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天を支える者
行儀見習いの少女ナルレイシアは、無類の本好き。 書物目当てに男爵家で働いていたが、 迫ってきたご子息に怪我を負わせてしまい、屋敷を追い出されてしまう。 しかしここで、彼女は『不幸中の幸いの権化』の本領を発揮。 王都ロスタロイドの屋敷から、住み込みの仕事の依頼が舞い込んだ。 屋敷には山ほどの本があって……。 目先の読書欲につられ、ナルレイシアは申し出に飛びついてしまうが……。
美麗な世界観と多彩なキャラ、比喩に富んだ文章は一種の芸術のようです。 前田先生の作品はいずれも世界観が素晴らしいのが特徴です。 この作品もまさにそうで、歴史から慣習から、あらゆるものを細かく設定してあります。 特徴としてはやはり『柱神』と呼ばれる神々の設定ですね。 もとは人間である彼らは『神宝』と呼ばれる半神を得ることで柱神へと生まれ変わります。 今作の主人公は、その柱神となる人物を見極めるお役目を負う『選定者』の少女です。 選定者は本来、年配の方が選ばれるということなのですが、主人公はまだ十代後半。 それだけでも厄介な気配が漂うというのに、この主人公がまた、ただ者ではないのです。 主人公の名前はナルレイシア。 黙っていれば金髪黄色目の美少女なのに、その綽名はずばり『不幸中の幸いの権化』。 二十年にも満たない短い人生の中で、 彼女はすでに雷に撃たれ嵐に揉まれ毒を盛られ誘拐も経験しています。 しかし、いつも最後の最後には必ず助かるという、凶運と強運をその身に同時に持ち合わせています。 この凶運と強運が災い(幸い)し、経過の部分は目も当てられないことになりながらも、 結果的には万事解決という方向へ持っていきます。 物語はそんな彼女と、それに振り回される脇役(悪役もですが)という形で進んでいきます。 選定者という重い使命と、もしかしたらそれ以上に重い凶運・強運を持つ彼女が、 どのように柱神を選んでいくのか。 キャラクターと一緒にハラハラドキドキしながら読み進めることができる良作だと思います。
当初はナルレイシアの雇い主として、大きな館で暮らす老婦人ということでしたが、 実はこのひと柱神を務めていた方で、人生経験はさながら、 多大なコネと精霊の寵愛を一身に受けているすごいひとなんです。 ですが普段の様子からはそんなすごさは見られることもなく、 (見せてくれるときは見せてくれるのですが) シリーズが進んだ今でも「絶対このひとまだなにか隠しているよね……」と思わせてくれるので、 これから見ていく上でも注目キャラだと思われます。
二巻で登場した柱神様が、人間から柱神になるまでの経緯を書いたものですが、 本編がまだ二巻しか出ていない上での刊行だったため、 読み終える頃には本編を忘れているなんてことがあったりします……。 柱神のことを知る上では重要なお話なのですがね。 あとは刊行されるペースが遅いということですね。 いざ新刊が出ても一冊の容量が少なく、しかも全体的に進みが遅いので 「まだ終わらないのかこの話……」とちょっと苦笑いしてしまいます。 それに加え挿絵がほとんどない巻もあるのがネックです。 他のシリーズも書いている作家さんでもあるので、多少仕方ないところはありますが、 最終巻を読みたいと思ったなら長い目で見ていくことが必要かと思われます。
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