられるなら、楽しめることは請け合いです。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 誰も彼もが、キャラ立ちして甲乙つけがたいのですが、
 個人的には、ミズー編を通して敵役を張り続ける男キャラ二人が一押しです。
(片方が序盤敵とは思えないが実は、という展開なので、一応キャラ名は伏せておきます。
 読めばすぐ分かるかと)

 どちらも、主人公と対立することで、常に物語全体を通じてのテーマのテーゼや
 アンチテーゼを投げかけ続け、ミズーの成長に一役も二役もかってくれます。

 
 片やどこまでも人間であるがゆえに、非人間的なものに焦がれ続ける男。
 片や人間的に見せかけて、非常に非人間的な精神を持つ、歪んだ男。
 双方のキャラにはほぼ接点はありませんが、
 どちらも非常に魅力的な敵役(悪役じゃないところがミソ)です。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 やはり、読んでいて途中で脱落する方が多いのが……
 
 全10巻合わせて、一つの物語、といえる構成なためか、
 起承転結の承の部分に当たる3〜6巻あたりが、
 やや中だるみしているように感じられるんでしょうね。

 秋田氏の文章好きでしたら、それでも非常に楽しめるのですが、
 そうでなければ中盤が少しキツイと言えます。

 伏線が収束し始める7巻から、急激に面白くなっていくので、
 そこまで我慢できるかが、ファンでない方にはキーでしょう。




■ 緋月さんの書評                        

 残酷で美しい世界、それがこのエンジェル・ハウリングで描かれる世界です。

 ガラスのように澄み切った世界を、二人のヒロイン、ミズー・ビアンカとフリウ・ハリスコーが、
 それぞれの想いを抱き生き抜く姿は胸を打ちます。
 何度も打ちのめされ、信じることすら裏切られる中で、それでも見えない先へと進む二人。
 迷わないわけではなく、悩まないわけでもない。
 むしろ二人とも、何度も迷い、悩み、挫折しています。
 それが一層二人の魅力を引き立てています。

 奇数巻、偶数巻で主人公が変わるこの作品は、奇数巻はミズー・ビアンカ、
 偶数巻はフリウ・ハリスコーが、それぞれ主役を張ります。

 時に交わり、時に離れていくこの構成で刮目すべきは、
 一つのテーマを二つのアプローチで追っていることです。


 ミズー編は「距離」、フリウ編は「約束」によって、
 物語最大の謎である「精霊アマワの契約」に迫る展開は、読む者を思索の衝動に駆り立てます。
 読んで、考える。これがこの作品の一番の特徴ではないでしょうか。

 一度読んで「あー、面白かった」で終わる作品ではなく、むしろ読み返すほど面白さが出てきます。
 そこが読者を惹き付けるところでしょう。


 二人の主人公は、決して熱い性格をしているわけではありません。
 けれど、その生き様は魅せられるものがあります。
 二人の終局、二つの終わりを見た時、「澄み切った」感動が訪れると思います。

 また、作者の秋田禎信氏は、この業界で知らぬ者はいないほどの大物です。
 魅力的なキャラクター、何重にも張られた伏線、起伏のあるストーリー、
 まるで実在するかと思うほどリアリティのある世界、洗練された高度な文章力、と、
 小説に必要な全ての要素を兼ね備えた、秀逸な作品であると言えるでしょう。
 
 小説としてのレベルが非常に高い、と断言できます。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 主人公二人が、やはり光ります。
 最近の小説では特に理由もなくやたらと「強い(戦闘能力以外の意味を含めて)」
 キャラクターが転がっている気がしますが、この二人は違います。

 フリウは、その眼に破壊精霊ウルトプライドを宿し、そのせいで二度も全てを失いました。
 そのため「世界最強の力」を持ちながらも、力の意味について問い続けています。

 その答えの一端がラストなのですが。

 またミズーは物心つく以前より、監禁され訓練されたという過去があります。
 そしてミズーの言葉にこんなものがあります。
「あの場所にいなかったとしたら、わたしがどんなふうに生きていたはずだったのか。
 それを想像することもできないのよ! そこまでわたしは徹底的に、今のわたしにさせられた――」
 この苦悶の言葉が、ミズーの胸のうちを表しています。
 そして自分は、同時に読者にも当てはまる言葉だと感じました。

 二人の、力を持つが故の葛藤。それが自分を惹き付けて止みません。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 少々論理が難解なことでしょうか。
 中学生くらいの方にはよくわからない可能性もあります。
 また皮肉を使ったユーモアは見られますが、ギャグに近い「大爆笑」がありません。

 良くも悪くも「澄んだ」作品なので、
 小説初心者の方やカルいノリを求める方には趣味が合わないかもしれません。

 他でも述べましたが、人によって長所が短所に変わるのは致し方のないことだと思います。


■ 一言感想コメント                       

・エンジェルハウリングは二人の主人公の話が交互に各巻で交互に展開されます。
 はっきり言って、時間軸を把握するのが容易ではないのですが、それを読み解くのが面白かった。
 伏線も交互に登場し、次の展開を想像し辛くしていまた。
 つまり、展開が読めない小説が好きなんです。


■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

最高です!一押し。
おもしろいです!オススメします。
なかなか良いと思います。
ふつうです。
イマイチです。
おもしろくないです。
買うと損します。


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