ライトノベル作法研究所
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  4. 氷と炎の歌公開日:2013/05/09

氷と炎の歌

ジャンル:異世界FT
著者:ジョージ・R.R. マーティン
出版社:ハヤカワ文庫SF)
発行年月:2006年5月

こめはじきさん一押し!

■ 解説

 舞台は季節が不規則にめぐる世界。統一国家“七王国”では、かつて絶対的支配を誇った古代王朝が駆逐されて以来、新王の不安定な統治のもと玉座を狙う貴族たちが蠢いている。
 北の地で静かに暮らすスターク家もまた、争いの渦を避けることはできなかった。父エダードが王の補佐役に任じられてから、6人の子供らまでが次第に覇権をめぐる陰謀に巻きこまれてゆく……怒涛の運命に翻弄される人人を描いた壮大な群像劇、開幕。

■ こめはじきさんの書評2013/05/04

 若干のネタバレありです。

 前任の〈王の手〉の不自然な死を疑った、〈王の手〉エダード・スタークはロバートの息子達に関するとんでもない秘密をしってしまう――彼らはロバートの実子ではなく、王妃サーセイがひそかに作った子供だったのだ。
 そしてそれを知った他の「王」達は、正当な〈鉄の玉座〉の権利を主張して立ち上がる――

 王子や騎士を夢に見ていたサンサは、冷たい現実を突きつけられ、拙い嘘と礼儀で自分を守ろうとする。
 サンサの妹アリアは、一本の剣だけを残し、城からl小汚い道へと放り出され、暗殺者に成り果てる。
 アリアの弟ブランは壁の上から突き落とされて二度と歩けない身になり絶望するも、不思議な夢をなんども見ることになる。
 「冥夜の守人」に入った貴族の私生児ジョン・スノウは、醜い小人がゆえに家族にすら疎まれていたティリオン・ラニスターと友達になる。
 そして海の向こうの自由都市で、前王朝ターガリエン家の生き残り、龍の血を引く女王デナーリスも立ち上がっていた――

 群像劇ですので、これといった主人公は存在しません。いくつかの視点にわかれております。
 ですが、傑作だと思います。
 キャラクターはもう、キャラクターと言うよりは一個の人間です。それぞれの視点からそれぞれの世界を見ることで、いろんな人間の、いろんな考え方が見えて面白い。

 そして作者のマーティンは、登場人物を不幸にするのがとても上手なんだな、と思いました。

 この物語の中で、誰一人として平和の保障された者はいません。誰一人として、自分の願いを叶えた者はいません。
 でもその現実の残酷さや夢の儚さこそが、登場人物が何かを得たり、例えほんの少しの間でも幸せになった時、ああ、よかったなあ、と心から思えるんです。

お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?

 この物語のキャラクター達はすごく生き生きとしていて面白いです。長所と短所が表裏一体になっていたり、それぞれに思い悩むところなども色々あって。
 私が好きなキャラはこれらですかね。

〈タースの乙女〉ブライエニー
 女騎士です。そこらの男よりもずっと背の高く広い肩幅を持っています。醜い外見で、幼い頃は鏡の中の醜い自分を見て涙し、そして父はこんな醜い娘を望んでいなかったという劣等感がいつも彼女に付きまとっていて、そしてそれは彼女のトラウマなのです。
 女性キャラの中では一番好きです。

〈猟犬〉サンダー・クレゲイン
 視点人物ではなく脇役ですが、結構好きです。
 彼は騎士でありながら騎士を恨みます。彼の騎士である兄が、十一歳の頃に、六歳のサンダーが彼のおもちゃを盗んだというだけで、彼の顔に火鉢を押し付けたことがその理由です。
 そして彼はそれから炎に怯えるようになり、兄を殺したいと願うようになるのです。
 彼は焼けどをおった醜い男ですが、それ故に美しく上品で礼儀正しい少女、サンサに惹かれます。その恋の儚さに、思わず応援してしまいます。

〈小鬼〉ティリオン・ラニスター
 彼は一家の兄を除いた全ての人々に疎まれていました。醜い小人で、そして生まれた時にやさしく美しい母の命を奪ったが為に。父は彼を疎んでいました。それでも彼は父へ認めてもらおうと必死でした。
 彼は小人ですが、非常に頭が切れ、ユーモラスな物言いにはいつも笑わされています。彼の言葉は自分を救う一方で、自分を窮地に追い込みもします。そして彼の長所にして短所は、彼の優しさです。彼のふるった優しさはいつも空まわりしてばかり。だからこそ彼に惹かれるのかもしれません。

 長々といいましたが、氷と炎の歌のキャラクターは、生き生きとしていて、どんな脇役ですらちゃんと性格や、なぜそのような性格になったのかなどがちゃんと説明されているのです。
 例えばサンダーのような、騎士が騎士を憎む原因だとか。他のキャラクターでは、傲慢な少年が宗教浸りになった原因とかもありました。
 そんな細部まで作りこまれたキャラクター達は、ほんと、一度会ってみるべきだと思います。

この作品の欠点、残念なところはどこですか?

 キャラクター数の多さ。

 やや歴史ものっぽいところもあり――実際英国の薔薇戦争をモデルとしています――キャラクターの数が多すぎて、最初手にとると混乱します
 が、一度主要キャラの名前を覚えると、入り込みやすいです。

 そしてこれは同時にこの物語の面白いところでもあります。
 群像劇が故に、どんなに脇役に見えたキャラでも、主役になりうるのです。脇役が起こした小さな事件が、主役を影響することだってあります。
 ただの脇役だと思って見過ごしていたら、実は重要な役割が振られていたりします。
 その意外性もまた、この物語の楽しいところかな、と私は思っています。

 長文失礼しました。

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